28.シアターバトル!(電光石火の出し抜き編)
ひいぃぃぃ!
い、急げ〜!
アタシとしたことが、トイレに携帯電話を落としちまうなんて……。
無事に拾えたのはいいが、こんなことしてる間に愛美へ変な虫が寄ってきたら大変だ!
は、早く教室に戻らなければっ!
ダダダダダッーー!(百合子、廊下を光速移動っ)
よし、教室が見えてきた!
待ってろよ愛美、今すぐに隣りに戻るぜえっ!
……って。
んんっ⁉︎
あ、あの廊下の柱んトコにいるのは愛美っ?
なにやら誰かと話してるぞ……。
はっーー!
あ、あれは……。
あれはっ……!
あれはぁっっっ!!!
草中 二久こと、ロールキャベツくそ野郎ぉぉっっっーー!!!(※第3話参照)
な、なんてことだ……!
トイレとの往復時間は2分もかかってないのに、そのわずかな時間を狙われたというのかっ⁉︎
あ、あんの野郎、いったい愛美になにを話してやがるんだっ⁉︎
勝手にアタシの愛美へ近づきやがって……!
その会話、今すぐブッつぶしてやるぜえぇぇーー!
パッーー(愛美と草中くん、解散して教室に戻りっ)
おわっ、も、もう離れた!
早くも話が終わったのか⁉︎
はわわ、愛美が教室に戻っていく……。
あああっ!
いったい、いったいなにを話してたんだっ⁉︎
愛美ひぃぃぃ〜!!!
◇◆◇◆◇
ピンポンパンポーン♪(昼休憩っ)
き、気になる……!
愛美とロールキャベツくそ野郎がなにを話していたのか、激しく気になるうぅぅ!
はうう……。
こんなんじゃ、メシもノドを通らないよぉ……。
き、訊いてみようかな?
単刀直入に、なにを話してたのか訊いてみようかな?
いや、ダメだ!
そんなことしたら、プライベートなことにツッコまないでって嫌われるかもしれない!
あうう……。
でもっ。
でもでもでもっ!
気になって仕方がない〜!
「ねえ……百合ちゃん」
「は、はひぃぃぃ⁉︎(ドッキリーン⭐︎)」
「急に変なこと訊いてゴメンね。百合ちゃんは、今まで男の子と2人でデートしたことって……ある?」
っっっっっっっっっっっっーー⁉︎
は、はい……?
なに?
そ、それって……
どういうこと?
ま、まさか……。
まさかっ……。
まさかっっっ!
ロールキャベツくそ野郎から、デートに誘われたとかあぁっっっーー⁉︎
「そ、そんなの、あるワケねえだろ!(動揺っ)」
「……そっか」
「な、なんで……?」
「あっ、うん……実は……」
じ、実は……⁉︎(ドッキドッキ!)
「……実はね、草中くんから2人で映画に行こうって、誘われちゃって……」
ピッキィィィィィィィィィンッッッ!!!(百合子、凍りつきっ!)
え、えい、が……?
「今ちょうど、アタシの好きな小説が実写版で上映されてるんだけど、それを観に行こう……って」
ヒクヒクヒクッーー!(百合子、顔が光速で痙攣っ)
「突然の誘いに頭の中が真っ白になっちゃって、私、つい……」
つ、つい?(生つばゴクリッ!)
「オッケー……出しちゃったーー」
カッキィィィィィィンッッッッッッーー!!!(百合子、石化っ!)
「どうしよう……」
「…………(百合子、引き続き石化中っ)」
シ〜ン。
「……ゴメン。こんなこと言われても、困るよね」
はっーー!
ま、愛美がなにやらションボリしている!(百合子、愛美の気落ちした気配を察知して復活!)
ど、どうしたんだ?
実は、そんなに気乗りしてないのか?
ホントは、2人で映画なんかに行きたくないのかっ⁉︎
ーーだとしたら!
そんな約束、断れって言いたい!
