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アタシの愛美に手を出すな!〜百合子が初恋した話〜  作者: 碧木美月


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29.シアターバトル!(臨戦態勢編)



……来たぜ。


AOHARUシネマズ。


上映開始の10時5分まで、まだ1時間以上ある。




ーーだが。




ロールキャベツくそ野郎のことだ。

おそらく待ち合わせ時間は早めに設定しているはず。



なぜなら。




愛美とのイチャイチャタイムを、少しでも長く味わいたいからだ!




そんな策略を見越して、アタシはそれよりも早く到着してやったぜ。


もちろん、テメエを監視するためにな!






ぶかにかぶったキャップ帽。


いつもはやらないポニーテール。


この日のために100均で買ったサングラス。


普段よりワンサイズ大きい顔をすっぽりおおうマスク。






これだけやれば、誰もアタシだと気づくまい。

シークレットボディガード百合子、ここに参上だぜ!



……おっと。


そうこうしてる内に、ロールキャベツくそ野郎がやって来たか。


思ったとおり、ずいぶんと早い待ち合わせ時間に設定してやがったぜ。




……それにしても。




相変わらず、カラダ中から見苦しいギットギトな肉汁を垂らしてやがるぜ(※注 あくまで個人の感想です)


ああっ、愛美!

お前があのゲスいあぶらで汚染されることがないよう、今日は必ず守ってやるからな〜!




◇◆◇◆◇




ピンポンパンポーン♪(30分後っ)




うん……。

まだ愛美がやって来ないぞ。


ロールキャベツくそ野郎も、かなりソワソワしてやがる。




ま、まさかのすっぽかし?




……いや。

真面目で優しい愛美がそんなことするとは思えない。




と、いうことは。




あえて待ち合わせ時間に遅れてる……とか?


だって、映画に誘われたって教えてくれた時も、重苦しい表情で気乗りしてない様子だったもん。


約束を守らないなんて愛美らしくない。

だが、もし意図的に遅れてるとしたら、その判断は素晴らしいぞ!




……ただ。


ひとつだけ、ぬぐえない不安がある。


それは。


それは……!






それは、愛美の服装だあっーー!!!






花火大会の時は、アタシも一緒に行くっていう前提があったから愛美に服装を指示できた(※第14話〜15話参照)。



でもっ!



今回、アタシは映画に行かないことになってるから服装の指示が不可能だった!


だって、一緒に行きもしないヤツが服装を指示するなんておかしいじゃん⁉︎




ああ……どうしよう⁉︎

もしも遊園地に行った時みたいに、すっごいガーリーな服装で来たら!(※第19話参照)


そんなことになれば、ロールキャベツくそ野郎の脳内でなにをされるかわかんねえぞ……!(※注 自分以外の人間には、愛美にあんなことやこんなことをする妄想を許さない。それが百合子です)




はっーー!




そう思ってたら愛美が来たあっ!


きょ、今日の、服装はっ……?(超絶ドキドキしながら薄目で確認っ)






っっっーー!!!






……え。


え〜っと。


ま、愛美お嬢様の服装でごさいますが。






カラダのラインを隠すようなゆったりめのパーカー。


そして、これまたカラダのラインが出にくいワイド型のジーパン。


それに、おばあちゃんが作ってくれたような布の手さげ袋……。






こ、これは。


これはっ……!






パッ。




パーフェクトォッッッッッッーー!!!






まるで、近所のコンビニに行くかのごとく、寸分の色気も感じさせないトータルコーディネート!



パーフェクトですぞ、愛美お嬢様ぁっっっ〜!



さらに言えば、何日も洗濯せず放っておいたようなヨレヨレ&シワシワ感もまた素晴らしい!


可愛さやキレイさといった、オシャレ能力値はゼロ。


だがその分、すさまじいまでに防御力強化へと極振りした見事なチョイスだ!




ま、まあ……ちょっと。

今まで見た私服とのギャップに戸惑いを感じておりますけども(汗)



で、も!



そんな愛美もまた、可愛いすぎるよぉぉ〜んっ!




……おっと。


こうしちゃいられない、2人が合流するぞ。

さあ、2人の会話を聞き逃さないように接近だ!




サササッーー!(百合子、2人の近くに光速移動っ)




「ごめん、遅れちゃって……」

「あ、ああ……(草中くん、ポカ〜ン)」



ふん、見てみろ。

あのロールキャベツくそ野郎の「え……?」みたいな表情。


きっと、あまりにもヤル気のないいでちに驚いているんだろう。


イイぞ!

