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オーマイゴッド  作者: まきまき
1/1

縁結びの力を神様からもらったけど使えない物だったんだが、ちょっと悲しい童貞王

ー「オープニング」ー

 普通に生きてきて、学校閉鎖など経験したことはあるだろうか?

 僕はある。

学生の半数が病院送りになり、

 学生の半数が病院送させた原因となるという事件があった。

 この事件には愛があった。

 そしてこの事件の真犯人は僕だった。




























ー1章「権能の使い手」ー

     1

この世界は、妖怪・神様もいる世界だ。

でも僕は、唯の人間でなんの能力もなかった。

 けれど僕は、中学2年の頃に超能力を授かった。

 さて、どう言ったものだと思う?

 人を超えるスーパパワー?

 邪神を腕に宿すことで得る破壊のパワー?

 全部違う、そんな力じゃない。

 けれど僕はモテたかった。

 しっかりと彼女を作って、いろんな思い出を作りたかった。

 まあ何というか健全な中学生としてモテたかったのだ。

 とりあえず、僕、杉山ケイがどんな超能力を得たかの話を始めよう。

 あれは京都へ修学旅行に行った時の話だ。

     2

 京都へ行く修学旅行は初夏に決行され、ジメジメした暑さが印象的だった。

 僕は、朝起きうだるような暑さに辟易した。

「クーラーつけておけば良かったな。」

 こんな時、自分がただの人間であることに、嫌気がさす。

 基本的に人間なんて、繁殖力が高いが、体は他の種族に比べて弱いのだ。

 もちろん、魔術や霊能力などを使うことの出来る人間もいるが僕にそんな大きな力は無かった。

 あるのはほんのちょっとの霊能力くらいだ。

 その霊能力は何が出来ると言うわけではなく、クラスメイトの幽霊族を頑張って目をこらすことで見えるようになる程度だ。

 つまりは凡人、なんともつまらないものだった。

「そろそろ起きなさーい!」

 としたから母さんの声が聞こえてくる。

 寝起きでクラクラした頭で、制服に着替え出す。

 気分を切り替えて修学旅行のバスに向かわないと僕のせいでバスが遅れると大恥だ。

「いまおきたー!」

 と制服を着替え終わって、そろそろと頭が動き出したので階下の母親に返事を返した。

 下に降りようとしたが、危なく忘れ物をするところだった。

 スイッチを忘れようとしていた。

 現在、僕の友達の間でスマブラが大流行しているので、修学旅行でもやる予定なのだ。

 正直な話、スマブラは種族を超える。

 種族的に嫌われがちな垢嘗め族と友達になれたのもスマブラのおかげだ。

 そんなことを思いながら、下の階に降りていく。

 するとそこには、朝食とうなだれている高校生の姉さんが居た。

 因みに父は単身赴任で海外へ行っている。

 僕は姉さんに声をかける。

「また魔術の本夜遅くまで読みあさっていたの?」

 そうすると姉さんはかなり気だるそうに答える。

「うーん、違うよー、暑かったから風と氷の魔術を複合させて使えないか試してたら朝になってたんだよお。」

 何というか本末転倒にも甚だしい。

 魔術云々と僕の姉は言っている為、分かるかも知れないが、僕の姉は魔力持ちだ。

 正直かなりうらやましい。

なので僕はこう言った。

「いいなあ、姉さんは、魔術を使えて。」

 そういうと首だけをこちらに回してこう言った。

「ケイくんだって、霊能力持ってるじゃない。ちゃんと鍛えれば、私が使ってるぐらいの魔術の代わりにぐらいになるよお。」

「まあ、それはそうかも知れないね。でも今はスマブラが忙しいんだよ。」

 結局のところ、学校の勉強に更に霊能力を鍛えるなんてことをしていたら遊ぶ時間が無くなるんだ。

 それに鍛えると言うと簡単に聞こえるが、山ごもりや、滝に打たれたりお寺か神社で修行をしなくてはならず中々敷居が高い。

 それに比べて魔術は割と自己研究と自己研鑽で家で出来てしまうのでお手軽だ。

 とそこへ母さんが入ってくる。

「何でも良いから、早く食べなさい。特にケイは、今日のバスの集合時間が早いんだから急ぐのよ。」

 と尤もなことを言ってくる。

「分かってるよ、さっさと食べて早く行くよ。」

「修学旅行かー、いいなー私ももう一回、行きたいよ。何で人生で三回だけなんだろうねー」

 そんな風に姉が言ってくる。

 姉は今高校3年生で去年すでに行っているのだ。

「バカなこと言ってないで、マイも早く食べなさい。」

 因みにマイこと杉山マイは姉の名前だ。

「はーい。」

 といそいそと食べ始めた。

 さて僕はもう食べ終わったので、食器を片付けて、学校へ行こうとする。

「忘れ物はない?」

 そんな風に母さんが言ってくる。

「大丈夫、昨日のうちに確認したから。」

 スイッチ以外は。まあ忘れそうになったのは寝るまでやっていたからと言うだけだが。

「そう、じゃあ行ってらっしゃい。」

「うん、行ってきます。」

 そう言って僕は、出かけていった。

 修学旅行先の京都でどんなことが起こるかも分からずに。

     3

 犬バスで無事、飛行場にたどり着いた。犬バスとは、走るのが超大好きな大型犬で、中に入ることが出来るバスだ。何かどこかの映画で見たような気がするが多分気のせいだろう。

