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中世、災害、給料

 ひとつの文明が中世化する。例としては日本とヨーロッパがあります。

 中国の五胡十六国・五代十国も、相当地方政権の時代ではあります。

 東ローマのテマ制度など、イスラムのイクター・ティマール制、インドでもジャーギール・マンサブダールなどの語が浮かびます。

 やや狭い地域を独立領主が支配している、文字などの共通性はある、馬を飼うことが重要である、などが共通点でしょうか。

 技術的には鋼鉄の武器とあぶみがあり、宗教の力がとても強いこともあります。


 かなり広く、その時代の技術・生産に適合した社会システムだったのでしょうか。

 銃砲以前であり、馬の強さが出る時代で、古代ローマ型の高度に訓練された大規模歩兵隊が維持できなくなっても戦えた、と。


 この文章のメインテーマである、ゴールデンバウム朝銀河帝国を理解する、という目的……

 近い世界として、『スターウォーズ』の特に帝国以前・以後における分遣的な各星、『デューン』『ヴォルコシガン・サガ』『星界シリーズ』の大貴族も目に入ります。

 中世を理解するには古代を理解する、とやろうとしてもきりがないです。かなり読んではいますが理解できた気がしません。


 日本とヨーロッパの中世化を比較すると、ヨーロッパはローマ帝国崩壊という文明崩壊の面が強く、日本はその面が少ないそうです。

 ただ日本も、法勝寺など院政期に作られた、「勝」の字を持つ六つの巨大寺はすべてろくに遺跡もないほど破壊されています。また前から疑問であることは、過去の国の政庁である国府・国庁・国衙こくが、国分寺・国分尼寺はどこにあったかも不明であることが多いということです。ですが各国の一宮の多くは続いています。

 その理由としては、古代日本は中央集権で富を都に吸い上げ、地方都市に富を残さなかったから、という説明があります。


 何が残り、何が消えたのか。

『銀河英雄伝説』原作の描写では、多くの星の開拓で大きく膨らんだ連邦は退廃したとあり、帝国になってから、同盟との戦争とどちらが主因かは不明ですが人口を大きく減らしています。

『火の鳥 未来編』では、宇宙各地にできていた植民惑星も次々と滅亡したようです。


 古代ローマの滅亡は、軍事的に侵略してくる蛮族を抑えられず、またインフレ・疫病などもあり、地方に軍事力を送って地方の人を守り、法を守らせ、特に心としてローマ帝国人であるという誇りを持って生きさせることができなくなったようです。地方からローマに行って学び、出世し、帰って故郷でも出世する、という回路もなかったのでしょう。

 そして現在の研究でも、難破船・大気の鉛(鉱工業で必然的に出て遠くの極地の氷河などにたまる)・花粉などから、交易と工業そのものが大きく減っていることは明白です。


 日本でそこまでの文明崩壊はあったでしょうか?

 中国では漢の滅亡・唐の滅亡とも事実上の文明崩壊であり、大きな人口減少があったようです。

 中東ではササン朝ペルシアが古代末、それが滅ぼされてイスラムになったのが古代ローマ帝国の滅亡のように古代から中世への転換にも似るようです。大帝国でありながら中世の性質も持つこともあるわけです。


 日本での巨大寺・国府設備の破壊は、源平(治承寿永)・南北朝・応仁の乱・戦国と長い時間をかけてのことだったようでもあります。多くは何度も焼け、しつこく再建されたところだけが残った、という面も。東大寺の大仏のように。

 国府がそのまま地方都市・巨大寺町となったこともあるようですが、そうだとしても少なくとも書類も伝承もろくに残していない、ということでもあります。



 宮殿や寺が焼ける理由として、戦乱だけでなくただの火事も結構歴史を動かしているようでもあります。

 以前「一般文明論・栄枯盛衰」で災害・宇宙レベルの気候変動についてはある程度やりましたが、普通の火事や地震や洪水でも結構歴史は動いています。日本史世界史のいたるところで、多くの都市や宮殿が焼けたり崩れたり沈んだりして、そのたびに。