先制パンチは見事にクリティカルヒットだ、愛美!



「っ…………(愛美、気まずそうに視線を斜め下にそらしっ)」

「じゃ、じゃあ、とりあえずチケットを買おうか?」

「あ、うん……」



よし!

気持ちイイぐらい空気がギクシャクしてる。

これは思った以上に幸先のよいスタートだぞ!



残念だったな、ロールキャベツくそ野郎よ。



可憐に着飾った愛美を見てゲスい妄想を膨らませる予定だったんだろうが、テンション爆下がりなのがバレバレだぜ!


愛美へのLOVEが、そんな程度だからお前はダメなんだ。


アタシなんか、逆に今の服装の愛美が愛おしすぎて、すでに頭の中で壊れるほど抱きしめて、あんなことやこんなことをしてしまったぜ!(※注 今さら言うまでもありませんが、百合子は変態です)



さあ、こうしちゃいられない。

2人がチケットを買うぞ。

どこに座るか座席番号を確認しなければ!




サササッーー!(百合子、発券機の前に立った2人の後ろに並び、画面をコッソリ確認っ)




「どこにしようか? やっぱり、真ん中あたりの列が見やすいよね」

「ああ……う、うん、そっ……かな」

「それなら、このH6とH7なんかどう?」

「えっ? あ、うん……」

「じゃあ、僕はH7にするね。凛咲さんはH6で」

「あ、あぁ……」



なるほど、愛美はH6か。

それならアタシはH5を買えば愛美の隣りだな!




ピピピピピッ!(百合子、愛美がチケットを購入した後で素早くH5を買いっ)




よし、愛美の隣りをゲットしたぜ!

これで臨戦態勢は整ったな。




……つーか。




ロールキャベツくそ野郎のヤツ、またなにかあぶらぎった汚ねえことを考えてやがるな?


あえて自分が通路側になるH7の座席を選ぶとは……。


普通なら、トイレの時とかに動きやすい通路側を女子に譲るのが男子としての常識だ。


用意周到なロールキャベツくそ野郎が、その常識を知らないはずがない。


……にも関わらず。

それを無視するなんて、絶対に理由があるはずだ。




ーーはっ!




わ、わかったぞ。

ロールキャベツくそ野郎の目的が……!


もし上映中に愛美がトイレとかで席を外す場合、必然的にロールキャベツくそ野郎の前を通ることになる。



そうなれば!



前の席との間隔が狭いぶん、愛美がロールキャベツくそ野郎の足とかに触れてしまうことは必至……。


そういう風に、あたかも自然を装ったボディ接触のチャンスを常に手元に置いておくことが狙いなんだ!(※注 百合子は大変想像力が豊かです)




なんてヤツだ……。


ゲスい!


あまりにもゲスいっ!!!


もはや、地球上の草木が一瞬にして朽ち果ててしまうほど、ゲゲゲゲゲスいっっっーー!




「もうすぐ映画が始まっちゃうね。ポップコーンと飲み物ぐらい買おうか?」

「えっ? いや、私は別にいいかな……」

「でも、せっかくだしポップコーンだけでも買っていこうよ。2人で一緒に食べられるし。塩バターとキャラメル、どっちがいい?」

「いやっ、あ、うん……(愛美、猛烈に戸惑いっ)」






ブッチィィィィィィィンッッッーー!!!






こ、こんのぉぉぉ……!






ロールキャベツくそ野郎がぁっっっーー!!!






なにが2人で一緒に食べられるだ!

愛美はいらねえっつってんだろうがっ!

勝手に恋人気取りでリードしてんじゃねえっ!



「もう時間がないね、ここは僕の独断と偏見で塩バターでもいいかな?(草中くん、イソイソ)」

「あ……う、うん……」



くそったれ……!

ついに愛美の気持ちを無視して買いやがった!


こんな己の欲望だけに忠実なヤツ、女子にモテるワケがないぜ!


もしも愛美にポップコーンを食べるよう強要したら、力ずくでポップコーンを吹っ飛ばしてやる!



「お待たせ、それじゃあ行こうか。3番スクリーンだって」

「……うん……」






ーーついに!


3番スクリーンに向かった愛美と草中くん。

果たして、百合子は愛美の危険を排除できるのかっ⁉︎

(次回へ続くっ)






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