 しかし、僕は飛行機には乗るのが初めてで期待感と不安感が入り交じっていた。

 飛行機を飛ばす動力のスカイフィッシュたちもどこか怠そうにふよふよと浮いていた。 それを見て僕は非常に不安だった。

飛行機に乗るのが、初めてでどんな状態でも不安だったのにこれだ。

 大丈夫かな?この飛行機は、落ちるんじゃないかなそんな風に悪い想像ばかり考えていた。

 けれどそんな不安は、頭から消し飛んだ。飛行機では隣に、クラスの猫又美少女倉田さんがいたからだ。

 これは最高のスタートだと、そう僕は感じた。

 この美少女が隣にいるというチャンスをものにする為、なれないながらも決死のトークで話しかけた。

「倉田さん、飛行機に乗ったことある?僕乗ったことないんだよね」

 なけなしの勇気を持って話しかける。

 ここで同意を得られれば話を広げられる。

 以前、店員さんに見られるのを恥ずかしながら買った、恋愛速攻絶対成功術という本にも書いてあったから間違いない。

「ん?私もないよー、宮田君もなんだね。緊張しちゃわない?」

 かわいらしい声で倉田さんは返答してくれた。

「うん、するするー」

 そんな相づちを打ちながら僕は考えていた。

 いや、”宮田”ってなんだよと、僕は”杉山ケイ”だよ。

 名前すら覚えられてなかったのだ。

 しかも、全く詰まらずにスムーズに宮田くんと言った。

 宮田くんは、うちのクラスにいる、幽霊族の半透明なちょっと内気な奴である。

 内気ではあるが、率先して花瓶の水替えなどを積極的にやったりして、クラスの縁の下の力持ちである。

 ただ、あんまりにも存在感がない為、残念なことに宮田くんの献身的な行動に気づいている人は少ない。

 僕が気づいたのだって僕に少ない霊能力があるのと、教室でいたときに、ひとりでに花瓶が浮いたことに驚いて、じっくりと凝視すると宮田くんが存在することが分かったという理由だ。

 そんな宮田くんと間違えられると言うことは、倉田さんにとって僕の体は半透明レベルな影の薄さを獲得していると言うことなんだろう。

 いや、どんだけだよ。

 そんな風に思ったがスクールカーストの下の方は上から見ると似たような野菜がざっと並んでいるだけなんだろう。

 最高のスタートと思ったが、完全にスタートダッシュで転倒していた。

 しかし、ピンチはチャンス!と言う名言が何かのゲームであったはずだ。

 すでに心が折れかけているが、半透明な存在感を覆し、この隣に座る野菜には、ダイヤが埋まってると思わせるアピールをする決心をした。

 がしかし、その決心すら無駄なものになった。

 突如向かい隣にいる純人間のイケメン太田くんが会話に入ってきたからだ。

「いやー、ちょっと耳に入ってきたけど、二人とも飛行機初めてなんだね。俺もでさ、ちょっと怖いんだよね」

「へえ、太田くんもなんだ。」

 僕の時よりも声のトーンを明らかに1トーン高くして、倉田さんは太田君にまぶしい笑顔で返事を返す。

 名前を間違えず、明るい声、笑顔、そのどれも僕には向けられなかったものだ。

 何がイケメン太田くんと僕が違うというんだ?

