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7・依澄家

 広い庭を抜けて玄関に到着する


「ただいまー。じゃあねおねーちゃん、伸太さん」

 頼子は手を降って自分の部屋に向かったのを見送る。

  

「では私達も行きましょう。お祖母様のところに案内するわ」


「うん、わかった。おじゃましまーす」

 あの おばーさんちょっと苦手なんだよなぁ


「おやおや、それは悲しいねぇ」

 真後ろから突然声がした。

  後ろは玄関でボク達以外誰も入ってきた形跡はない


 振り返るとそこにはおばーさんが居た

「え、あれ?いつの間に・・・」

 てか聞かれた?自分では気づかずに声に出ちゃってたのか?


「あ、お祖母様、そちらにいらしていたのですね」

 静香は気にせず話を続ける

「実は相談したい事がありまして・・・」


「ああ、大体の事情は把握しとるよ、こっちに来なさい」

 そう言って廊下の奥に向かって歩き出す。

  ボク達は後についていく。


「この廊下も懐かしいな。小さい頃は冒険だーってここも探索したっけ」

 昔はよく家にもお邪魔させてもらっていたが、

  最近は竹田達と街や公園でつるむことが多くなり頻度も減った


「この長い廊下の扉のどれかは異次元に繋がってる・・・だったわね」

 姫もそれを思い出してかフフっと笑う


「ほれ、ここじゃ。着いたぞ」

 一番奥の部屋の前で止まる


「この扉っていつも鍵が掛かってて結局一度も入ったことなかったな」


「この先は一族の巫女以外、基本立ち入り禁止の場所なの」


 おばーさんが鉄の棒を取り出すと鍵穴に入れる

  すると棒が光だし鍵の形に変形していく

   カチャリと回し扉が開かれた先には地下へと続く階段があった


「お、すげー。地下への階段か・・・おらワクワクすっぞ」

 好奇心を刺激されはしゃぎだす


「いいから黙って着いてきなさい」

 おばーさんに諭される


 しばらく階段を降りると扉があり、

  その先には道場のような広い空間が広がっていた


「こ、ここで修行とかしてるのか?必殺技とかもここで練習を?」


「しー、静かにしなさい。お祖母様にまた叱られるわよ」

 はしゃぐ伸太をたしなめる


  部屋の中央には、なにやら魔法陣みたいなのが描かれてる


「伸太や、ここに座りなさい」

 魔法陣の中央に座らされる


「静香、伸太から手を離してみなさい」


「はい、わかりました」


 静香が手を離すと、じんわりとモヤが浮かび上がる

  腕や頭の痛みは無く、意識もしっかりとしている


「ふむ・・・」

 少し様子見した後、おばーさんが腕を掴んできた


 その瞬間金縛りにあったかのように全く動けなくなる

 

