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21. ブルムフィオーレの三大魔法使い

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memo:

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結婚してから一年近く経った、夏。

実家にて←now


【ラヴェンディア・パンセ(17)】


淡い紫色の髪に、新緑の瞳。

実家から逃げ出してきた元伯爵家長女。

十三歳のころから、森の屋敷で住み込み家政婦として働いている。

冬の街プチ・ウィンテルクシュ出身。

実は酒が好き。

義弟によって「誰かに愛されるまで自信を持てない呪い」と「死ぬまで誰にも愛されない呪い」をかけられていた。(解けている?)



【妖精魔道士エリアル(見た目17歳/実年齢約300歳)】


ストロベリーブロンドに、色素の薄い青い目。童顔。

ラヴェンディアの雇い主。三大魔法使いの一人「叡智の妖精魔道士」。

人と妖精とのハーフ。

本名「ストロベリアルドベック・コプロスマ」。愛称「ベリィ」。

夏の街プチ・アスメルの森に住む。

雪の中でも咲く花「パンセ」を開発した。冬の街では英雄扱い。

「あーあ、せっかくの器が壊れちゃったじゃん。今回の入れ物は特に気に入ってたのに」


 義弟だったものは、ばきばきと肩を鳴らした。


 そして言葉とは裏腹に、さして残念そうでもなく言った。




「魔のものの末裔、それも先祖返りだ!

 知ってた? パンセ家も魔のものの末裔だし、ソレイユ母さんの血筋は召喚された少女の直系なんだ。かけ合わせで生まれた俺の力が強すぎるのも納得だよね!」



 アメジストのような瞳は、闇の中で爛々と輝いている。


 けれども、その髪の毛は、薄暗い部屋の中でもわかるくらい、真っ黒に染め上げられている。


「魅了の力は使い放題だから、屋敷の主を洗脳してせっかく貴族になれたのになぁ……。

 すごい力だよ。同性の、なんの血の繋がりもないやつ相手にも効果抜群だったんだから!

 この力を人工的に使えるようにしたいものだなぁ」


「おまえは……!」


「--綿毛の。君、まだ生きながらえてたんだな」


 真っ黒な髪になった義弟を、ソフィが睨みつけた。


「名無しの……。おまえ、たしかに死んだはずだ」


 ソフィが低い声で訊く。


「ふふ、久しぶりだねぇ、友よ! 前回は殺してくれてありがとう! おかげで実験が成功したんだよ。

 死ぬと必ず生まれ変われる魔法!なかなかの傑作だろう?」


 痛みは薄れてきたけれど、体力を使い果たしてしまったのか、眠けが襲ってきた。


「この魔法は、君の縁結びの魔法にヒントを得たんだよ! 俺の魂のかけらに、縁結びの魔法のリボンを結んである。

 魂が肉体から離れると、自分と思考や相性のいい器を自動的に探索して、母体にいるうちに飛び込むのさ。

 はじめのうちは魂を共存させているんだが、少しずつ混ざり、溶け合っていく。精神も能力もね。だから、転生を繰り返すたびに俺はどんどん進化していくんだ!」


 男は、目を爛々と輝かせて、滔々と語り続ける。


「ただ、未完成の魔法でね。課題はたくさんあるんだよ。

 まず、子どものうちは思うように動けないだろう? 実は今の俺はまだ完全体じゃないんだ。あと三年は必要だな。

 それから、うつわの思考にもかなり汚染されてしまうことも悩ましい」


 獲物を狙う蛇のように、ねっとりとした視線が私を捕える。


「ねえ、綿毛の。殺すのやめてあげるからさ、義姉さんをちゃんと治してね?

 俺、どうしても治癒魔法だけはうまくいかないんだよ。相性が悪いんだろうね」


「ーーおまえは、何を言っているの……?」


「これも問題のひとつなんだけどさ。

 エンツィアンの執着のせいだよ! 俺自身は研究以外、なにも興味が無いはずなんだけどなぁ……」


 男は、のんきに頭をポリポリと掻く。


「義姉さんを、--その女を未来永劫、離せる気がしないな……」


「まさかおまえ……!」


「うん。綿毛のが治してくれたら、俺と同じようにまじないをかけておかないとね!

  死んだら必ず転生する魔法!

 それでもって、お互いの魂にも縁結びのリボンをくくりつけて、必ず出会うようにしないといけないなぁ……。

 死なないと解けないはずの呪いがなぜか解けてるからさ、万全を期してしっかりと魔法を練らなくちゃ」


 最後の方は、ぶつぶつと独り言に戻っていった。


 まだ体は動かない。

 でも、少しずつ靄の晴れてきた頭の中で、私はリグラリア先生の授業を思い出していた。


 ブルムフィオーレの三大魔法使いのこと。


 一人は綿毛の魔女・ダンディリオーネ。正義と恋の魔女。


 それから、悪事を働いて綿毛の魔女と戦い、敗れたとされる名無しの魔法使い。


 そして--。






「僕のラベンダーをどうするって?」


 不老の妖精魔道士エリアル。

 --ストロベリアルドベック・コプロスマ。


 私の、最愛の人。


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memo

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【ムスカリ爺さん】

エリアル唯一の友を自称する筋骨隆々とした老人。病弱な妻を愛している。パンセ伯爵家長女の母親と、使用人の父親を持つ。弟がいるが、すでに故人。


【ソレイユ】

ラヴェンディアの乳母であり義母であり、はとこ。

褐色の肌、焦げ茶の髪、金色の目。(本当は紫色の目)

母親が異国(砂の王国)の高位貴族(?)であり、祖母がパンセ家の令嬢。

実は魔法が使える。

ムスカリ爺さんの姪で、成人したのをきっかけにパンセ家で働くようになった。



【エンツィアン】

ラベンディアと同い年の義弟。

"望まれない子ども"(?)

薄紫の髪に、濃い紫の瞳。

ラヴェンディアに2つの呪いをかけていた。




【ソフィ】

ラヴェンディアの友人。金髪緑目、小柄だけどどこか妖艶な美女。

その正体は、三大魔法使いの一人「綿毛の魔女」。


【リグラリア先生】

ラヴェンディアの家庭教師だった人。老齢の魔法使いのような見た目。魔法マニア。気になることがあるとそちらに夢中になってしまうタイプ。

魔法は使えないが、知識は膨大。



・ブルムフィオーレ王国の子どもは「正式名」と、愛称となる「守護花名」の二つの名をもらう。


・ブルムフィオーレ王国には、魔法を使える者はほとんど生まれない。三大魔法使いとして歴史に名を残す者たちがいる。


・ブルムフィオーレ王国は、四つの地方に分かれている




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ラベンダー! 植物図鑑

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エンツィオ


竜胆をもとにした架空の花。

エンツィアンの守護花。


・花期:秋

・花言葉:

「諦めない心・未来を信じる(アスメル地方の花言葉)」

「悲しむあなたが好き(ウィンテルクシュ地方の花言葉)」など

・別名:叡智の花(アスメル地方)悲恋草(ウィンテルクシュ地方)


※母ソレイユは、プチ・アスメル出身です。


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