 少し自分で考えて答えは出た。

 全てだった。顔・性格・身長・存在感、悲しくなるほどそのあたりのステータスが、圧倒的格差で敗北していた。

 ……禅の心だ。敗北を知った僕は、何ものにもこだわらない禅の心を持つことにした。

 僕は、2人が話していることに対して相づちを打つことに注力していた。

 2人は楽しく話す。僕は相づちのボキャブラリーが増えていく。

 そうしている内に僕は、真理にたどり着いた。

 太田くんと僕は同じ種族の人間だ。ならば99%以上、身体構成は同じはずだ。

 もう、僕は太田くんなのではないだろうかという結論にたどり着いた。

 そんな真理について考えていると、相づちを打つことを忘れて、ぼうっとしていた様で、太田くんに話しかけられた。 

「ん?杉山なんか調子悪そうじゃん。酔ったのか?あめ玉なめるか?」

 イケメン過ぎた……僕と同じ存在認定してごめんなさい。あと、名前を覚えててくれて、ありがとう。

 正直、僕のすさんだ心に、太田くんは清涼感ある、癒やしを与えてくれた。僕はいつもより声のトーンを1トーン上げて笑顔で言った。

「ありがとう頂くよ。確かに調子が悪いかも、ちょっと寝るよ。」

 若干太田くんに惚れそうになっていた。

 そんな風に僕が、メス化しつつある中、倉田さんが言った。

「そうしなよー、酔ったときには寝るのが一番だもん」

 僕を心配する言い分だが、倉田さんの言葉の裏には喜びがにじみ出ていた。

 そうだよね、僕が寝たら太田くんともっと集中していっぱい話せるもんね。

 なんにせよ僕は禅の心で、自分の存在感を空の座席であるかのように消し、ふて寝を思う存分に決め込んだ。

      4

 思う存分に寝ている内に、京都に到着していた。

 正直普通に寝るよりも多く寝られていた。

 なぜならば、横で可愛い女子が話しているのだ。

 相当なASMRだった。

スマホで録音していなかったのが悔やまれる。

 そんな風に気持ち悪い後悔を僕はしていた。

 さて、ここからは班行動だ。

 僕の班は、いつも集まって遊んでいる友人で構成されたあんまりイケてないグループだ。だが、この班は、安心感がある、僕のホームはここだ。周りの生徒に勝っていることはスマブラの上手さぐらいだが。

 以前、リア充がスマブラ大会をクラスで開いたときには、上位は僕らで占められた。そして最終的には僕らだけで延々とスマブラをしていた。焼き尽くした戦場には何も残らないのだ。

 友人の一人が言う

「とりあえず、スマブラやるか」

 こいつは一体何をしに京都に来たんだ?

 顔を見ると見事に真顔でありスマブラをやると言うことが冗談ではないと言うことがありありと分かった。

 正直気持ちは分かる、いつものメンバーが集まり、やることと言ったらスマブラなのだから。

「さすがに、ちゃんと寺巡りとかしておこうよ京都に来たんだから。」

 と僕は言った。

 しかし、ふと見ると周りの友人達はスイッチを出しかけていた。

 真面目に旅行する気だったのは僕だけだったようだ。

「まあ、ケイが寺巡りたいなら仕方ないな。」

 と友人の一人が言う。

 なんだろう……この若干複雑な気持ち。スマブラ愛強すぎだろ。

     5

 女っ気はなく少々ジメジメしているが、なんだかんだと観光地を回っていると、中々楽しかった。

 寺社仏閣巡りをメインに回っていたのだが、本尊にいる様々な神様を遠目で拝見することが出来た。かっこいい神様や美しい神様、かわいい神様、変な形をした神様などいろんな神様がいてとても楽しかった。