 日本の平安時代からの歴史を見ると、内裏が焼けることが何度も何度もあり、それは大きな政変にもつながっています。

 そのたびに莫大な費用を費やし、多くの森林を伐採しています。

 再建費用は、「一国平均役」という言葉が残る、地域から税を取る制度を微妙に変えたりすることすらあるのです。荘園が強かったからこそ荘園からも税を取れる制度になった、とも言えますが。中世になる歴史でかなり重要な話です。


 また東大寺大仏の再建は、巨大寺に属さず全国を巡って莫大な寄付を集める、放浪僧の持つ巨大な力、地方の隅々まで仏教が信仰を集めていること、旅僧を求める社会そのものの変質を見せます。


 中国でも何度も都・宮殿が焼け、再建に莫大な費用を要して国を傾けています。

 清の末期、破壊された宮殿や庭園の修復に莫大な金を浪費し、それが近代化失敗の重要な原因でもあるとされます。

 日本も中国も徹底的に木造建築で、それはどうしても燃えやすいです。

 そして中国は、黄河という暴れ河があり、特に文明が衰退するころにとてつもない規模の洪水を起こし膨大な犠牲を出します。それが戦争兵器として使われることさえあるのが恐ろしい。

 それ以外も、あらゆる川・港は常に土砂に埋まります。ローマの下流の港、ベルギーやオランダの港も常に埋まります。


 中国と比較して、日本の江戸時代に振袖火事で江戸城天守閣が焼けた時に、あえて再建しなかったことはとんでもない英断です。民の生活を優先した、象徴を再建しなくても誰も逆らわないと人々・徳川の権威を信じた、ということなのです。


 西洋での大火災は、キリスト教迫害で有名になった皇帝ネロの時代のローマ火災があります。

 東ローマになってからではスポーツのところで上述の、戦車競技ファンが党派となって争い、大暴動となり、都の多くを焼いたことがあります。

 巨大な津波と火事でポルトガルのリスボンを潰した大地震は、信仰が深かったのに巨大な災害があったとキリスト教の権威が衰え啓蒙思想が強まった……ヴォルテールが有名……きっかけでもあり、国内では異端審問を強めたようです。そして財政に巨大な負荷をかけ、帝国の衰退にもつながりました。

 ロンドン大火災は木造建築の禁止にもつながりました。ロンドンでの大災害は大悪臭事件も印象が強いです……環境問題が都市生活で注目される最初の話となりました。


 火災は本が失われることにもつながります。比較的最近でも大規模な図書館の火災は何度も起きています。まあ、現代での図書館火災で、テキストそのものが完全に失われることは少ないのですが。

『三体シリーズ』の〈大峡谷〉はエドガー・アラン・ポーをはじめ大半の本の全テキストを完全喪失させたそうです。

 また『火の鳥』の未来では聖書の消滅が語られています。


 さらに最近ではハリケーン・カトリーナ災害で、アメリカという国がどれほど崩れているか、どれほど国そのものが弱者・黒人を人間だと思っていないかを見せつけました。

 関東大震災の時の朝鮮人虐殺・反体制派の虐殺も近年注目されています。

 大災害は、伝染病と同じように、社会の化粧を落とすように、普段は隠された深い部分を暴いてしまう面があります。

『三体シリーズ』で、光粒の誤報こそが地球人相互の憎悪・不信、事実上暗黒の森であることを見せつけ、だからこそ団結して理性的な行動ができなくなったことを思い出します。ロボットアニメなどの中には、追い詰められた時の人類の醜さをきっちり描く作品もあります。



 もちろん都市の火災・破壊は戦争によるものも大きく、常に膨大な本が焼けることにもつながります。

 特にモンゴルによるバグダッドとその周辺の破壊は、膨大な書物が焼かれると同時に灌漑システムも破壊され、地域全体が徹底的に衰退し、さらにイスラム文明そのものが後ろ向きになったきっかけともされます。

 スペインによる中南米帝国の破壊も、伝染病も大きかったですが、文明そのものの根絶とも言えます。

 後には寛容になるイスラムですが、ササン朝ペルシアの文献が今の日本の巨大書店でも異様なほどないのは、征服時の文化破壊が徹底的だったことを示唆しています。また言語・文字すら転換しました、時間をかけたにせよ。


