アオの部屋は『部屋』じゃない。
「え、ここって何?」
「アオ、の…お部屋」
ポカンと口を開けたクロの横で黄魚は淡々と答える。
「…いやいや、部屋って……これは違うんじゃないか?部屋には屋根があるもんだろ?」
「そう…なの?」
「え?そうだろ?!」
アオの様子が気になるから見に行く、という銀河の後をついてやってきたアオの部屋。
その入り口を入った途端見えたのは空――。
クロは思わず叫んでいた。
「公園って言うんじゃないのか、これ?!」
広さはどれくらいだろう?
そこには天井も壁もなく、床はコンクリート製。
空と外の景色がパノラマで見渡せた。
床の面積はかなり広くて一見しただけでは、クロには広さの見当がつかない。ただ「広い!」とだけ感じた。
コンクリートの床には、パンダや犬・熊・兎などを模した遊具が何体か置かれたエリアがあり、その横には人が数人中に入れるぐらいの透明な大きなボールがどっしりと置かれている。
大きなボールは床に固定されていて入り口があり、中に入って遊べるようになっているようだ。
透明のボール皮(?)を透かして向こう側が見えていて、そこは人工芝が敷かれたミニゴルフ場。ゴルフクラブが数本傘立てのような物に入っているにのも見えた。
遊具に隠れて目に入らない場所にも、まだ何種類かの遊具がありそうだ。
周囲は鉄製の柵で囲われていて、柵の高さは大人の胸の高さくらい。
鉄製で茶色のペンキで塗られている。
柵の向こうには、様々なビルの屋上や、色とりどりの民家の瓦屋根――。
信号機のついた道路もある。
パノラマ景色の端っこの方には、木々の茂った神社のようなところも見受けられる。
走る車や、道行く人の姿はないけれど――。
クロから見ると「なんなんだ、この妙に豪華な公園は?」なのだが……。
「公園じゃない。百貨店の屋上だそうだ」
銀河の言葉にクロは目を丸くする。
「百貨店の屋上ってこんなのだったんだ……。買い物するところだと思ってたよ……」
「昔、アオが家にいたころにテレビで見て、家の子が『行きたい!』と騒いでいた場所らしいぞ」
「ふーん。百貨店は知ってるけど、屋上がこんなのなんて知らなかったよ。屋上では買い物できないんだな……」
「雨が降ったら商品が濡れてしまうからなんじゃないか?」
「そういやそうだな。屋根がないんだもんな」
クロは銀河の考察に頷いているが、そういう事ではない――。
「あたい、これ見て…人、すごいな…って、思った」
黄魚の言葉にクロも銀河も、うんうんと頷く。
正直、ぜひともここで遊びたいと三人とも思っている。
百貨店の屋上施設なんて、たまたまアオは知る機会があったが、家から出ることのない座敷童では本来知ることのないものだ。
なので、実は今となっては見られ無くなった光景なのだけど――それは座敷童たちには関係ない。
「それにしても…部屋って、屋敷の中を仕切ったところを言うんだろ?屋上って、屋敷の中に含まれるのか?」
「……クロ、難しい…こと、言うね?」
遊びたさにうずうずしていた黄魚だが、クロの言葉に困った顔をする。
「人の言う部屋と、ワシ等の部屋は違うのだろうよ」
「なるほど……」
「うん、うん!」
銀河の見解に、クロと黄魚が頷いていると……。
「うるさいなー!あんた達ー、何しに来たのー?」
紅の声がした。
「ん?紅、どこだ?」
クロは首を傾げる。声はするが、姿が見えない。
「あっちだ」
銀河がボールの方へと足を向ける。
「遊、ばないの?」
「今はね」
「何…で?」
黄魚は不服そうだが、クロは諭すように言った。
「とりあえず…アオに会おうぜ。俺らそのために来たんだろ?」
「あ…。そう…だった……」
気がついた!と言う顔をする黄魚に、クロは苦笑いするしかなかった。
子供の遊べる百貨店の屋上広場――。
まだどっかにあるのかなぁ……。
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