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04 近代魔法戦闘

月木投稿を目指しています。

 包囲を固めた時にレールガンは、砲身の半分を既に切り離(パージ)して、近接攻撃用に仕様変更していた。


「デルタ包囲で攻撃だ」

「「「了解」」」

「でも【デルタ包囲】って何だよ?」


 打合せの無い名称に仲間の一人から突込みが入るが、一時的に思考の一部を共有している為に意思は伝わっている。


 四人は敵を取り囲み、三角錐の下部頂点部分にあたる三方の位置から攻撃を開始する。

 上空へ行った者は攻撃をせずにひたすら上昇をつづけていた。

 だがこれは、戦闘をしないのではない。


「近付き過ぎるなよ」

「分かってる!俺たちゃ所詮は前座だ。(はしゃ)ぎ過ぎない分別はある」


 三方のロボットは、レールガンから2キロメートルほど離れて砲撃を始めた。


「観察の結果、やはり上位種の様だ」


 魔素の収集能力も後継者の方が上なので、魔法構築中に力を奪われる可能性もある。


「クソッ!やはり逆位相を掛けてやがるか」


 ロボットからの攻撃は、レールガンの近くに来ると、煙の様に消えていく。

 ロボットからの砲撃は魔法による攻撃だが、コレは電磁波に似た性質がある。

 つまりは、波長と言う物があり、逆位相の魔法を重ねる事で霧散してしまうのだ。

 近代戦の特徴は相手の攻撃の回避は勿論だが、撃破や妨害する【無効化】が主流だ。


 この防御はロボット側も出きるのだが、レールガンからの砲撃は魔法と質量弾のミックスである為に、質量弾を分解しても魔法攻撃でダメージを受け、魔法を相殺しても質量弾でダメージを受ける。