色々回って疲れてきたので、途中で休憩中にスマブラを行い、負けたものがジュースを奢るという賭けをすることになった。

 みんな颯爽と鞄からスマブラを取り出す。数秒で取り出すあたりスマブラ意識が高い。

 一人が言う。

「さて、かかってこいよ。」

 もう一人が言う。

「ハンデやってあげても良いんだぜ。」

 他にも

「やれやれ、ようやく(旅行で)本気を出せるぜ。」

「結果はすでに決まっている。俺の勝ちでな。」

「んーウォーミングアップ(寺社仏閣巡り)は終わりか。」

「勝つ、それだけさ。」

 本人達は格好をつけているつもりだが、みんな最高にダサかった。

 けれど僕もこの流れに乗らないわけにもいけなかった。

「僕がどうせ圧勝するのにやる意味はあるのかい?」

 結果としては僕の圧倒的な負けだった。

 せっかく寺社仏閣巡りしたのに御利益はないのか?と考えたがみんな同じところを回っているので御利益イーブンな状況だなと考え直した。

 というかあいつら本気で寺社を巡っている間、脳内シュミレーションで、準備してた可能性がある。

 ただスマブラに対する意識の違いが出たのかもしれない。

 そんな無為なことを考えながら、自販機でジュースを買って帰る途中に神社があった。 奥まったところで掃除している妖孤の巫女さんがいた。

 僕はふと思いついた。御利益イーブンな状況をこの神社に参拝することで、友人たちに差をつけようと。

 まあ、遠目に見て妖孤の巫女さん可愛いことが行きたくなった理由であるというのは気恥ずかしいから秘密だ。誰に対してだかは知らないが。

 とりあえず参拝しようと考えたのだが、なぜだか突然意識がぼうっとして、鳥居に導かれるようにふらふらと歩き出していた。

 そして、鳥居をくぐった瞬間、いつの間にか不思議な場所にたどり着いていた。

 もう夏だというのに桜が咲き乱れ、そして周囲を見渡しても人っ子一人いない、そんな不思議な場所となっていた。

「杉山ケイ」

 突然名前を呼ばれた。

 呼ばれた方を向くと、そこには冴えない中間管理職っぽいおじさんがいた。

 ただし服装は、神秘的な着物で、そこが非常にアンバランスな状態だった。

「やべえ、おっさんだ……」

 つい声に出して呟いた瞬間、腰に激痛が走った。

「無礼者!我は神であるぞ!」

 神様だったのか!腰の激痛もあり土下座の姿勢で謝罪する。

「申し訳ありません!申し訳ありません!申し訳ありません!」

 とにかく謝りまくった。それほど、腰が痛かったのだ。

 するとおじさんの神様は満足したのかこう言った。

「よろしい……貴様にかけたリウマチの呪いを解いてやろう」

 スッと腰の痛みが引いた。

 と言うかリウマチの呪いってなんだよ。胡散臭すぎるだろこのおじさんの神様。しかし呪いが怖いので、口には一切出さなかった。

「そなたには、権能を受ける才能がある。」

 突然おじさんの神様は言い出した。

権能つまり何らかの能力を行使する力だ。神様に与えられるものになると本当にすごいものだ。

 たしか日本では、百年に1人程度与えられるようなものだ。

 おじさんの神様続けて言った。

「そなたに授けるのは、縁結びの権能じゃ」

 そう神様は言った。

「ど、どうして僕にそんな権能を授けてくれるんですか?」

 正直、僕は冴えない奴だ。それなのに権能を授けてくれるというのがわからなかった。

「権能を与えるのは、資質のある者だけ、その資質とは持って生まれた運じゃ。権能を授ける神との相性で決まる。お前は三百年に1人の逸材じゃ」

 この冴えないおじさんと相性が、超良いと言うことか……なんかやだな。

 でもとりあえず、状況把握のために質問をしよう。

「縁結びの権能を使ってどうすれば良いんですか?」

「簡単じゃ、お主はただ縁を結んでゆけば良い。」

 すごく大雑把な回答だったので僕は言った。

「え、それだけで良いんですか?」

 余りにも単純な指示で驚いた。

 おじさんの神様は少し渋い顔をして言った。

「昨今の少子化が、神の問題となっているのだ。信者が減れば信仰が薄れるからな」

 このおじさんの神様、報道番組みたいなことを言い出したな。

 確かに、この神社は外から見たとき人っ子一人居なかったもんな。

 なんか神様の世知辛さを少し感じた。けれど僕の中の疑問は、消えた。

「なるほど、わかりました。ありがたく頂戴します」

 胡散臭い神様だけれど、縁結びの権能があるなら、倉田さんと付き合うことだって出来るかもしれない。

「もう説明することも無いようじゃし、帰してやるかの」

 ……と言ってくれたが、なんだか無言の間が続いている。帰してくれないのだろうか?手際の悪いダメな神様なのかな?

 そう言えば、肝心な権能の使い方も聞いていない。

  ……おもむろにおじさんの神様は言った。

「ちなみに、お主の心の声は全て聞こえていたので、もう一度さっきよりもちょっと強めのリウマチの呪いじゃ」

「うわあああああ!痛いいいいい!!申し訳ありません!申し訳ありません!縁結び頑張りますので許してくださいいいいいい!!!」 

 二度目のリウマチの呪いは強烈で僕は気絶した。

…………というか結局権能の使い方は教えてくれなかった。

     6

目が覚めるといつの間にか僕は、鳥居の外に出ていた。

 時間は経っていないようでジュースは冷えたままのようだった。

 僕は遠くに居る妖孤の巫女さんに会釈してグループに帰って行った。

 帰ってくるとまた友人達はスマブラをしていた。

 因みに僕がいない間に負けた奴がお菓子を買ってくることとなっていた。

 そして、お菓子がやってくるとさながら宴会場のようになっていた。

 その後は集合時間まで、スマブラをやり続けていた。 

 けれどその間もずっと、僕はまだ夢見心地で、バスに乗ってホテルに到着するまで、ボンヤリとしていた。

 それにしてもまさか僕に縁結びの権能が手に入るなんて全く思ってもみなかった。しかし、権能が手に入ったとはいえ、どう使うのかが全くわからない。あの神社での思い出は、8割腰痛だ。

