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面倒なこと

 黄魚が座敷童として人界へ行った――。


「まーさーかー?」


 ポカンと紅が口を開ける。


「本当だ」

「あうっ……」


 白波の肩から飛んできたスズメが、紅の前でぱさぱさと羽ばたいてその口を閉じさせる。


「行く家はもう無いって言ってなかったか?」

「ええ……。以前黄魚がついていた家はすでにないですね。血縁者はバラバラで、『家』として残っていません」

「じゃあ、その血縁のどこかに?」

「いいえ。今まで全く縁のなかった家ですよ」


 白波の言葉に、その場にいた座敷童たちは驚きの顔になる。


「それは……また、ずいぶん思いっ切ったことを……」


 銀河がそう言う。


「あれもワシと同じで、最初の家を失ってからずっとここに居たはず、井戸に見せられるモノだけで次の家を決めるなんて……」


 そんな怖いことが出来るのか?と、銀河は驚きどころか、愕然となっているようだ。


 以前護っていた家に縁の有る家ならば、そのうちまた座敷童が見える―――まではいかなくとも、気がつく者が現れるかもしれない。

 やはりその手の能力が現れやすい血筋というのは有るもので、座敷童を迎えたことのある家の縁故の者ならば、たとえ今は居なくなっていたとしても、そうで無い家より可能性は高い。


 もっとも、たとえ気がつく者が現れなくても、座敷童が居れば家の運気は上がるし、守護家の家族同士が良い関係を持っていれば、その気は座敷童の糧にはなる。

 が、やはり気がついてもらえた方が気分が良いし、人と座敷童の関係もより強くなりやすいのだ。

 

 アオのような事例も有るにはあるが、基本的にはその家の数代――何百年という時間をつき合っていく対象。

 こちらの存在にいつかは気付いて欲しい……というのが、座敷童側の心情だ。


「なのに……今まで何の関りもなかった家に行ったのか?なんでまた急に?」


 あまりにも性急なことにしか思えず、クロは首を傾げる。


 基本、気ままに行動する黄魚だが、座敷童としてはとても真面目なタイプだとクロは感じていた。

 先の守護家がどうしてダメになったのか、詳しくは聞かなかったが、真面目過ぎてダメになったんじゃないか?と思っている。

 そうで無ければ元河童のくせに、スズメに救助されるまで、川で泳ぎ続けるようなことはしないだろう。


「泳ぐことが楽しいって知って欲しいそうですよ?」

「は?泳ぐ?」

「誰に?」

「どーゆーことー?」

「井戸でそんな相手を見つけられたというのか?」


 白波の言葉に、座敷童たちは盛大に首を傾げる。


「とりあえず、おやつをどうぞ」


 怪訝そうにしている座敷童たちを無視して、白波は菓子を乗せた皿とお茶を手早く並べる。


「おおっ、栗の渋皮煮か!」


 アオが嬉しそうに声を上げる。


「見た目地味だけどー、美味しいよねー♪」

「地味は余計だろう……。まぁ、ワシもそう思うが」

「美味ければ見た目が地味でも良いんじゃないか?」

「そなたら……これは、とても手間がかかるんだぞ!」


 口々に少々失礼なことを言う座敷童をスズメが窘める。


 栗の渋皮煮とは、栗の鬼皮をむいて、渋皮の灰汁をしっかり抜いたあと、渋皮ごと甘く煮た栗のお菓子。

 和風マロングラッセとも呼ばれることがあるそうな。


「見た目地味って言うけど、オレはこれ綺麗だと思うけどなぁ……。艶があって深みのある綺麗な茶色じゃないか」


 一番に頬張っていたアオがそう言う。


「あーっ!この、裏切り者ー!」


 紅が騒ぐが、アオは素知らぬ顔で白波にお代わりを頼んでいる。

 苦笑いを浮かべた白波が、アオの皿に追加を盛りながら言う。


「今日のは、一番面倒な鬼皮剥きと渋皮の筋取りを黄魚が手伝ってくれたんで、いつもより少し楽が出来たんですよ」

「え、あの黄魚が?!」


 マイペースな黄魚を思い出し、つい声を上げてしまったクロはふと思い出す。


「あ、そういえば……昔、うちの家でも作っているのを見たことある気がするな、たしか……」


 水に一晩漬けた栗の鬼皮を、渋皮に傷をつけないように剥ぎ。

 その後、栗と水を入れた鍋を煮たてて、煮立ったら重曹を入れる。

 お湯が冷めたら筋やワタを取り除いて綺麗に洗ってから、後は三度ほど煮たててお湯を捨てるを繰り返す――。

 で、渋皮の灰汁が取れたら弱火で砂糖を入れて煮る。


 丁寧に下ごしらえし、しっかり甘みを含ませた栗の渋皮煮は、しっとりした口当たりで、噛めば素朴な栗の香りと上品な甘さが口に広がる。


 渋皮の灰汁をしっかり抜かなかったり、筋取りを怠ると、食べたときに渋さが口に残ったり、筋が歯や舌に当たって不快なので、下ごしらえが何より大事なお菓子の代表格。

 また乱暴に扱うと、煮ている途中で渋皮が破裂して見た目が台無しになるので、丁寧さも大切だ。


「渋皮の筋取りが、指が黒くなるし、つい力入れ過ぎて渋皮煮傷入れてしまうしで、面倒そうだったなぁ……」 

「ええ、面倒です。手間ひまかかる分、美味しいでしょう?」


 軽ーく額に皺を寄せてそう言う白波に、クロはこくこく頷く――これは、絶対逆らってはいけないヤツだと思った。


渋皮煮の分量

 栗(鬼皮込み)500g 砂糖200g 酒大匙1 重曹大匙1 水2カップ


・一晩水に漬ける。(鬼皮をむきやすくするため)

・鬼皮を剥ぐ。

・鍋に栗と水1リットルを入れて煮立て、煮立ったら重曹を入れて火を止める。

・冷めるまで放置。

・流水でさらしながら、筋やワタを竹串を使いながら掃除する。

・鍋にたっぷりの水と共に入れて煮る⇒これを三回繰り返す。

 (渋皮を味見して、渋みがなくなるまで)

・水2カップと砂糖半量と栗を落し蓋をして中火強で火にかけ、煮立ったら弱火で10分。

・火を止めて冷めるまで置く。

 (できれば一晩おけばより甘みが入る)

・弱火で煮て煮立ってきたら残りの砂糖をいれ、砂糖が溶けるまで煮る。

・火を止めたら香りつけに酒を入れ、冷めたら出来上がり。


栗はあまり大きすぎない方が美味しくできる気がします。

ぐらごんは昔デカイ丹波栗でチャレンジしたら、甘みが中まで入りませんでした(´;ω;`) 

中くらいのが扱いやすい気がします。


お読みいただき大変ありがとうございますm(__)m

(月)(金)を目安に更新しております。

よろしければ、ぜひまた続きを読みに来てください(o_ _)o))

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