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4・覚醒1

 もがき苦しむ伸太から目を離さず、真剣な面持ちで武田はスマホを取り出し、

  何処かに電話する。


 画面には 緊急 と表示されている


 一瞬だけコール音が鳴り、すぐに電話は繋がった。


「こちら本部、緊急回線まで使って何があった?」


「だめでした・・・失敗、しました・・・対象は現在覚醒し

 暴走状態にあります・・・」


「そうか、本家巫女の力をもってしても抑えられなかったか・・・

 魔力は測ったのか?」


 武田は指で輪っかを作り、目の前にもっていきそこから伸太を覗く

  くっ、と武田の表情は強張り、そのあと一息ついて答える


「視る前から尋常じゃない魔力を感じてましたが・・・少なくともAはあります」


「なっ!Aだと!?第二段階の時点でAなんか聞いたこともない、異例の事態だ!」


 魔力のランクは上からAで始まり、下はFまである

  因みに測定不能はS判定になる


「なんとかここで押さえておきますので、すぐに救援をお願いします。

 そう長くは持たないと思いますが・・・」


「分かってる、既にA以上の隊員を何名か向かわせた。

 一番近いので、早くて10分くらいで着くだろう・・・すまないがよろしく頼む」


 [第◯段階]とは、覚醒時期よって変化する。

   今まで第二時点での覚醒はD以下が殆どであり、

    Cランクですら数十年に一度あるかないかの頻度であったため、

     基本はCランクが一人と+αで編成される。


 しかし今回の場合、小さい頃から伸太の魔力が漏れ出していた事と

  過去Cランクでの覚醒があったケースの事情と重なる部分が散見されたため

   巫女の直系である依澄が割り当てられ、

    護衛も同年代では優秀なものを同じ中学に通わせることにした。


 魔力とは、悪魔から授かる、植えつけられる、遺伝、様々あるが、


       時として魔力は[伝染]する。


 そんな魔力に対抗すべく、天使から神聖なる力を授かった巫女を研究し、

  一般人でも扱えるよう改良することに成功した[組織]が使う力は

   聖力という。


 浦秀家は代々巫女の護衛を司る。Cランクの浦秀は護衛として

  元々同じ学校へ通うのが決まっていたので、予定通りの配属である。


 武田は小学校を卒業する頃には既にCランクになっていたほどの実力者で、

  攻守のバランスも良く、今ではBに届きそうなくらいには力をつけている。


 その武田と一番相性のいい古川はDランクだが、防御系統を重点的に鍛え

  防御面に対してはCランクにも引けを取らない。


 魔力と聖力では聖力のほうが優勢なので、同ランクでの戦いは聖力に分がある。

  しかし、ランクが一つ違うと戦力も結構変わる。

   それが二つも離れると戦力差は絶望的である。


 10分も持たない事は本部の者はもちろんの事、武田も気づいている。


「無茶を言うようで悪いが、組織のルール【第四条】を忘れずに頼む」


「わかっております、【巫女の命を最優先】ですね。では任務再開致します。」


「・・・ご武運を」


 電話を切り、覚悟を決めて臨戦態勢を取る。


 それと同時に浦秀が依澄に話しかける

「静香様、ここはわたくしめに任せてお下がりください。」

 そう言うとに伸太に向かってすごい速さで駆け出した


「ばっ!おいやめろ!今すぐ戻」

 言い終わる前に突っ込んでいった速さと同じくらいのスピードで武田の真横を

  浦秀が通り過ぎ、十数メートル先の壁に吹っ飛ばされてぐったりしている


 いったい何が起きたのだろうか。


 伸太の方を見ると、何かの構えをとって微動だにせずこちらを伺っている。


 カウンター重視の形?だろうか?

  監視の話を聞く限り、あいつ適当に拳法の真似事しては

   自分流にアレンジしてたようだから何の形かよくわからん


 まあでも様子見してくれるのなら有り難い。こっちは時間がほしいからな。


「依澄さんは浦秀の回復を頼む!頸はすぐに結界の準備を!」


「わかったわ」 「了解」

 依澄は影浦に手をかざし癒やしの術を施している

 古川は数珠と宝石を取り出し何やら唱えている


「俺は結界の準備が整うまで時間を稼ぐ!」

 印を結び

「神域開放!」

 神聖な空間を展開し、作り出した聖域内の聖なる力を高め魔力を弱める

  本来大人にならないと使えないとされる技だが、

   未熟ながら武田は半径10m程の聖域を展開できた


 浦秀が意識を取り戻し驚く

「なっ、神域だと!?お前ではまだ危険すぎる。

 寿命がどれだけ削られるか・・・」


「すぐ全滅するよりマシだ。回復は済んだのか?」


「・・・もうすぐ動ける」


 そんなやり取りを意識の奥底から眺めている伸太


 (姫・・・ほら見てよ・・・)


          (姫を守れる力・・・手に・・・入れたよ)

      (姫・・・ほめて・・)


         (姫・・・)


 意識がぼんやりしたまま、ゆっくりと姫に歩み寄る


「結界の準備完了」


「よし、俺と頸と浦秀で結界を張る。

 依澄さんは救援を迎えに行きここまでの道案内を頼む」


「え?何言ってるのよ、私も一緒に」


 すかさず頸が割って入る

「悪いね依澄さん。この結界三人用なんだ」


「だからと言って私だけ離脱なんてできないわ!」


「わかってくれ、道案内だって立派な任務だ。

 早めに救援が来れば生存率も上がる」

 

「だったら私が回復に専念す」


「依澄!戦闘でのリーダーは俺だ!組織のルール【第四条】を言ってみろ」


「【リーダーの命令は絶対】です・・・」


「そうだ。解ったら命令通りの任務を遂行してくれ。・・・あとは頼んだぞ」


 リーダーはグループの中で戦闘力が一番高い者がなる決まりがある。

  なので巫女は基本リーダーにはならない。


 表向きの【第四条】のルールは【リーダーの命令は絶対】なのだが、

  リーダーにのみ伝えられる裏の【第四条】は【巫女の命を最優先】である

   【第四条】は巫女を生かすためだけに作られたルールであった


「この戦いが終わったら、パパの知り合いの高級レストランで、

 ぱーっと旨いものでも食べましょうよ」

 古川が恐怖で震えながら、お決まりのフラグを冗談めいて言った


「静香様、道中お気をつけて」


 依澄は溢れそうになった涙をぐっと堪え

「もうっ!絶対に無事でいるのよ!」


   伸太とは逆の方向へと走り出した


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