出戻りじゃないです
黄魚再び。
河原に座敷童三人並んで座って、干芋をカジカジ齧る。
「お茶も持ってきたら良かったなぁ……」
「そーねー」
「言われると、番茶飲みてー!」
干芋だけでも十分美味しく食べられるが、お茶と共に食べるとより美味しいことも知っている。
「番茶、いいね!」
「温かーい麦茶もー、合いそう!」
「あー、いいなぁ、それ。取りに行くか?」
クロはそう聞くが、アオと紅は一瞬顔を見合わせる。
「それは面倒だな……」
「めんどー」
「おい……」
お茶を持ってきたらよかったなぁ…とは思ったが、そのためだけに屋敷に戻る気はないアオと紅だった。
「しゃあない……俺が行くか……。言われたらめっちゃお茶飲みたくなったし。てか、持ってくるのは麦茶だぞ、番茶は持ってこないぞ」
立ち上がりながら、自分が飲みたいのは熱い麦茶だというクロに、アオが口を尖らす。
「えー?どうせ行くなら、一緒に持ってきてくれよ、オレは番茶がいい」
「しらん。てか、そんなに沢山ポットないんじゃないか?」
「ポット?」
「熱いお茶飲みたいなら、ポットに入れなきゃだろ?」
クロの指摘にアオがあーっ!という顔をする。
「言われてみればそっか…」
「ここで温かいお茶飲むならー、ポットに入れたお茶とー、湯呑三ついるねー」
「暖かい…つーか、あっつい!麦茶飲みたくなったんだよなー」
「あっつい麦茶か……。今日は番茶じゃなくて、それもいいかな?ポットと湯呑三人分…。結構持ち物多くなるな……。しゃあない、オレも行くよ」
よっこらせと、アオが立ち上がる。
「これ持ってて」
アオは手にしていた干芋の紙袋を紅に渡す。
「早く戻ってこないとー、二人が居ない間にー、全ー部食べちゃうかもー?」
紅が二人をからかうように言う。
「いや、無理だろ」
あっさりとクロに言い切られ、紅は頬を膨らます。
「やってみなきゃー、わからないもーん」
「いやいや、やめとけ」
「食べ物は、美味しく食べてこそだぞ!」
二人に口々に諭され、ちぇっ!とした顔をした紅だが、急にハッとして二人から視線をそらし川面を凝視する。
「どした?」
「なんかー、今ー、川から……」
紅が言いかけた途端、川面がザバリと割れ大きな魚が川面を跳ねる。
座敷童三人は息を飲んだ。
ここは座敷童療養所――神が作った領域だから、危険はない……と知ってはいても、やはり不測の事態には身構えてしまう。
が――。
魚がはねた次の瞬間には、河原に一人の美幼女が立っていた――。
つやつやしたショートカットの黒髪、切れ長の目、色白の美しい肌。
身に纏っているのは花模様の入った紺地の着物。
機能性重視なのか、着物の丈は短めでひざ下十センチほど。
帯は絞りの入った黄色の兵児帯――。
見覚えあるその姿。
「え?」
「は?」
ポカンとするアオと紅。
「黄魚……着物の柄、変えた?」
驚き過ぎたクロは、なぜか着物の柄について問いを発していた。
そう、現れたのはしばらく前に人界に行ったはずの黄魚――。
因みに、なぜそんな少々間抜けな問いを発してしまったのか、クロ自身にもわからない。
そんな問いだったが、黄魚は当たり前のように、クロに返事を返す。
「向日葵から、睡蓮に変えた。一応花色は黄色にした…」
「そ、か……」
「な、なに……お、黄魚ーっ?ま、まさかー、もう出戻って来たのー?!」
「てか、クロ!なに普通に着物の柄とか気にしてんだよっ!ほかに言うことあるだろーっ!」
アオと紅はおたおたしながら口々に言う。
そんな残留座敷童たちに、黄魚は淡々と告げた。
「この柄、大事よ?美矢が好きだから、睡蓮にしたの。あと出戻り、違う。ちょっとおせっかいしに帰ってきた。すぐ、帰るよ?」
そう言いながらすたすたと紅に近づき、紅が持っていた紙袋から干芋を取り出して、美味しそうに齧る。
ちなみに美矢とは黄魚がついた家の末娘だ。
「で、なぜ干芋を食うんだ?」
「意味…わかんないんですけどー?」
「あ…ちょっと、前よりしゃべり上手くなったか?」
色々わけがわからないという顔をした残留組たち……。
「白波の作るお菓子は、美味しいねぇ……」
にこにこそう言う黄魚だった。
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