戦闘
ワタクシは、すぐさま軍をとりまとめると、クラウドラとの国境に進軍しました。
フルメイルの女物の鎧を纏い、前世の歴史で習ったジャンヌダルクのように、軍を率います。
ワタクシは、ミラーに教わりながら、自分の体の中を流れている魔力のコントロールを試みています。
自在に操れるようになってきました。
「というか魔力とはなんなのでしょう」
「まあ、遺伝などもあるが、言ってしまえば精神の異常性だ」
「なんですか。それは! まるでワタクシが異常みたいではありませんか」
「まるでではないぞ。悪魔より明らかに異常だろう」
「ワタクシは普通です」
「自分が普通だと思っているのが、一番異常なのだが」
「前世はただの女子高生。現世はただの令嬢ですわよ」
「なんで混ざると悪役令嬢になるのだ。おかしいであろう」
「ゲームの強制力ですわ!」
「だから、そんなものはないといっておるのに」
全くうるさい悪魔です。
後ろを見ると、もっとうるさい声での言い争いが聞こえてきます。
「ワシは王だぞ。大切なレティセルを守るのは、ワシに決まっておる!」
「老いぼれの親父は引っ込んでろ!」
「ここは、騎士団長である俺に任せてくれ! レティセルは必ず守ってみせる」
三人は競うように言い争いをしています。
本当に魅了の効果はすごいです。
ワタクシは、三人見てうなずきました。
「前世を思い出しますわ」
「前世でも将軍かなにかしていたのか」
「まあ、似たようなものですかね。近所の子供を全員従えてガキ大将していましたわ」
「ガキ大将? なんだそれは?」
「子供の戦ごっこです。小学生のころは、男女差なんてありませんから、俺は強いという男の子を殴り飛ばして、従えていましたわ」
「おおい! 今もやってることが子供と変わらぬぞ」
「女に拳で負けたなんて、男は情けなくて言いつけたり出来なかったんでしょうね。ワタクシ一度も怒られたことありませんわ」
「どれだけ暴力娘なのだ……。いや……だが、それでもそれは、子供のお遊びだろう?」
「まあ、そうなりますわね」
「大丈夫なのか。そんなんで本当の戦争なんかやって」
「正直、作戦なんてよくわかりません」
「あのなー」
ミラーが呆れています。
ワタクシ一人では、無謀なのは、わかっています。
「ですが、ワタクシには、ついているでしょう」
ミラーは、後ろの三人組を見ながら言いました。
「あいつらは、たいした足しには……」
なにを言っているのでしょうか。
ワタクシはミラーをしっかり見ていいました。
「ワタクシには、ついています。最強の悪魔である、あなたが」
ミラーが、きょとんとしてワタクシを見ました。
「つまり、私に敵を倒して欲しいと願うのだな?」
「なにをいってるのですか。ワタクシの魂はエレノア様の幸せのために捧げると決めています」
ミラーは理解不能といった感じに首をふります
「どういうことだ?」
「あなたは、魔王は女であるといいましたね」
「たしかにそうだが」
「ならば、悪役令嬢たるワタクシにも敵を倒せぬ道理はないということ」
「そういう理屈には、ならんだろう」
「少なくとも、女であることとかが戦わない理由にはならないということです」
魔王にあったことは、ありません。
本当はどういう人物なのかも、わかりません。
ですが、女で魔王になっているというのは事実です。
「子供であろうと、大人であろうと、男であろうと、女であろうと、やることは変わりません。敵は全力で倒すのみ」
幸せはこの手で、掴み取り、敵は殴り飛ばす。
「それに、ワタクシが死んで魂が奪えず、困るのはミラー、あなたの方でしょう」
ミラーが、キョトンとしてワタクシを見ました。
そして、顔を手でおさえ悪魔らしく笑います。
「はっはっは、そうであったな。そうだった。お前は悪役令嬢、悪魔すら手のひらで転がす最悪」
「その通りですわ」
「いいだろう。今回は倒した敵から魂をいただくとしよう」
ミラーがそういうと、ちょうど開けた場所に出ました。
敵の軍も見えています。
視界を埋め尽くすほどで、数はこちらより圧倒的です。
ですが、なにも恐れるものはありません。
だって、ワタクシは悪役令嬢。
この世界で誰よりも、我が儘に幸せを望む者です。
「推しの幸せを邪魔するものは、鉄拳制裁ですわ!」
グッと拳を握りしめます。
魔力解放『無限水拡大』
水をはったような魔力が広がっていきます。
しゅるりと元の鏡の魔導具に戻ったミラーに、魔力を流し込みます。
魔鏡変形「すべての始まり」
鏡がグニャリと形を変えています。
ミラーは、変形すると岩石ほどの大きな手となりました。
敵軍が大量の火の玉を放ってきました。
「さあ、戦闘開始ですわ!」
カッと翡翠色に瞳輝くのを感じました。
ワタクシは、敵の攻撃を狙い定めて殴りつけます。
火の玉に拳がインパクトする瞬間に、異界の力が迸ります。
魔術「魔鏡反射」
魔法の拳が、ミラーの力を纏うと敵のはなった魔法をそのまま反射しました。
敵は、自分たちがはなった魔法が、そのまま返ってきて、阿鼻叫喚の地獄絵図になりました。
「反撃ですわよ!」
拳を握りしめると、さらに魔力が湧き上がってきました。魔法の拳は、グングンと成長するようにさらに巨大化していきます。
魔術「無限魔鏡」
浸食。
悪魔の魂が自分の魂に混ざり合うのを感じました。
自分をはさむように現れた鏡に、無限に姿が映し出されます。
鏡が割れた瞬間、意識が無限に分断されて、巨大な拳が分裂し現れました。
『拳流星群』
空を覆う星の数ほどに増えた、巨大な拳が、敵軍に向かって降り注ぎました。
一撃で、敵の前線を吹き飛ばしました。
「魔王みたいに、一撃で崩壊とはいきませんか」
それでも、手応えは感じました。
ウォオオオオオオ!
自軍から、雄叫びがあがります。
勝ち目がある。
それだけで、志気が一気にあがりました。
「レティセル指示をだすのじゃ!」
王がワタクシに指示を促します。
剣と魔法のRPGはあまりしたことありません。
だから、知っているコマンドは一つだけ。
『攻撃』だけです。
慈悲などはありません。
する必要もありません。
だって、ワタクシは悪役令嬢。
敵はすべて叩き潰すのみ!
「全軍突撃! 敵はすべて殲滅ですわ!」
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