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17.砂の国のお伽話

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memo:

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実家に軟禁中←now

義母ソレイユが寝物語を話してくれている。


【ラヴェンディア・パンセ(17)】


淡い紫色の髪に、新緑の瞳。

実家から逃げ出してきた元伯爵家長女。

十三歳のころから、森の屋敷で住み込み家政婦として働いている。

冬のプチ・ウィンテルクシュ出身。

実は酒が好き。



【妖精魔道士エリアル(見た目17歳/実年齢約300歳)】


ストロベリーブロンドに、色素の薄い青い目。童顔。

ラヴェンディアの雇い主。三大魔法使いの一人「叡智の妖精魔道士」。

人と妖精とのハーフ。

本名「ストロベリアルドベック・コプロスマ」。愛称「ベリィ」。

夏のプチ・アスメルの森に住む。

雪の中でも咲く花「パンセ」を開発した。冬の街では英雄扱い。


「ラベンダーお嬢様……」


 目を覚ますと、まだ隣にはソレイユがいた。


 私は自分が過去の夢を見ていたのだと気がつく。少女時代を過ごした屋根裏部屋がそうさせたのだろうか。


 すでに日が昇っており、口の中がからからに渇いていたし、頭には鈍く重い痛みがあった。




「本当になんと言ったらいいのか……」


 ソレイユの目は赤く潤んでいた。


 五年近く会わないでいたうちに、義母といっても年若かった彼女も、多少年齢を重ねており、記憶の中の姿と少し違うので戸惑った。


 あのとき、私を屋敷から逃がしてくれたのは間違いなくソレイユだ。でも、いろんなことがありすぎて、気持ちをなかなか整理できずにいて。


 今も素直になれない。

 どう接していいのかわからずに、私はごろりと寝返りを打ち、彼女に背を向けた。


 私の心の内に気がついたのだろう。はっと息を飲む音がした。悲痛な沈黙が流れた。


「それじゃあ、寝物語でも。……わたくしにできるのは、それだけですから」


 そう言って彼女は、これまで読んだどの本にもなかった物語を、静かに語り始めた。


 顔を見なくても、なんとなくだけれど、彼女が泣きそうな顔で笑っているのではないかと、そう思った。



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 --気が遠くなるような昔のことです。


 海の彼方にある、砂の王国(サーブルザント)での出来事。



 その国は、神話の時代から、召喚によって恩恵を受けていました。


 この世界より進んだ文明を持つ世界から、魔法を使い、人々を攫ってくるのです。


 神は、彼らに干渉こそしませんでしたが、攫われてくる異界の者たちを哀れんで、いくつかの贈り物をしました。


 それはギフトと呼ばれ、私たちの知る、魔法と似たものでした。






 ある時代、世にも美しい少女が召喚されました。


 彼女は国の中枢にいる者たちを次々と篭絡し、国は滅びの危機に瀕してしまいます。しかし、革命が起きて、彼女は捕らえられました。


 彼女が愛されたのは、その美しさのせいだけではありません。


 煌めくような紫色の瞳には、魅了のギフトが宿っていたからです。


 彼女は捕らえられたものの、やがて、子を二人生みました。




 今となってはわからないけれど、それからというもの、世界のさまざまな場所で、魅了の力を持つ子どもが生まれるようになったと言われています。


 その子どもたちは皆、深い紫色の瞳をしています。


 彼らは、代々この話を伝えられています。


 そして、生まれたときすぐに、親に魔法をかけられます。魅了が発動しない魔法を。


 親の魔力を遥かに超えない限り、それは解けません。「呪われた一族」の禁忌の魔法は、それほど強いのです。


 そして、子どもたちはなるべく早いうちから魔法を習います。目の色を変えて見せる魔法を。--魅了持ちだと気づかれないように。



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「でも、あの子は魔法を破ってしまった。それに、目の色を変える魔法も、効果がなかった……」


 うとうとしていた物語を聞けたのは、そこまでだった。




「私たちは、彼女の末裔だから……」


 ぽつりとこぼれたその言葉を、私の耳が拾うことはなかった。そして、ソレイユの本当の瞳の色にも、気がつくことはなかったのである。


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memo

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【ムスカリ爺さん】

エリアル唯一の友を自称する筋骨隆々とした老人。病弱な妻を愛している。パンセ伯爵家長女の母親と、使用人の父親を持つ。弟がいるが、すでに故人。


【ソレイユ】

ラヴェンディアの乳母であり義母であり、はとこ。

褐色の肌、焦げ茶の髪、金色の目。

ムスカリ爺さんの姪で、成人したのをきっかけにパンセ家で働くようになった。


【エンツィアン】

ラベンディアと同い年の義弟。


【ソフィ】

ラヴェンディアの友人。金髪緑目、小柄だけどどこか妖艶な美女。


【リグラリア先生】

ラヴェンディアの家庭教師だった人。老齢の魔法使いのような見た目。魔法マニア。気になることがあるとそちらに夢中になってしまうタイプ。

魔法は使えないが、知識は膨大。



・ブルムフィオーレ王国の子どもは「正式名」と、愛称となる「守護花名」の二つの名をもらう。


・ブルムフィオーレ王国には、魔法を使える者はほとんど生まれない。三大魔法使いとして歴史に名を残す者たちがいる。


・ブルムフィオーレ王国は、四つの地方に分かれている。



砂漠の国の物語は完結済です。


この話だけでも問題ないですが、完結済の

『憑かれ聖女は国を消す』

→『捨てられ公女は、砂漠の隠れ家を目指す』

→『はずれ王子の初恋』

の順番で見ていただくと、異世界恋愛各種の舞台である"十六王国"全体の様子がわかるかもです。


なお、ソレイユの話の各物語内の設定と違う部分は「口伝で消えたり変わったり」をイメージしました。


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