ギルド選びは慎重に
チュートリアルの街、オイワチリ。
「随分と賑わってんだな。話題になってるだけあるなぁ」
『誰よりも早く魔王を倒すRPG』、通称『だれまお』。
リリースされたのは昨日の正午だが、ユーザー数は既に百万人を超えたらしい。
「そこの君、うちのギルドに入らない?」
気になるものが多すぎてキョロキョロしていると、後ろから誰かに声をかけられる。振り向くと、綺麗な金髪のお姉さんがいた。
背中に弓を背負ってるのを見るに、弓使いだろうか。
「ギルド? それって入っておいた方がいい感じですかね?」
「まあ絶対ではないけど、入ってた方が結構お得だね。ギルドランキングってので上位を取れば豪華報酬を貰えたり、ギルドに入ってなきゃ受けられないクエストもあったりするらしいし」
「......なるほど。じゃあ是非入らせてもらってもいいですか?」
「あれ、即決。他のギルド見なくても大丈夫?」
「俺は一期一会ってのを大事にしてるんですよ。それに、お姉さん綺麗だし」
「あら、嬉しいこと言ってくれるね。じゃあ、招待メール送るから承認ボタン押して」
お姉さんが言うとすぐに、目の前にメッセージが現れた。
『カズハからギルド"夢の国"へと招待されました。承認しますか?』
「お姉さんはカズハさんって言うんですね。承認、と」
「君の名前は、"くろひと"で合ってる?」
「あ、黒に人で一応"黒人"って読みます」
「......かっこいい名前ね」
今絶対厨二病っぽいて思いましたよね?
「ようこそクロート君、ギルド"夢の国"へ。君は記念すべき第一ギルドメンバーだよ」
「え、ギルメン僕とカズハさんしかいないんですか?」
「今更文句を言われても困るよ? 確認しなかった君も悪いんだし」
「いえ、責めるわけじゃないんですけど。こういうのって決められた人数集まらないと作れないとかじゃないんですね」
「一定のお金と拠点、それさえ払えばギルドは誰でも作れるわ」
「へー、そうなんですね」
「ただし、払ったお金によって入れられる人数が違うの。10人が上限のギルドでも1000万ユーシ必要で、そこから一人増えるごとに100万ユーシ必要になってくるの」
ユーシってのはこの世界の金の名前だな。まだ金銭感覚が分からないけど、1000万ってだけで結構な額な気がする。
ギルドを創設するリーダーはかなりのヘビーユーザー達だって事だろうな。つまり、カズハさんはこのゲームの上位ランカーということか。
「ちなみに、カズハさんはいくら払ったんですか?」
「200万よ」
「へー。良く持ってましたね、そんな額」
......ん?
「あれ? ギルドを作るのには最低1000万必要なんじゃ」
「そんな事言ってないよ? 10人上限なら1000万必要って言っただけよ」
「ああ、つまりその下もあると言うわけですね。ちなみに、200万だと上限は何人なんですか?」
「言ったでしょ、1人増えるごとに100万必要だって。10人で1000万なんだから、そこから減らしていけばいいの」