6・中二病とは
依澄の家に向かう道中、組織や護衛のざっくりとした説明を聞いた後
聖力や魔力についても説明を受ける
「子供の頃から魔力を持ってるとね、暴走することがあるの」
伸太は小さい頃から魔力が高かったので、
急遽依澄家が隣に越すことになった事や
覚醒には段階があって、小学生が段階一 中学生は二 高校で三 以降は四
中学生の二段階目が一番覚醒頻度が高く、暴走率も高い
そこを過ぎると魔力は安定し、四までいけば暴走はほぼしない
四段階目まで行くと担当の巫女が覚醒を安全に手引してくれる。
覚醒者は一部身体能力や頭脳が一般より優れている者が多く、
スポーツ選手や政治家には覚醒者も紛れていると言われている。
「そんな覚醒者は小さい頃に決まってある特徴、
というか厨二病に似た症状が現れるの」
「その症状って?」
「痛いの」
「痛い?」
「そう、自分には特別な力があると思い込んだり、
怪我してないのに眼帯したり包帯巻いたり」
「・・・」
「でもね、その頃の思い込みが覚醒のときの能力に
色濃く影響されるからバカにできないの」
「確かに腕の包帯の封印は黒竜を封じ込める設定だったな」
「そして覚醒前のこの症状は中学二年辺りで最も強くなり暴走しやすいことから
一般的な【厨二病】になぞらえ組織では【中二病】と呼ぶようになったそうよ」
魔力持たない純粋な発症は【厨二病】 魔力が絡む発症は【中二病】となる
「なるほど、だから暴走させないよう中二的仕草にはいつも辛辣だったのか」
「あとね、厄介なことに【中二病】って感染するの」
魔力の高い子供はまだ制御できないから魔力が漏れ出して
近い年代の子供に影響を及ぼし魔力が宿ることがある
魔力の高い子供が居る町内では覚醒者が固まって見つかることがよくあるという
元々魔力を持っていた子供には巫女が付くが感染者は監視程度が殆どらしい
「小さい頃はこうやってよく手を繋いでたじゃない?」
「そういえばそうだね」
「これも私の聖力で魔力を抑えるためだったんだけど・・
結局は暴走させちゃった・・・」
しゅん とうなだれる
「でも中学入った頃からあまり手を繋がなくなっちゃったね。
スキンシップの方法がなんというか過激になったというか・・・」
「あ、あれはね、魔力が収まる気配がないからお祖母様に相談したら、
こんな感じに調教しなさいってい言われてね、演技だったの!
私だって恥ずかしかったんだからね!」
実際調教が行われる度に魔力は安定し漏れ出すことは無くなっていた
この調教なければ今回の暴走も止められなかったかもしれない
「そうなんだ、演技だった・・・の?」
その割にはノリノリで馬乗りしてた気がする
「んんっ、それはおいといて、魔力は感染するってさっき説明したじゃない?」
「うん、それがどうしたの?」
「うちとはの反対側のお隣さん、諸葉さんちの杏子ちゃん居るじゃない?」
「あー、庭で修行してるとたまに見てきてたから
最近では一緒に修行もしたりしたなー・・・ってまさか」
「そのまさかよ、伸ちゃんの魔力を身近で浴び続けた杏子ちゃんは
魔力が宿って感染してるわ」
「あちゃー、なんかあの子とは話が合ってさ、魔法にすげー興味津々だったよ」
「生粋の【厨二病】が魔力を宿してハイブリット中二患者が出来上がったの。
ものすごく危険だって事で、巫女をあてがう話になって
都合よく同年代だった妹が対処に当たってるわ」
「へー頼子ちゃん最近一年くらい見かけなかったけど、
里帰りなんかでもしてたの?」
「は?何言ってるのよ。ちょくちょく挨拶位はしてたじゃないの」
「あれ?おかしいな、そんなはずは・・・」
「って言ってるそばからほら、あそこに居るじゃない」
十数メートル先の公園から出てきて、
こちらとは反対方向に歩いていく女性に指を指す
高校生か、大学生くらいの背の高い大人っぽい女性に見える
ショートパンツからはみ出た太股は、その名に恥じない程に太く、
とても太かった。
まるで某錬金術師の如く、いや、少し足りないな。0.8RAIZAくらいだろうか
そのまま上半身を見てみる。腰はくびれていて腕はほっそりしすぎている
まじか、下半身に対して上半身が貧弱すぎない?
「おーい、頼ちゃーん」
姫がそう呼ぶと、その女性が振り返る
前言撤回、でかい、でかすぎる。胸にメロンが2つも実っている。
上半身の栄養は全部胸に行ってしまったのか?