 権能の使い方が分からなかったので、仕方なく、ホテルのロビーで、道行く人をとりあえずぼうっとみていた。

 正直なにも、起こらない。

 縁よ結ばれろーなどと思っても何も起こらないのだ。

 少し恥ずかしかったが、五芒星を切ったりしてみたが、何も起こらなかった。

 ただ通りすがりの女子軍団に見られて

「うわー、何やってるのあれ?」

「きもっ!」

 などと言われて悲しい思いをしただけだった。

 うーん、と正直悩んでいた。

 神様が授けた権能ってことだから神様の力の一端なんだよな。

 多分、日本の神様だから霊能力が関係していると思う。

 けれど、正直な話、霊能力なんて、昔身体測定ついでに少しあるよと言われただけで、特に使い方も練習していないのでどうしようもないのだ。

 しかし、ふと思いついた。

幽霊族の宮田くんを見るために、少なからず霊能力を使っているはずだった。

そういうわけで、宮田くんを見るときの感覚で、目に意識を集中させてみた。

 するとボンヤリと赤い糸のようなモノが見えてきた。

 人の心臓のあたりから、出ているようで、ふわりふわりと漂っていた。

 そして道行く人を見ていると赤い糸には法則性があるようだ。

 恋人同士は、繋がっていて、そうじゃない人達には結ばれていない赤い糸がふんわりと浮いていた。

 浮いた糸の方角は、ずっと一定の方角を指している人も居れば、クルクルと回っている人も居た。

 恐らくではあるが、好きな人が居れば、その好きな相手の居る方角を指して、誰か好気になる人を探している人はクルクル回っているようだ。

 多分縁結びの力は、この浮いた赤い糸同士を結びつける力なのだと、なんとなくだが想像が付いた。

 さて次は実践だ。

 誰と誰を結ぼうかと考えていたら、友達以上恋人未満でグズついている、佐藤さんと伊藤くんが現れた。

 早速、結んでみようと思ったが、どうすれば結べるのだろうか、とりあえず2人の赤い糸に集中してみると赤い糸が少しずつ動き出した。

おお、なんだかラジコンみたいで楽しい。

 更に強く集中することで何とか二人の糸を近づけることが出来た。

 だが、近づけるだけでは、何も起こらなかった。

 えー、もしかして結ばないとダメなのかな、動かすの疲れるんだけどな、と思ったが、結ぶというイメージをするとするりと赤い糸は結ばれてしまった。

 そこからは怒濤の展開だった。

 二人が歩いている最中に、転んで偶然のキス。

 二人は少し見つめ合って、

「「好きです。」」

と同時に言った。

 恐ろしい早さで恋人が出来ててしまった。さすが神様の権能恐ろしいまでの力だ。

 次に、横の男に片思いしている女の子と、赤い糸がグルングルンと回っている男が現れた。グルングルン回っているということは、もう誰でも良いから付き合いたい男子なのだろう。

 今度はこの二人に使ってみよう。

 しかし、この場合どうなるのだろう。

 僕は集中して二人の赤い糸を動かした。

 クルクル回る方がすごく動かし辛かった。

 何とか結べたのだが結構疲れた。

 正直立っていられなくてソファーに座り込んだ。

 どうやら糸を強制して動かすのは結構疲れるらしい。

 そして結んだ2人はと言うと、男が女の子の方を向いて、

「お前って結構可愛いよな。彼氏とか居るのか?」

 などと言うことをその女の子に言った。

「えええ!?えっと何いきなり聞いてるの?そのまあ居ないけど……」

「じゃあさ、俺と付き合えよ」

 などと少女漫画みたいにオラオラと攻める。

 それに対し片思いをしていた女の子は

「えっと……よろしくお願いします。」

と言った。

 これは……すごい権能だ。

 これの権能えあれば僕でも猫又美少女の倉田さんと付き合うことが出来るかもしれない。

 俄然テンションが上がってきた。

 そう思い早速、倉田さんを探しに出かけた。

 だが中々見つからなかった。

 正直、人に聞き込みするわけにも行かなかったためだ。

 倉田さんを探そうとしている時点で、僕が告白をしようとしているなどと言う噂が立つに違いなかったからだ。

 無謀すぎて笑われるに違いない。

 なので地道に1階から探していった。

 そうしていると、倉田さんと同じグループの女子が通りすがってきた。

 その会話に聞き耳立ててみるとこういったことを言っていた。

「倉田さんどこ行ったの?」

「んー、何か倉田っち、涼みたいからってバルコニーの方に行くって言ってたよ。」

「へー、じゃあ先に部屋に戻って、お菓子でも食べてよっか。」

 なんて会話が聞こえてきた。

 僕は足早にバルコニーに向かっていった。

 いた!倉田さんだ。

 長髪が風でなびいてとても綺麗だった。

 と、そんな風に少し見とれてしまったが、早速目に意識を集中し赤い糸を見るようにした。

 権能をつかい倉田さんの赤い糸を僕に動かし始めた。

 僕の方へ持ってきて、ついに僕の心臓あたりまでたどり着いた。

「あ、あれ??」

けれど、倉田さんの赤い糸は僕の体を突き抜けてしまう。

 と言うか今気づいたが、僕の体には赤い糸がない。

 そしてとうとう僕と倉田さんを結びつけるはずの恋の糸は僕をすり抜けて後ろにいたイケメン太田くんに繋がってしまった。

 そして太田くんは、颯爽と倉田さんの元に駆け寄りこう言った。

「ずっと好きだったんだ」

 そして倉田さんはこう返す。

「私も太田くんのことが、ずっと好きだったの」

そんな恋愛劇を横目に何度赤い糸の操作を繰り返しても、僕に結びつくことはなかった。

というか更に倉田さんと太田くんの糸が固結びみたいになっていく。。

 固結びになるごとに、情熱的な言葉を交わし合いがあり、最終的には二人は幸せなキスをして終了してしまった。それと共に僕は絶望という感情を味わった。

      7

 僕は深夜にもかかわらず、少ない小遣いを使いタクシーに乗り、おじさんの神様が居る神社に駆け込んだ。

 文句を言ってやるためだ。

「神様!縁結びの神様!!」

 僕は境内に着くなりこう叫んだ。すると昼にあったように、周りが桜に満ち、明るくなり、おじさんの神様が現れた。

「なんじゃこんな夜遅くに、来る時間ぐらい考えろ。」

 と若干不機嫌そうに言った。

 申し訳ないが確かめなければならないことがあった。

「何で!なんで僕に赤い糸は結ばれないんですか!」

そう僕が必死になって訪ねるとおじさんの神様はこう言った。

「当然であろう、縁結びの権能は他者を祝福するものなのだから。それにの、わしが自分に縁をつなげて神モテするような神に見えるか?」

 最後に言われた自虐の言葉の説得力はすごくあった。

 自分で言ってて悲しくないのか?

