表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/379

(閑話)満月の日じゃないけど

9月6日は黒の日なんだとか。

なので、クロの日ってことで閑話。

「何かリクエストは無い?」


 ある日、クロはいきなり白波に聞かれた。


「リクエスト?」

「うん、これが食べたい!って思うお菓子は無い?」

「うーん……」


 考えこんでしまうクロ。

 

(食べたいって俺が思うもの?リクエスト……?)


 白波の言葉に答えたいと思うが、何だか自分の中がざわざわと落ち着かない。


「……クロって、自分からお願いってしたことないんじゃないですか?」

「え?」


 白波にそう指摘され、クロはハッとする。


 八真名家にはクロを見ることや、声を聞くことができる者が長らく出ていない。

 言葉を交わせない者相手に何か頼むのは難しい。

 それに、ごくまれにそういった力を持ったものが現れた時は、相手の願いや希望を聞くことがあっても、クロから何かを頼んだり、願ったりした記憶はない。


 自分をはっきり認識してくれる人間が現れた!っというそれだけが嬉しくて、相手に何かを頼もうなんて、思いつきもしなかった。


 家の者同士、仲良く助け合って暮らして欲しいという(ねがい)は、座敷童として常に持ってはいるが、それはクロのお願いとは違う。


「そう言われてみれば無いかも?」


 遠い記憶に一つだけ、『お願い』したことがあるにはあるが、それはタロに「逝くな!」と言ったこと。あれは白波の言うリクエストとは違うだろう。


「では、練習しましょう」

「はい?」

「自分の望みを相手に伝えることは大事ですよ。力を取り戻して、座敷童としてまた戻りたいと思うのなら、人間にクロの思いをしっかり伝えられなくては……」

「いや、それに関してはずっと……」

「伝わってなかったから、ここにいるんじゃないですか?」

「……」


 そう言われると、返す言葉がない。


「で、何が食べたいです?」


 にっこり、白波が笑った。




 ※※※※※




「満月じゃないのに、お月見するなんて変なのー!」


 囲炉裏部屋の縁側に座り、お団子をほう張りながら紅が笑う。


「満月でなくとも、月はあるのだから良いんじゃないか?というか、食いながら言うか?」


 そう言うのは銀河。


「……美味しい…から…、良い……」


 衣被(きぬかつぎ)の皮をキュッと絞って身を口にいれ、もぐもぐしてから黄魚がつぶやく。


「俺は、たまには甘くないお菓子も食べてみたいって、言っただけなんだけどなぁ……」


 そう言ったら、なぜか白波が「では、お月見しましょう!」と言って、なぜか夜のおやつタイムとなってしまった。


 白波の問いに答えたときに、クロの頭の中にあったのは、お煎餅とかアラレだったのだけど……。


「衣被と磯部団子(いそべだんご)になるとは思わなかった……」


 大皿に盛りつけられた衣被と刻み海苔をまぶした醤油団子を、各自で気ままにつまんで食べている。


「甘くないお菓子と言われて、思いついたのが磯部団子なんですが、それだけだとちょっと味が寂しいかと思って、衣被を……。で、衣被と言えばお月見でしょう?」


 白波がそう言いながら、お茶を入れてくれる。


 ちなみに、衣被は小ぶりなコイモを良く洗い、五分の一ほどを切り落としたものを蒸してから、黒の胡麻塩をまぶしたもの。

 ブドウを食べるように、皮の部分をつまんで押し出せば、中の身を口に入れることができる。

 ほんのり自然な芋の甘みが胡麻塩で際立ち、口当たりはねっとりして、とても美味しい。


 磯部団子は、磯部餅の団子版。

 上新粉(米粉)と白玉粉(もち米粉)を合わせたもの(上新粉多め)に、砂糖を少し混ぜて、水でしっかりこね合わせたものを丸めてゆで上げ、醤油をつけながらこんがり焼いたものに刻み海苔をまぶしてある。

 もっちりした歯触りに、醤油の焦げた香り、海苔の磯の香りが合わさって、これも美味。


「醤油味と、塩味って、相性最高ー!」


 機嫌よく紅が言う。


「茶も美味いな」


 うむうむと銀河が言う。


「そなたら、せっかくの月見なのだから、月も見ればどうだ?」


 衣被をついばんでいたスズメが言うと、黄魚が齧っていた団子を天にかざす。


「形…一緒、くらい?」

「うん?……ああ、そんなもんかな」


 クロは苦笑いする。

 満月ではない今宵の月は、誰かが少し齧ったように欠けている。


「実際には欠けているわけでなく、見えないだけなんだがな」

「それを言うならー、新月でまったく見えないときだってー、実際はあるのよー?」

「知、ってる……」

「言わずもがなのことだな」 

「あはは……だよね!」


 とりあえず……と、白波が言う。


「今日もお月様が綺麗です」


 皆頷いて、和やかに夜空を見上げる。


 今日はそんな日。

衣被の蒸し時間は、コイモの大きさによります。小ぶりな食べやすいものでだいたい15分くらい。

胡麻塩の代わりにゆず味噌をつけても美味しいですが、それだとおやつじゃなくて、おかずになっちゃう気がして、おやつにするときは胡麻塩一択!だと、勝手に思っています。


団子の茹で時間は5分~6分。

団子は水の代わりにお豆腐を使うと、よりもっちりするのだそうです。分量の配分が難しいので、ぐらごんは水でやってますが(;^_^A

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