 喋ることもできない。ただその場で呼吸だけが許されている感じだ


 腕のモヤも現状維持で溢れ出すことはなかったが引くこともなく留まっている。


 ぱっと腕を離すと体の自由が戻る


「なるほどのぅ。静香、髪を少しもらうぞ」


「はい。」

 そう言いおばーさんの隣に正座する


「な、髪をもらうって姫の髪を切るのか!?その美しい髪を?」

「伸ちゃん黙って。いいからそこに座ってて」

 姫にそう言われれるがままおとなしくする。


「安心せい、ほんの2~3cm短くなる程度のよ」

 毛先をつまんで少し切ると和紙のような紙に乗せていく

  全体的に切りそろえながらその行為を繰り返す


 髪が切り終わると、その和紙を人形に折りたたんでいく


 人形に折りたたまれた和紙をなにかの御守りに入れて


 そのお守りに向かって念仏のようなものを唱えている


「こんなもんか。後は紐かの」


 持ってきた紐にも念を込めて御守りにくっつける


「ほれ完成。首から掛けて服の中にしまいなさい」


 言われた通りに御守りを付けるとみるみるうちに腕からモヤが引いていく


「おお、モヤが引いていく。ありがとなおばーさん」

「お祖母様、感謝いたします。」

 姫は深々と頭を下げていた


「その紐はちょっとやそっとじゃ切れないようになっとる。

 どんな刃物も通さんし火にも強く燃えん。

 御守りも防水加工されてるから、付けたまま風呂にも入れる」


「うおーなんだそれ、そんな事もできるのか、やべー」


「これ伸太や、お前もいずれこの家の婿養子に来るんだし、

 そろそろ礼儀作法も学ばにゃならん。あと私の事もお祖母様と呼びなさい」


「・・・は、え?養子てここの子になる?え?婿?」


「おや?静香や、まだなにも説明してないんか?」


「・・・」

 静香は冷静さを保っているが顔は真っ赤で手もプルプルしている


「えっとな、巫女と覚醒者は一度ペアになったら

 基本生涯を共にするパートナーになるのが組織の通例での、

 男女のペアだと大体が結婚して一緒に住んどる。

 男女でも極稀にお互い違う相手と結婚する例もあるが・・・

 お前さんは静香と結婚したくはないのか?」


「いえ、姫と結婚したいです!お祖母様!」


「ほっほっほ、即答かの。あと姫ではなく名前で呼ぶようにしなさい」


「わかりました。仰せのままに」

 左手を前に持っていき右手を後ろにし、執事の真似事みたくお辞儀する


 お辞儀が終わると伸太は静香の前に跪き手を握る

「静香、いつまでも変わらぬ愛と忠誠を捧げます」


「ひゃい、あ、わ、私の婿になるんだったら、まずは教養を身につけなきゃね

 これからは私がきっちり礼儀をた、叩き込んであげるわ!」


「姫直々に手ほどきいただけるとは、ありがたき幸せ」

 調子に乗ってチュッと手の甲にキスをする


「あわわ、な、なにして、な、な・・・」

 静香は恥ずかしさの限界を迎えた

「は、ふふふ、そう、そんなに私に教育されたいのね・・・」

 声色が変わり目を細めにやりと微笑む 凄まじい色気を感じる


 これは やばい やりすぎたか 


「私が手取り足取りみっちりおしえてあ げ る」

 頭を撫でながら耳元で囁く


「は、はいぃ。ありがとうございます」

 背筋がゾクゾクして多幸感に満たされる


「ほっほっほ、お前さん達は大丈夫そうだな。これなら安泰じゃ」


「あ、すすすすみません」

 静香は慌てて我に返る


「あ、結婚といえば女の子同士だとどうなるんですか?

 さっき頼子ちゃんも杏子ちゃんの担当していると聞きましたが」


「ああ、男女とさほど変わらんぞ。別の男性と結婚する事もあるが基本は

 ほぼ一緒に過ごすことになるのう」


「もう一つ気になったことがあるのですが・・・

 静香と頼子ちゃんの成長速度の差についてですが、

 もしかして巫女のちからと何か関係あります?」


「ほう、流石婿どの。いい着眼点よのう。一から説明するとな、

 抑え役の巫女は女性が多く男性の巫女((おかんなぎ))はかなり少ない

 逆に覚醒者は男性が多く女性はかなり少ないので、

 女性の覚醒者にも女性が付くことが多い

 だが問題があっての、男女の場合聖力を流し込んで魔力を抑えるんだが

 同性だと聖力を魔力に変換されて吸収されてしまっての

 それなら逆の事もできるんじゃないかとな、

 魔力を吸収して聖力に変換することにしたらうまくいったと言うわけ」


「なるほど、頼子ちゃんもそんなようなこと言っていたな」


「それでな、聖力と魔力は成長ホルモンに深い関わりがあってな、

 同じ聖力と魔力でも男女で質が少し違うが、聖力と魔力の質は似ていてな

 男女間だと魔力を抑えるのに聖力を消費するから巫女の成長も遅くなる

 同性だと吸収するから巫女の成長も早くなるっちゅうわけだ」


「では巫女同士でやり取りもできるってことでしょうか?」


「できないこともないがの・・・聖力にも相性があってな

 年齢が近くないとうまく馴染めないらいしいの」


「それなら頼子ちゃんから分けてもらえるんじゃないの?」

 静香に質問してみる


「あの子ね、凄い嫌がるの。私が成長するが耐えられないらしくて。

 駄々こねて泣き出しそうになるくらい拒否したから諦めたわ」

 ああ、何となく分かる気がする


「じゃあ静香はこのまま緩やかに成長していくのか」

 何故かホッとしている自分がいる


「ああ、そこは大丈夫。伸太が無事覚醒したからのう、聖力の消費も抑えられて

 今後は普通の成長スピードに戻ると思うて」


 な、そこは喜ぶべきなのか迷うところだ


「なによ難しい顔して。この私が成長するのよ?

 む、胸もこれから大きくなるんだからね」


 姫のアイデンティティである 小さい が失われるのは正直悲しい

「おう、や、やったな静香!タノシミダナー」


 姫がジロッと睨んできた。白々しかったか?


「ところで伸太よ、お父さんにはこの事言うのか?」


「うーん、普段から無口でボクにあまり関心なさそうだったしなぁ

 でも修行を始めた時は庭をそれっぽく改造してくたりとか、

 買ってくれるおもちゃも木刀や龍のキーホルダーとか

 中二心をくすぐるものが多かったかな」


「それっておもちゃなの・・・?」

 姫が不思議そうに首を傾げた


「一応素性を調べたりもしたんだがな、なんもわからんかったわ」


「そりゃまあうちの父さんは、家からあまり出ないくらいで普通の人でしたし。」


「何もわからなかったんだよ。組織で調べたのに一切の素性が何もかもな

 うちらがここに派遣される三年くらい前に、お前たちが三歳くらいかの

 突如この付近に強い魔力反応が現れての。

 調査の結果伸太の家からの反応だと言うことがわかった。

 そしてそれは伸太から発せられたということもな

 後は言わなくてもまあわかるな。それ以降も父の調査はしたが何も進展は無し」


「そんな、事があったのか。じゃあ父さんに話すと危険、なのでしょうか?」


「いや、危害を加えるならとっくにやってるだろうから

 その辺はあまり心配しなくて良さそうだが、話すなら警戒はすることだな」


「わかりました。今夜父さんと話し合ってみます」


「そうか、じゃあ近場に護衛を少し配置しといてやろうかの

 何かあったら大声で叫ぶんだぞ」


「はい、何から何までありがとうございました!」

 ペコリとお辞儀をする


 お祖母様は部屋に残るらしく、姫と二人で玄関に向かう


「伸ちゃん大丈夫?気をつけてね。」


「うん、心配してくれてありがとう。おじゃましました。」


 挨拶を終えて、家路へ帰る伸太。


 この後伸太は衝撃の事実を知ることになる・・・ 

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