3・過激少女
ジュースを買い終わって教室に戻ると、少し様子がおかしかった。
とりあえず頼まれたジュースを渡す。
「おうありがとな、そういや依澄さんから話があるそうだぞ」
なんか妙だな。何か用があるなら人を介さず来るはずだが・・・
「あ、ねえ伸ちゃん・・・ちょっと頼み事があるんだけど・・・」
「頼み事?改まってどーしたの?姫らしくない」
「えーと、椅子になってくれない?」
聞き間違いかな?
「え?椅子?なにどういうこと?」
「そのまんまの意味。とりあえず四つん這いになって♡」
目を細め、ニヤッと微笑む姫は、
その小さな見た目にはそぐわない物凄い色気があった
戸惑い混乱してると
「ほらお前、姫の騎士なんだろ?姫様直々の命令だぞ!」
「そうだそうだ!逆らうなんて不敬だぞー」
と周りが囃し立てる
言われるがまま姫の前に移動し、四つん這いになる。
「ふふ、いい子ね」
背中を少し撫でられたあと、ちょこんとそこに座ってきた
そのまま買ってきたミルクティーを、こくこく飲んで一息ついた
なんだこの状況は。てか軽っ!何キロなんだ?このまま腕立てできそうだぞ
そんなことより背中の姫の感触のせいか、ドキドキが止まらない
「あ、いっけな~い。このままじゃ伸ちゃんジュース飲めないね。
私が飲ませてあげる」
そう言うと今度は馬乗りになってくる
頭の上でプシュっとジュースを開ける音がする
「はい、あ~んして」
すぐ耳元から姫の声がしたかと思うと、目の前にジュースが現れた
ボクは頭が真っ白になりながら、言われるがままにジュースを飲んだ
「ガッハッハ、これじゃただのペットじゃないか」
「さすが騎士様。命令に忠実ですな ぷぷ」
武田と古川はからかってくるが、浦秀は凄い形相で睨んできてるぞ
昔からそうなんだが、姫に触れられると自分の意志が希薄になる感じがして
姫の言うことにあまり逆らえなくなる
「そうだ、おつかいのお礼もしなきゃね。私のジュースも少し分けてあげるね」
んん?それって間接キス・・・
「はい、ちょっと上むいて口開けてー」
あ、そういうことね。少し上から落とす感じか・・・
言われるがまま上を向き口を開けると
缶の感触が唇に付くと同時に、口の中に少しづつミルクティーが入ってくる
「味わって飲みなさいね」
そう耳元でそう囁かれると、背中がゾクゾクッとした
こういったパシリ、いや、おつかいは週1、2回くらいあって
その度にお釣りを多めにくれるのは、うちがあまり裕福ではないことに
気を使ってくれての事なんだと思う。
椅子にされることもしばしばあったが、悪い気はしなかった。
こんな日常がずっと続くんだろうかと漠然と思いながら日々過ごしていた
そんなある日の放課後
今日は何時にも増して右手が疼き痛みも増していく
いつもとは少し様子が違うのを察してか姫が心配そうに
「ちょっと伸ちゃん大丈夫?」
声をかけてくれるが、痛みのせいか耳に入らない
「なんだ、また何時もの発作か?いい加減そんなガキみたいな・・・」
いつもみたくからかう武田も、
その尋常じゃない様子に顔が強張り汗を流し始める
伸太の右腕から赤黒いモヤが湧き出て、右腕を包み込むように覆っていき
そのモヤは徐々に全身に侵食していく。
「ぐ、ア、ゥゥあアアあ”あ”、ア”アアァァァ」
あまりの痛みに叫びとも呻きともつかない声が響き渡る
意識が遠のく中で、何かの力に目覚めたことによる高揚感も感じていた。