表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/379

魔がさした

 将来は世界に通ずる選手になる――そう有望視されていた少年が、大怪我を負い、車いす生活となり泳げなくなった……。

 それが、アオの守護した家の娘が企てた所業の結末。


 そうと知った座敷童達は押し黙る。


 が、その沈黙をぶち壊して紅が叫んだ。

 

「だからー、馬鹿なのよーーーーーーっ!そんなヤツをー、なーんでアオはーっ……」

「だって、家族だから……」


 叫ぶ紅の言葉をアオは遮ってそう言うが……。


「違う。ワシ等は座敷童。人の家族にはなれん」


 銀河に言われて、悔しそうに口元をゆがめる。


「ぎ、銀河達は、オレや紅とは由来が違うから……。だからそうやって割り切れるんだろうけど、オレ等は違うから…っ」

「由来?」

「あたしとアオは元人間ー。でもー、あたしは間引きで死んだ子でー、一応人として生きた時間あったけどー、アオは生まれる前に死んじゃってるからー、人として生きた時間はなかったんだよぉー?」


 アオの言葉にクロが首を傾げると、紅が理由を教えてくれた。


「でも、人だったんだよっ!青羽って名は、母さんがつけてくれたんだ!」

「ふーん?てかねー、オレ等ってなにー?『等』ってしないでよー。アオはー自分の血にこだわってるけどぉー、あたしはそれ無いからー。家族とかさー、家に対してもう期待なんかーしてないんだからぁー」


 ()()()()()()()()()――。

 こだわっていたことが、紅にもあったという事だ……。


 クロはため息をつく。


「つまり、アオは座敷童として、自分の血族をずっと護ってるってことなのか……」


 アオは頷く。


「そっ、だから見捨てられないんだ……。オレと同じ血を継いでくれてるんだもんな」

「でも…悪いこ、と隠すの……。良くな、いよ?」

「わかってる……」


 そう言ってアオは頭を抱える。


「本人、めちゃくちゃ苦しんでる……。だって、元々はものすごく優しい、思いやりのある子なんだ……。魔が差したんだよ……」


 アオによると、姉にとって一連のことは、天国と地獄を何度も行ったり来たりするようなものだったという。


「びくびくしながら、でも弟のためにって…ブレーキワイヤーにペンチ入れて……。でも何も起きなくて、えっ?ってなった後、自分のやった事が怖くなって、大反省して。何事も無くて良かったってホッとしたんだ。

 けど弟がレースに負けて悔しくて、やっぱりしっかり切れば良かった…とか、また悪いこと思って。そのあと特待生になれて、おめでとー!って大喜びして……。

 そうやって喜びに浸ってたら、今度はとんでもねー事故のニュースが飛び込んできて……」


 思惑とは違うところで起きた事故。

 姉は自分が切ったワイヤーのせいだと、八割わかっていながらも、時間差があることで「自分は関係してない事故の可能性も有る!」と、自分で自分を誤魔化しているという――。


「警察は調べに来なかったのか?」

「自転車のブレーキワイヤーにペンチの跡残ってねーの?」


 アオの情報から考えると、かなりの大事故。事故の原因はきっと調べられ追及されたはず。

 動機を考えると、一番疑われるのはライバルだった守護家の弟だ。


「証拠は、オレが消した……」

「消した?」

「ああ、コンビニの防犯カメラに、あの子が自転車のワイヤーを切る様子が映ってた。オレ、それ消したんだ……。そしたらさ、こうなった……」


 くたびれた中年男となっている自分の身を示して、アオはハハハっと、乾いた声で笑う。


「…………良くその程度で済んだもんだな……」


 アオをじっと見つめた後、銀河がつぶやく。


 座敷童は家の守護者。犯罪者の守護者ではない。

 いくら家の者とはいえ、その犯罪の証拠を隠蔽するなんて、座敷童がしていいことじゃない。

 ましてやコンビニは家の外。十全に力を振るえる場所でもない。


「そうだな……。消滅だって、ありえたんじゃないか?」


 クロの言葉に、アオは肩をすくめて見せた。


「だって姉の行動は、家族を思ってのことだったからさ……。やっちゃいけない事ではあったけど、家族を大切に思ってのことなのは確かだったんだ……」

「そういうの、有りなのか……?」

「納得しかねる…というか、したくないが……」

「で、も…アオ…が消えなくて、良かった……」


 マイナス要素のほうが大きくはあったけれど、座敷童にとっては糧となる理由もあった……。

 そのおかげで、ぎりぎり存在は確保されたということのようだ。


「自首はせんのか?」

「ああ……」


 銀河の問いに、苦しそうに返事をする。


「あの子自分に対して、今、必死になって言い訳してる」

「ふんっ!」


 紅が怖い顔をして鼻で笑う。

 そんな紅にアオは苦笑いを返した。


「自首した方がさぁ、本人は楽になれるんだよ……。ホントに本来は真面目なイイ子なんだってば!でもさぁ、出来ないんだ……。家族思いな優しい子だから……」


 弟は今、前途洋洋だ。

 優良な指導者の下、整った場でトレーニングを積んでいる。

 最大のライバルは不幸な事故で消えた――。


「言い出せんか……」

「ああ、墓場の中…いや、その先々まで、自分の罪を持っていく気でいるよ」


 もうどうしようもない――。


「そういう事も、人はあるか……」


 この先、その姉の魂がどうなるか――考えたくもない。


「アオ……パン、ダさん乗る…から、コインちょう、だい」


 ふいにそう言って、黄魚がアオに手を出した。


「あ、ああ……」


 急な黄魚の言動に、アオは慌てて服のポケットを探るとコインを取り出す。


「コイン?」

「ああ、あれ動かすのって、コインがいるんだよ。てか、黄魚…いつも亀に乗ってたのに、今日はパンダなのか?」


 数枚のコインを黄魚に渡しながらアオがそう聞くと、黄魚はパンダたちの方に視線を向けながら頷いた。


「たまに…は、違う…のも、いいかなって……」

「ふーん?」


 黄魚はすっと立ち上がると、幼女の姿に変化し歩き出す。


「お?」

「…だって、足が…ついちゃうから……」

「ああ、そういえば、亀の時は上に正座しておったな。パンダの上で正座は出来んか……」

「あー、なーんか、本気でー遊ぶって感じー」


 紅も銀河も立ち上がる。

 どうやら遊びモードになったようだ。


「ワシ等も行くか」

「うん!」

「そうだなー!あ、俺はこれが気になってるんだ」


 クロは背後にある巨大ボールを示す。


「ああ、これは中に入って飛び跳ねて遊ぶんだ!面白いぞー!」

「じゃあ、俺はこれから遊ぶ!」


 座敷童たちは各々(おのおの)好き勝手に遊びだす。

 思う存分遊びまわり、十分満足して自分の部屋に帰った次の日――。






「あー、黄魚ー!またいなーい!」


 囲炉裏部屋に紅の声が響く。

 が……。


「居ないんじゃなくて、黄魚は行きました」


 白波がそう言った。


「人の世に、座敷童として行きました」


 そう教えられた――。

お読みいただき大変ありがとうございますm(__)m

(月)(金)を目安に更新しております。

ぜひまた続きを読みに来てください。よろしくお願いいたします(o_ _)o))

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