 しかし、どちらにしろ絶望だった!

 けれど神様は、僕の絶望を知ってか知らずか感心したように言う。

「初日にもう3組も結んでしまうとは、素晴らしいな。権能を授けた甲斐があるというものだ。」

 どうやら褒められた様だが、倉田さんと太田くんのキスシーンを見てしまった絶望は緩和されない。

「ま、その調子で励み日本を活気良く幸せにするのじゃぞ」

 と言われ、元の世界に戻されてしまった。

 何というか、相手が神様だから仕方ないが、扱いが非常に雑だ。

 そのまま、数分呆然としてしまった。

 縁結びの権能などもらっても、僕はモテる様になることなど無いことが分かった。

 ある意味、今まで通りではあるのだが、希望から絶望への落差によるショックが大きかった。

 そのまま座っているわけにも行かないので、すごすごと携帯でタクシーを呼んだ。

 そしてまた、タクシーに乗りホテルへと戻っていた。

 ホテルの部屋に戻ると結構騒がしかった。

 友人達はまた集まってスマブラ大会をしていたからだ。

 そのスマブラ大会は、僕のパックンフラワー縛りで圧勝していた。

「そんなにケイって上手かったか?」

「と言うかパックンフラワー縛りで勝つってどういうことだよ」

 皆が口々に言うが、これは恐らく僕の絶望という名の負の力だ。

 お菓子を賭けていたのだが、全て僕のところに集まっていた。まあ、ゲームが終わった後はみんなで仲良く分けて食べたが。

 僕はみんなが寝静まった後に、今日起こったことを考えていた。

 今までは、夢心地というか、テンションの赴くままに行動していたが、よくよく考えると神様に会って、権能を授けられるってどんな中二病っていうぐらいの出来事だった。

 ただ、まだ残る腰の痛さが今までの出来ことが真実であることを示していた。

 「モテたい」

 僕は、一人静かに呟いた。

 そう、モテたいのだ。けれど権能は自分には使えない、他人を結んで何が楽しいのだろう。

 何とか権能を使ってモテることは出来ないものかと、ただ僕はそう思いながら眠りについた。

     8

 そして朝を迎えたとき僕は妙にすっきりしていた。

 昨日あった倉田さんと太田くんの縁結びなど、そもそものところ自然な流れだったのだ。

というか、バルコニーにあの二人がいた時点で、あそこで密会をしていたに違いないだろう。

そうなってくると、僕が入る余地などおそらくは無かった。

 簡単に縁を結べたと言うことは、元々赤い糸が向かい合っていたに違いない。

 そんな二人の間に僕が入ることなど、そもそものところそんな隙間はなかったのだと納得したからだ。

 一時でも倉田さんと付き合えるという夢を見られただけ幸せだ。

     9

今日はMSJもうすごくジャパンというテーマパークに行く予定だ。

 権能のことはとりあえず忘れて、友人達と思いっきり楽しんだ。

 ここの魅力は、日本の文化を取り入れたアトラクションや体験を行うことが出来るというものだ。

 誰しも最後には、もうすっごくジャパンと叫んでしまう魅力あるところだ。

 見所ある遊具が多く、例えば、おもてなし太鼓と言う。

 だんだん早くなるお・も・て・な・しと言うリズム似合わせて太鼓をたたくゲームだ。 正直明日筋肉痛になるレベルで、やってしまったが、100おもてなし達成で、おもてなしボタンを手に入れることが出来た。

 このボタンがあれば、いつでもお・も・て・な・しという音を聞ける超人気アイテムだ。

 他には回転寿司ジェットコースターレストランで、回転する寿司型ジェットコースターに乗りながら、レールに流れる寿司を食べていくというものだ

 おはぎ手作り教室などとても楽しかった。

 なんだか自分で作ったおはぎはとてもおいしかった。

 最後にはエレクトリカル街頭演説選挙カーパレードなどでは、ずっともうすごくジャパン、もうすごくジャパンと言い続けるパレードでとても楽しかった。

 出るときには、もうすっごくジャパンと皆で叫んでいた。

 …………出てしばらくすると何が楽しかったのか分からなくなってきた。

 けれど、楽しい気持ちは残っていて混乱していた。

 日本政府が、洗脳するために作ったテーマパークという陰謀論は本当かも知れない。

 そうして僕の修学旅行は静かにだがしっかりと楽しみ終ろうとした。

 だがしかし帰りの飛行機では、また太田くんと倉田さんの並びとなってしまった。

 横で行きの飛行機での様子と違い。

 2人は、思いっきりイチャイチャしていた。

 いったん諦めた夢だが僕には、辛すぎたので、横を向きずっと寝たふりをしていた。つい、気になって横を見ると、こっそりと倉田さんと太田くんはキスをしていた。

 僕はまた横を向き、シクシクと静かに、涙を流し続けた。

     10

 修学旅行も終わり無事、うちに帰ることが出来た。

「おかえりーケイ」

「おかえりーケイくん」

 母さんと姉さんが迎えてくれた。

ふぅと息をつく、やはり家っていいもんだなと思う。

 そうやって落ち着いて、ソファーに座った。

 するとなにやら姉さんが、じっとこっちを見てきた。

「なんかケイくん変わったあ?」

 ぎくりとした。

 権能の力がバレたのだろうか?