それか、アタシが代わりに断ってやるって言いたい!
……でも。
愛美の気持ちを確かめてもないのに、自分だけ突っ走ってそんなこと無責任に言えない……!
「……今の話はもう、忘れてーー(愛美、切なそうに遠い目っ)」
くっ……ダ、ダメだ!
やっぱり、このままなにもしないなんてできないっ!
今、アタシにできること……。
アタシにできることは……!
はっーー。
そうだ。
あるじゃねえか、アタシにできることっ!
「……いつ?」
「えっ……?」
「いつ、どこの映画館で?」
「あっ……」
アタシにできること。
そう。
それは……!
いつだって、愛美をそばで見守ることっーー!!!
「あさっての日曜日に、AOHARUシネマズで……」
「ふぅん……なんて映画?」
「あ、えっと……『バックスパイ』っていう映画」
「へぇ……何時から?」
「ああ、10時5分から……」
「そうか」
「……な、なんで?」
「いや、別に……ただ、訊いてみただけ」
「そ、そう……なんだ」
……ウソ。
そんなワケない。
ホントは、アタシも当日の現場に乗り込むため。
あさっての日曜日。
10時5分からAOHARUシネマズで『バックスパイ』って映画……。
それだけ情報があれば十分だ。
待ってろ、愛美。
当日はアタシも参戦して、必ずお前を守ってみせるぜえっっっ!!!
……そして。
ロールキャベツくそ野郎よ。
アタシはテメエのことを少々みくびっていたようだ。
花火大会(※第14話〜17話参照)の時以来おとなしくなったと思っていたが、実はアタシを出し抜き、愛美を毒牙にかける機会を虎視タンタンとうかがっていたとはな……。
愛美をわざわざ廊下に呼び出して誘ったのも、おそらく人気がほとんどない環境だったからだ。
そこで人目を気にせずまくし立てるように誘い、考える暇も与えず勢いで約束を取りつけさせたんだろう。
控えめで優しい愛美の性格を利用した、超絶にゲスさ極まる卑劣な行為っ……!
ーーだがっ!
お天道様は、どうやらテメエの悪事を絶対に許してはくれないらしい。
その肉汁たっぷりのギットギトな策略は、なにがどうあってもこのアタシが知る運命にあるようだ!
クッソくだらねえ妄想ラノベ、
「クラスカーストはいつも最下層が定位置だった僕が、高校デビューをきっかけに本気を出したら読書好きの天使とソッコーで付き合うことになった件」
……を、まだ往生際わるく執筆してるようだが、2度と筆を取れないようギッタギタに打ちのめしてやるぜっ!!!
「ねえ、百合ちゃん」
「あ、あん?」
「もしかして、百合ちゃんもその日に映画を観に来たり……する?」
「……んなワケねえだろ。興味ねえし、そんなの」
はうぅっっっ!
バ、バッカやろぅっ!
アタシの、バッカやろぅっっっーー!
実は行く気まんまんなクセに、なんで真逆なことを言っちまうんだあっ!
ああ、もう!
アタシのバカバカバカバカバカァ〜!
「そ、そっか、そうだよね。うん……それじゃ……」
「えっ……?」
「それじゃあ、凛咲愛美、日曜日に映画を観に行ってくるね!(愛美、気丈にも敬礼ポーズっ)」
「っ…………!(百合子、胸がキュウッ……)」
「月曜日は、映画の話をたくさん聞かせてあげるね。興味なくても強制的に話しちゃうから、覚悟……しててね?(ホントはあなたにも来てほしいのに、どうして私の想いに気づいてくれないの……? 的に、目に薄っすら涙を浮かべながら切なさマックスのエンジェルスマイルで無理してニコッ♡)
ドボフンッッッーー!(※注 百合子の頭の中が爆発しました)
ーーその後、百合子が昇天したのは言うまでもない。
……って。
こんな調子で百合子は愛美を守れるのか⁉︎(次回に続くっ)