『銀河英雄伝説』では同盟の衰えの象徴として大規模な火災事故があり、終盤にはルビンスキーの自爆によるハイネセンの全焼がありました。そこではラインハルトを守るために多くの文化財を犠牲にしたエピソードもあります。

『スターウォーズ』非正史ではユージャン・ヴォングがコンサルトをはじめ銀河の多くをめちゃくちゃに破壊しました。

『三体シリーズ』の三体星と地球の破壊は、悪意とは言えない暗黒森林攻撃ですが、だからこそ徹底したものでした。


 星が滅ぶレベルの超大規模災害は『ダーティペア』で繰り返し描かれます。

『火の鳥 望郷編』では主人公たちが通りがかりに、太陽の気まぐれで焼かれる文明星を見せつけられました。

『彷徨える艦隊』ではギアリーは昔、大規模な惑星災害の救援任務を経験しています。物資など焼け石に水、わずかな人を運ぶのがせいいっぱい。壱〇〇年の戦争でその災害のことなど皆忘れ、隕石もどきで惑星を皆殺しにすることもされることも当たり前でした……が、ハイパーネット・ゲート破壊での星系破壊は、一線を越えていると多くの艦長たちは思い、ギアリーと科学者であるクレシダは再発防止のためにある行動をしました。

 戦争の結果なら『ガンダム』の宇宙世紀やXのコロニー落としもすさまじい。


 火災から見た世界史を書くのであれば、森林破壊の歴史と、財政の歴史も書くべきでしょう。が、そこに深く踏み込むにはあまりにも知識が不足しています。

 フランスやスペインの繰り返される財政破綻は多く語られますが断片的で、財政だけを中国も日本も加えた世界史全体から抜き出した本は今のところ見つけられていません。



 また重要となるのは、給与の与え方でしょう。

 本来ならば、すべての税を中央に集め、すべての役人や寺社に、決められた額を与えるべきでしょう。

 日本が各地を支配する豪族から、中華帝国をモデルにして公地公民制としたときは、その理念だったはずです。

 しかし、広く道路を作りにくい日本で遠くから中央に税を運ぶのは、『火の鳥 鳳凰編』の税としての米を担いで死んだ男を見るように、明らかに無駄で暴政となります。


 そして征服者は、手柄を立てた部下に土地を与えるものです。それも封建化につながるでしょう。

 ゴールデンバウム帝国が、ルドルフに近い功臣に星系を与えることでできたように。

 本来はそれは、その部下が土地で軍を集め反乱するリスクがあることです。しかし、それを理由に惜しむのは「お前を信じていない」というようなもの、それこそ『三体シリーズ』の猜疑連鎖が発動します。

『火の鳥 黎明編』のニニギは、部下に土地を与える、という発想はなかったようです。

 中国の秦がもとから、爵位と食邑しょくゆうはあっても、国の王とする、ということはありません。

 秦を滅ぼした劉邦は、韓信が仮王を名乗ろうとしたとき不快を示して王とし、結局粛清しました。

 劉邦と項羽の違いは、劉邦は惜しみなく与え、項羽は惜しむ、と言われます。また足利尊氏も極端に物惜しみしない天下人で、だからこそ天下を取れましたが、功臣粛清をし損ねたのか巨大な守護大名が多くあり足利家自体の領土は少なく下を抑える軍事力はありませんでした。

『銀河英雄伝説』のルドルフは功臣=門閥貴族の富も巨大だけれど帝国の富も巨大、内戦では帝国艦隊と貴族艦隊が拮抗するようなバランスだったようです。

『スターウォーズ』で、たとえばダース・ベイダーが所領を持った様子はありません。徹底した中央集権のようです。


 昔の中国や古代ローマのように、徴税請負と軍の権利を分けることもありました。

 しかし中世の時代に入ると、それが一体化し、領土内の裁判なども含めて事実上主権を与え、軍役で上に仕える形が多くなるようです。


 給料と仕事の関係について考えると、以前も検討した『ホーンブロワー』など西洋、また多くの日本江戸時代の話などから、昔は公の仕事の多くが自腹であったことも伝わります。