 モテたいために、これから権能の力を利用する方法を考えて、権能を使用しようとしていたのでバレるのは気恥ずかしかった。

 なので、僕は言った。

「遠くへ行くことで、成長したんじゃないかな。」

 と言った。

すると姉さんはこう返した。

「遊びに行って、成長するなら苦労しないよお。」

 えらく最もらしいことを返されてしまった。

MSJもうすごくジャパンで日本の勉強してきたからじゃない?」

 と一応言い換えしておいた。

「あー、あそこなら確かに、洗脳の魔方陣があるから、力的に変化があるのかなあ。」

 なんか怖いことが聞こえてくる。

 陰謀論マジなの?

 とりあえず気にしないようにして、姉の追求から逃れるため言った。

「じゃあ僕疲れているから、部屋に戻るね。」

 そうすると姉も考えるのを止めたのか、

「うーん、お疲れー」

 と返してきた。

 しかし、そこで母さんが

「お風呂にはちゃんと入るのよ!」

 と言ってきた。

 反抗期にはちょっとばかりイラッとしたが、

「分かってる!ちゃんと寝るまえに入るよ」

 と返した。

 そうして僕は自分の部屋に戻ってから、権能をうまく使う方法はないものかと考え続けていた。

 だが中々、思いつかないのでお風呂に入ることにした。

「あー、疲れた体に染み渡る。」 

 そんなことを言いながら体を癒やしていた。

とそこで、天井からの水滴が、お風呂にポチョンと落ちた。

 そこで出来た波紋を見てと妙案を思いついた。

 僕が学校で、恋愛という波紋を起こしまくれば良いのだ。

 恋愛とは周りがしてないと気にならないモノである。

 小学校低学年では、子供のお遊びで好きとか嫌いとかあったが、付き合うという概念が非常に薄かった。

 これはきっと周りが誰それと付き合うということがほとんどなく意識することがないからだ。

 中学でもそうだ、付き合うだの振られるだのという話は、あるがまだまだお試し期間の様な感覚でスクールカースト上位のみが真剣に取り組んでいることだ。

 ここでどうだろう、僕が権能を使いスクールカーストの上位から下位までほとんどに恋愛という水滴を落として、皆の男女の仲を結んでしまう。

 するとどうだろう恋愛という波紋があちらこちらで発生して、周りがみんな付き合いだしてしまう、私も付き合わないと!そんな女子が出てくるはずだ。

 ここで僕『杉山ケイ』の登場だ。

 僕は権能で周りのみんなを結ぶだけだから、もちろんフリーだ。

 そうすると付き合うことに焦った女子に告白すれば成功確率は非常に高い、いや相手から告白され付き合える可能性だってある。

 そこからの僕の行動は早かった。

 次の日から、あるところに両思いの煮え切らないカップルがいればはせ参じ、南に片思いの女の子がいれば颯爽と縁結びを行っていった。

そうしてとうとう結べそうな縁は結びきった。

     11

 さあ、作戦の大詰めとなった。

 学校では、僕の権能の力によって、恋人が大量発生していた。

 付き合っていない女子はもう十数人という段階となっていた。

 こんな状態で、付き合えないのは、よっぽど魅力の無い奴だ。

 残念ながら告白されることはなかったので、僕は自分から告白することにした。

 女子への告白CASE1

「杉山くんと私って合わないと思うから、ごめんなさい」

女子への告白CASE2

「うーん、他に好きな人が居るからごめんね」

女子への告白CASE3

「ごめんね、好きになれそうにないの」

女子への告白CASE4

「ごめん、最近彼氏で来たから」

女子への告白CASE5

「好きじゃない」

女子への告白CASE6

「いろんな女子に告りまくってるらしいじゃない、生理的に無理」

女子への告白CASE6

「いたの?」

 ETC.