 ロボット側は、先の電磁波と熱量のフィールドも維持しているので、これ以上の合わせ技を使えない。


 レールガンは不動だが強固なシールドで守り、ロボット側は機動力を駆使して砲撃を避けていた。


「ここは、俺の出番かな」


 レールガンの真上で周囲を探っていた球体が、成層圏まで上昇して傘の様な形に変形し、下方の対流圏に小さな竜巻を起こし始めた。

 狭い範囲に黒雲が立ち込め、空に向かって竜巻が発生している。


 別に嵐を呼んでいる訳ではない。これは副産物だ。


「さてさて後継者様は、このブラックレインに耐えられるかな?」


 周知の事だが、地球の大気には0.03%の二酸化炭素が含まれる。

 それから得られる炭素を圧縮するとダイヤモンドが出きるのだが、これを更に圧縮すると多結晶ダイヤモンド(カーボナード)と言う黒い結晶となるのだ。


 透明なダイヤモンドが傷付きにくいと言うのは知られているが、ガラス程度に割れやすいと言う事は意外と知られてはいない。


 しかし、このカーボナードは、傷付きにくい上に割れにくさも地上最高の値となる。


 成層圏に居る彼は、このカーボナードの塊を地上20キロメートル以上の高高度から、魔法による防御を付けて雨の様に落とすつもりなのだ。

 地上への落下速度は、音速の数倍に達するだろう。


 時間は掛かるが、下手に元素変換するよりはエネルギー消費が少なくて済む。

 上空の彼は、地上の四人の様に余分な力を使う必要がないので、車輌からの攻撃を避ければ魔力をカーボナードの生成に費やせる。


「ついでに二酸化チッ素も作っておくか!」


 二酸化チッ素とは、チッ素と酸素の混合気体に火花を浴びせるだけでできる有害な成分だ。

 人間の皮膚や粘膜に対して刺激性、神経毒性、催奇形性等を持つ急性毒性物質である。

 地球の大気は70%がチッ素、20%が酸素なので材料には事欠かない。


 常温で液化する二酸化チッ素をカーボナードの器でコーティングしていく。

 最強のカーボナードと言えども強度に限界はある。

 砲弾として対象を破壊しても無事という訳にはいかないが、それを逆手にとり壊れた際に有害な二酸化チッ素が漏れだして人体を汚染すると言う算段だ。


「準備はできたぜ!」


 上空からの通信に、周囲からの攻撃が一旦止み。ロボット達が集り始める。

 成層圏では、既に10センチ程の黒い塊が百個ほど落ちはじめていた。


「じゃあ、タイミングを合わせて行くか!」


 まるで黒い光の様に降ってくるカーボナードにタイミングを合わせて、集結したロボット達から複数の光が放たれた。

 その光はレールガンの基部へと集中している。


 要は、他方向からのバラバラな攻撃を、それぞれの魔力波長に合わせて相殺していのを、纏めて重ね合わせて防がなくてはならなくなるのだ。

 いや、それだけではない。

 ロボット達は、それまで使用していた抑制フィールドを一旦解除して、その分の魔力を別の攻撃魔法へと注ぎ込んだ。


 更には上方からも質量弾と異種な魔法攻撃がやって来る。


 レールガンの後継者は、恐らくだが一人なのだろう。


 合計八種類の異なる魔法攻撃に防御が追い付かず、レールガンの半分が吹き飛んだ。

 いかに強大な魔法使いでも、能力には限界がある。

 杖の無い魔法使い、剣が折れた剣士、弾切れのガンマン。

 戦えない訳ではないが、決定打は放てない。


「見たか?」

「ああ、黒い奴だろ?」


 レールガンが破壊された後も攻撃を続けていた地上のロボットパイロット達は、予定外の物を感知していた。


 カーボナードの雨に混じって、レールガンへと降り注ぐ黒い力を。


 レールガンが破壊されても保たれていた魔力の塊が、徐々に消えていく。

 ゲート展開の気配も消えたのを確認してから彼等は攻撃を辞め、千里眼でレールガンの内部を覗いた。


「これが【呪い】か!流石だな」


 レールガンと車輌の中には、攻撃で傷ついた者も居たが、今は全員が肉体を腐らせて死んでいる。


 【魔法戦闘】では、巨大な火球や破壊魔法などビジュアル的に派手な物が持て囃されるが、【呪い】こそが魔法の基本にして最たるものなのだ。


「これは、かなり上位の【精霊様】か、【後継者様】が来てくれた様だな」


 【呪い】に関しては、相手を認識できれば、その場に居なくても行使ができる。

 魔法戦闘においては、如何に自分の存在を隠蔽できるかが、勝敗を左右するのだ。

 認識できない者や、虚像しか見えていない者には、【火球】だろうが【呪い】だろうが、当てる事はできない。


 その様な意味では、レールガンの後継者は未熟であり、ロボット達は良い囮になったと言える。


「スパイ衛星からの画像と軍事用高高度ドローンの映像、加えて我々四人からの映像もあれば、呪いの発動には充分だな」

「流石に我々四人の存在と攻撃を、我々の上位者からの攻撃を隠す為とは思うまい」


 最初に言っていたが、彼等は時間稼ぎであり、前座なのだ。


「これで、アウトキャストの戦力を一つ減らせたな」

「単独で突出するからコウなるんだよ。たぶん、傲慢な奴か経験の浅い後継者だったんだろう」


 死体を処分し、ロボット達は再び戦場へと戻っていく。


「では諸君、人間の未来の為の殺戮を続けようではないか!」

「もっと、ヒーローらしい台詞は無いのかねぇ?」

「仕方ないだろ。我々は【悪魔】と呼ばれた者達の手先なんだから」


 彼等の事が人間の歴史に刻まれる事は無いだろう。


 神話の時代から善意の真意は受けとめられず、歪められ、悪しき事として伝えられてきた。

 それ故に、真の英雄は正体を隠すのだろうか?


 彼等の介入した戦争は、これだけでは無かったが、いずれも敵との戦闘以外で多大な死者を出して休戦条約を結ぶ事となった。


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