意図せず 視線が 姫の胸元へ 引き寄せられる
それは胸というにはあまりにも平坦す
「おい」
姫から今まで聞いたこともないようなドスの利いた声が響いてきた
「あ、はい、なんでしょうか」
「視線でね、何考えるか、バレバレなんだけどぉ?んん?」
ゲシゲシと足蹴にしてくる
「い、いえ、なんのことでしょうか、わかりかねます、はい」
「ふ~ん、そういう態度取るんだ、これは躾が必要だわ」
ニヤッと不敵な笑みを浮かべる
「え、待って、ここで?」
「正座」
「はい」
手を繋いだまま言われたとおりに正座する
「ふふ、そうよ、いい子いい子」
上から見下しながら頭を撫でてくる
演技とか言ってたけど、これって完全に調教モード入ってないか?
「出ちゃってる出ちゃってる。調教モード出ちゃってるよ姫」
「うるさいですね・・・そんなに大きい胸がいいのかしら?」
「違う!ボクは!姫のその小さい胸がいいんだ!」
「へあ?」
「いや、例え大きかったとしても、姫がどんな容姿であっても関係ない。
忠誠心や好意は今と一切変わらないと思う」
「な、ななな、何言ってんのよ、もう」
「それに、小さいからこそ、その可愛さが引き立つんだ。」
「わ、わかったからもう、いい、いいから」
姫は顔を真っ赤にして悶えてる
「あはははは!お姉ちゃんいつもこんな事してるの?
でも場所は考えたほうがいいよ?」
通行人が何人かこちらを見ていたので急いで取り繕う
「伸太さんもこんにちわー」
そういえば最近すれ違う度に挨拶くれる子だ。
姫に似ているから親戚のお姉さんかと思っていたが、
この子があの頼子ちゃんなのか?
「あ、ああこんにちわ」
去年までは姫より少し大きいくらいでここまで成長してなかったはずだ
一体どんな代償を払えばここまで急成長できるんだ・・・
「そう、さっき伸太さんが正座しながら言ってたことだけど・・・」
姫の目の前にパタパタと近づいて、ぎゅむっと姫に抱きつく
「小さいは可愛い!可愛いは正義!おねーちゃんかわいい!
あ”ーおねーちゃんかわいいよー」
頼子ちゃんは姫の顔に胸を押し付けて頭をナデナデしながら
ハアハアと息を荒げている
「ちょ、ちょっとまたなの?すぐ抱きついてくるの止めなさいって
いつも言ってるじゃないの」
「えーだってー、おねーちゃんがこんなにかわいいのが悪いんだよ」
「杏子ちゃんにもこんな感じでベタベタしてるじゃない。それで満足しなさいな」
「おねーちゃんは別腹なの。杏ちゃんはメインでおねーちゃんはデザートなの!」
女の子同士のいちゃいちゃはなんというか心が潤う
「とりあえず一旦離れなさい、丁度その杏子ちゃんの話も出てたし説明するわ」
はーい、と姫から離れると
ボクと繋いでる手の反対側の姫の手を繋いで一緒に歩く
「魔力による発症はね、魔力によって覚醒を促すよう何か適当に理由を探して
半強制的に中二病に目覚めさせられるんだけど、生粋の厨二病は心の奥底にある
純粋な好奇心や探究心、願望や野望からなるもので、想像力も豊かなの」
「そういやボクも姫を守るために力が欲しいとかなんか漠然としてたな」
「杏子ちゃんは魔法に興味あるって言ってたし、
魔法の種類によっては大変なことになるわ」
「そうねーきょーちゃん、魔法に関するアニメや漫画を読み漁ったり、
普段からパソコンに張り付いて魔法の研究なんかもしてるらしく、
設定をびっしりと書いたノートを持ち歩いてるくらいだよ」
「伸ちゃんの影響か、この街は覚醒者が多いから対処に追われて
人員も足りてないの。そんな中で杏子ちゃんが暴走して、
街中で大魔法なんか使われたらとんでもないことになるわ」
そういえば、一緒に修行してる時に
この世界の魔法の理だとか詠唱がどうとかバッチファイルだなんだと
凄い熱心に話してくれたが、ボクには難しくて殆ど理解できなかったな
眼帯に興味持ってたから姫に止められて使わなくなったのをあげたっけ
「だからきょーちゃんが暴走しないようにね、
私がくっついて魔力を吸収してるの」
「吸収?姫は抑えるって言ってなかった?」
「ああ、それはね、担当する覚醒者の性別によって、巫女の対応も変わってくの
相手が男性だと巫女の聖力を使い魔力を抑える。
相手が女性だと魔力を吸収して聖力に変換してるの。」
そうこうしてるうちに依澄家に到着した
「そのへんのもっと詳しい話はお祖母様に聞くといいわ。さあ入りましょ」
三人は依澄家へと入っていく