 こうして僕は全ての付き合っていない女子に、振られた。

 更にこの女子達は、他のあぶれた男子と付き合うこととなった。

 つまり僕一人付き合っていない状態となった。

 そして、僕の目の前は真っ暗になった。

     12

 僕は1週間、学校を休んでしまった。

 だって僕は、こんな状況でも誰とも付き合うことの出来ない、ゴミかす野郎ということがわかってしまったからだ。

 と言うかやり方も、思い返すとゲスの一言だった。

 全くもって女の子と付き合う資格もない。

 扉の外から、姉さんが心配する声が聞こえてくる。

「ケイくん大丈夫?もう一週間だよ?」

 それに対して答える。

「うん、でももう大丈夫だよ、明日には学校へ行くよ。」

そうして学校に復帰してから、僕はもう諦めの境地に入った。

 そうなるともう穏やかなもので、周りの無駄にイチャイチャしている環境も日常になった。

 スマブラ仲間も彼女が出来て、そちらにかかりきりだ。

 僕はネット大戦を延々とし続けパックンフラワーで、連戦連勝をしていった。

 だんだんパックンフラワーが愛おしくなってきた。

 あのギザギザしたお口がとってもキュートに感じてきた。

 …………ちょっとエッチにも思えてきた。

 はっ!イってはいけない方向に向かっている気がする。

 禅だ、禅の心が僕を癒やすんだ。

 人間一人でだって十分に生きていける。さようならパックンフラワー、こんにちは新しいまともな自分。

 また余談だが、みんながみんな赤い糸で繋がって居るため、後ろの席では全く黒板が見えなくなった。

 まえの席に変えてもらったことで、授業をしっかりと聞くようになり、僕の成績は割と上がった。

 多分現実逃避もあって勉強に集中できたのだと思う。

     13

僕が禅の境地に達してから2ヶ月程度たったある日、先生方がバタつきだしていた。

 噂を小耳に挟むと、学校の生徒に壮絶な量の妊娠発覚したのだ。

 最初にわかったのは倉田さんと太田くんのカップルだった。

 そこから次々と僕が権能を使いくっつけたカップルが次々と妊娠発覚していったらしい。

 どう考えても、権能が影響していることは明確だった。

 正直ぞっとした。

 だからまず確認の為、太田くんに聞き取りをしてみた。

 すると太田くんはこう言った。

「なんかまあ、してるときに、別にいいよねってなっちゃったんだ。俺、保体のテスト100点なのに、なんでかよくわからないんだよね。ただあの時、頭がぼうっとして判断力が落ちたんだ。なんか倉田さんも同じことを言ってたよ。」

 ちなみに僕も保体のテストは100点だ。

 しかし、なんだか生々しい話をされて僕の脳にダメージが加わるつらい聞き取りだった。

 けれど、確信に変わった、権能は縁を結び子作りをさせるモノだ。

 これが判明し、僕は完全に青ざめた。

 中学で子供が出来てしまうなんてとてもとても僕の責任で、背負いきれないことだからだ。

 きっとみんな堕胎をして、家族仲も悪くなるなんてことも起こりうるからだ。

 僕はずっとおなかをストレスで壊すこととなった。

 けれど不思議なことに、このベビーブームにでは、誰も堕胎という選択肢を選ぶ家庭はなかった。

 それどころか、基金を募り高校に通いながらでも子育てできるように手厚いサポートが、整えられた。

 また、受験に出産が重なるようならば、全ての高校で日程の変更も受け付けられた。

 他にも、ベビーシッターが必要な場合、基金より雇うことが出来るなどかゆいところにまで手が届く仕様だった

 まるで神業のように子供の育成環境が整えられていった。

 結果としてこのベビーブームで不幸になった人は居ないようだった。

 これも権能の力なのかも知れない。

     14

そうのように環境が整えられる中、僕らは中学三年となった。

 一番最初に生まれたのは、倉田さんと太田くんの赤ちゃんだ。

 写真を見せてもらうと二人の遺伝子を受け付いたのかとてもかわいらしい赤ちゃんだった。

 二人は高校へ行きながら赤ちゃんを育てていくと言うことらしい、周りの家族も祝福している。とても幸せそうだ。

 二人以外の結ばれた人たちも皆同様に幸せそうだった。

 赤ちゃんが出来ても予定通り周りがサポートしてくれて不幸にはなっていないらしい。更に言うと元々家族中が悪かった家庭は円満に、金銭的に厳しく進学も危ぶまれていた家庭はしっかりとした援助で進学可能になった。

 やはりこれは縁結びの権能による効果なのだろう。

 みんなが幸せになるアフターサポートが行き届いていた。

 けれど、僕はとても怖くなってしまった。

 まさか、幸せになるとはいえ無計画子作りに至るなんて……

 彼らは幸せになり笑顔が確かにあふれている。

 だけど、それは良くある一般的な人生とはいえない。

 彼らの人生を一気に変えてしまったのだ。

 所詮普通の中学生の僕にクラスメイトのベビーブームなんて事実受け入れられるわけなかった。

 だから、これを契機に僕は一切、権能を使うことはやめた。

 贖罪も出来ないし、取り返しも付かないことだからだ。

 せめて権能を一切封印することしかできなかった。

 まるでモノを壊した子供が親に見つかるのを恐れて、壊したモノを隠すように、僕は権能を使わなくなった。

 これが業か幸福のバラマキなのか分からない僕の中学時代だ。

罰にもならないかもしれないが、これほどみんな付き合ったり、子供を作っているのに一人誰とも付き合わず残った僕は、『童貞王』と呼ばれるようになった。

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