 戦艦を受け取って海軍艦長として戦う、堤防を作る、火付盗賊改をやる、などで、自分の持ち出しが多いのです。

 日本の天下普請と言われる江戸城や名古屋城、濃尾の大規模河川の堤防などとんでもない規模の工事が、幕府が大大名に命令し、大大名は自分の財布で人を雇ってやるのです。それは嫌だというなら反乱の準備でもしろという言葉が伝わったり、薩摩は何人も重役が切腹して恨みを骨髄に刻んだり、という話が伝わるほどです。

 もちろん、仕事を請け負って自分の金でやるのであれば、その収益も自分の懐に入れる、利権とするでしょう。


 また日本の防人、中国の秦の法などで、自作農が食糧自前で徴兵される、という制度が常にあります。西洋でも古代ギリシャは、武装自前の自由市民が集まって軍とし、その理念や法システムは古代ローマ市民も同じです。


 国家が官僚・軍・土木工事・宗教にどのように給料を与えるか、それも相当に重要な歴史となるでしょう。

 荘園という制度が日本でもヨーロッパでも中国でも見られ、地域を大貴族や宗教組織が治めて税を取り、馬に乗る武人としても活躍する形が見えます。

 ゴールデンバウム朝銀河帝国も、銀河を奪って分配することで支持者をひきつけ、固く結束させて暴力を行い、支配しました。

 ですが、地域が細分化されると、悪くすればライン河の泥棒男爵のようにせっかくの川が寸断されてその通過関税で物流が滞ることになります。大規模な河川工事もできなくなるでしょう。

 そして大規模な軍事力を集めるのも難しくなるでしょう……が、中華式の帝国も、自作農を自前でやる、あれは相当規模が小さい国が基準ではないでしょうか。背負える・負担できる食糧で自前戦闘が可能な。

 そして大規模な軍事力を集めることでは、常に遊牧民は定住農耕民を上回っていました。

 ギルドの問題が『デューン』で目立ちます。ギルドに支配された商工業は進歩しにくいです。カースト制度もさまざまな職業の人間を保護する面もありますが、同時に進歩を阻む面もあります。


 中世化、自給自足・独立の性質が強い小さい領土の集まりになってからの日本やヨーロッパ、またイスラムですが、そうなったらそうなったで宗教・文字・交易は必要とします。

 特に塩。

 鉄は鎌倉時代の、相州や備前などあちこちの産地が伝わるようにある程度分散するようですが、日本は自前で信用ある貨幣を作れず、中国から銭を輸入しました。

 中世の多くは宗教がとても強くなるのです。暦や文字が、とくに宗教を通じた人の行き来によって共通性が保たれ、ある程度はフランス・ヨーロッパ・キリスト教世界、あるいは日本、というアイデンティティを作るようです。

 中国がバラバラになっても、そして侵入してくるテュルクやチベットなどのさまざまな西方民族も、多くは漢字を学び中国文化を受け入れてしまいます。モンゴルも清も漢字と儒教を廃するどころか、特に清は誰よりも強く儒教の努力をしました。

 そして無数の独立国の集まりだとしても、少なくとも塩の交易はどうしても必要になります。ほかにもさまざまな交易が常にあります。


 ゴールデンバウム朝、また『スターウォーズ』の共和国時代でも、ナブーを閉鎖したトレード・フェデレーション、『デューン』のさまざまな商業ギルドなど、多くの商人が星と星とを結んでいたでしょう。

 その極端な姿の一つが『星界シリーズ』の〈アーヴによる人類帝国〉、星に降下して支配することをせず、星間交易と志願兵の受け入れのみ。


 中世史の交易史の部分も、これから調べていくべきでしょう。


 そう……あれば読みたい本。形は想像できる本。

 タイトル自体はわかりませんが、「財政の世界史」「古代から現代まで、各文明の官僚給与の歴史」「財政破綻・貨幣改鋳によるインフレ・バブル崩壊の世界史」「火災・自然災害の世界史」「交易史」「荘園の比較史・土地制度史」「中世比較史」「環境史」を各章としたような本。

 筆者から見れば、目標というには遠すぎる話です。イメージすること、このように断片的な思い出したことを集めることぐらいです。


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