1・姫との出会い
とても古い一軒家に父と二人で住んでいた。
父は家に居ることが多かったので、仕事をしているかどうかも知らないが、
飯はちゃんと食えていた。スーパーの弁当や惣菜がメインだけど。
6歳くらいの時に、隣にとても大きな家が建った。そのあまりの大きさに
「お城だ!お城が建ったよお父さん!」
と、はしゃいでいたのを思い出す。
そこに引っ越してきたのは、その大きな家に相応しい身なりの一家で、
特に目を引いたのはドレスの様な服を着たとても可愛い、
同じくらいの歳の少女だった。
「お姫様が居る・・・」
ボソッと呟き見惚れていると、その少女はこちらに気づき近づいてきた。
「ねえ、あなたなんさい?お名前は?」
近くで見るとほんと可愛い お人形さんみたいだ。
ボクはドキドキしながら答える
「ぼ、ぼくは 永成伸太 6歳」
それを聞いた少女は、とても嬉しそうに
「わあ!おなじ年だ 私は 依澄静香 っていうの、よろしくね」
そう言いニコっと笑う少女は天使のようだった
これがボクの初恋だった。
それから少女とは仲良くなり、よく一緒に遊ぶようになった。
特に多かったのが、騎士と姫ごっこ
そのへんにあった棒を拾ってボクは騎士の真似事をして、
姫を守りながら近場や公園を散策するみたいな遊び
「姫、なにがあろうと必ずお守りいたします」
ボクはそう言うと、姫もノリノリで
「おお、私の騎士よ、頼りにしてますわ」
てな感じで周りから見たら微笑ましくもある、
いわゆるなりきりプレイってやつなのかな。
そんな遊びばっかしてたせいか、日常でも姫と呼ぶようになり、
それが普通になっていた。
ちなみに姫はボクのことを伸ちゃんと呼んでいる。
幼馴染ということもあり、学校へ行くにもいつも一緒だった。
登下校や休憩中なども殆ど一緒に過ごした。
同級生に時にはからかわれたりもしたけれど、
心のなかでは(姫と離れたら何かあったとき守れないじゃないか)
と、何いってんだコイツラ程度にしか思わなかった。
姫もそのへんは気にしてない様子で軽くあしらっていたようだ。
当人達が全く反応しないので、からかいもそんな長くは続かなかった。
やがてそれが当たり前かのように周りも気にしなくなっていた。
姫を守るには、力がいる
なんかそんな思い込みで筋トレしたり
家に置いてあった木刀みたいなのを素振りするのを日課にした。
近くの林で拾った長い棒を空き地で振り回して、
テレビで見た棒術の真似事なんかもしたな。
そう、姫を守るには闇の力も必要になるかもしれない
右目に邪眼を宿し、その封印のため眼帯をつけることにした。
次の日 姫が心配そうに眼帯のことを聞いてきたから、
理由を説明したらものすごく嫌がって止めさせられたので、
今度は第三の目を封じるためにバンダナをすることにした。
もちろん姫には理由を内緒にしたけどね。
右手にも黒き龍を封印するために包帯を巻いておこう
巻き方はもちろん忘れないようにしないとね。
そんなこんなで、中学生も二年目に突入する頃には
ボクは立派な中二病となり
姫はそんなボクをからかう いじめグループのリーダーになっていた。