序章 始まりの予感
初めまして!れもんです。はじめてギャグもの書いてみました。良ければ感想いただきたいです。
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拝啓 12歳の俺、四条 寛太殿。
やあ、元気かい。
今別にピンピンしているし、そっちの俺も元気だろうな。知らんけど。
最近の勉強の調子はどうだい。
友達が皆行っているから、というアホくさい理由で行き始めた塾での調子はどうだい。
思っていた以上に成績が伸び始めて、小学生ながら親の期待をひしひしと感じ始め、関西一位の中学を受験することになっている気分はどうだい。
中学校というシステムを全く理解しておらず、中学に入学すれば全く勉強しなくていいと考えていて、今だけは勉強してやってもいいなぁ、と一日12時間勉強していてそれが当たり前だと感じている気分はどうだい。
俺は今高校二年生。12歳の君が懸命に努力した結果、第一志望には落ちたものの、県一番の中高一貫校の進学校に入学することができたよ。ありがとう。落ちたからと言ってその経験が無駄になっているとは思わないよ。この地獄のような勉強期間を皆このくらいやってんだろ。と何も考えず、親と塾講師の手のひらの上で踊り続けた結果、今俺はここにいるんだから。
でも
いや
だからこそ俺は伝えたい。
君のアホであり賢いところを最も知っている俺だからこそ伝えたい。
そこに自分がそこでナニをしたいかという目標を持つべきだ。
塾の実績作りのために今の中学を受験することが最善なのか?違うだろ。
学力に伴った学校に行くことが本当に幸せなのか?違う。
親の期待を裏切れないからそこへ行くのか?違う。これはマジで違う。
そう。俺が伝えたいことそれは
男子校なんか入るんじゃねええええええええええええええええええええ
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「…ねっむ」
昨夜遅くまで遊んでいたゲームの疲れがとれないまま、母親の騒々しい声に起こされ制服に袖を通し始める。
朝ごはんは食パン一切れを三等分したものにバターを塗り一つ食べる。三つ全て食べている時間なぞない。睡眠欲に生物は抗えないものだ。
食べ終わると気持ち寝ぐせを直してすぐ家をでる。ワックスを使う暇なぞない。あんなものは低俗の使うものだ。
駅まで早歩きで10分。汗も滴ってくる季節になった。学ランを着る意味なぞない。こんなものは暑いだけだ。
くだらないことに思考をめぐらしながら、朝の洗礼ともいえる満員電車に揺られて35分。四条 寛太の通う光明学院が姿を現した。
私立 光明学院中・高等学校。
高校からの編入がない中高一貫校であり県一番、全国七位の超がつくほどの進学校である。社会を明るく照らす光となるような人材を育てあげるというモットーの元、県内県外問わず優秀な生徒が多く在学している。一学年150人程の生徒が存在し、少数精鋭を謳っていて、去年の全国の高校での国公立大学進学率は全国一位であった。立地は最寄り駅から徒歩三分と利便性が良く、電車で二、三駅ほどいけば県屈指の栄える地域が二つもある。控えめにいっても好立地だ。おまけに高杉が中学に入学する前に新校舎に建て替わり、築五年の新築ほやほやときてる。正直、死角がない。(卒業生 tweet、高校HP 参照)
男子校であるという一点を除けば。(高2 在校生 参照)
「うぃ~」
誰に言うでもなく本日の第二声を発しながら教室に入り、昨日席替えされた前から三番目、左から二つ目の席に座る。
四月十五日。春は出会いの季節といわれる時期である。特に我々高校生にとっては。仲のいい友人、気になるあの子のクラスや新しい人との出会いに心震わせ、この時期にしか味わうことのできない何とも言えない雰囲気が溢れている。ここから生まれる色恋沙汰というものは少なくなく、学生生活においてのビッグイベントの一つといっても過言ではない。
は?過言でしかねえわ。
そんな雰囲気は微塵も存在しない。少数精鋭、中高一貫校であることから五年目ともなると同学年の8割の人の素性は把握している。高校生活1日目から、クラス名簿を見ただけで大体のクラス構造を皆が理解する。クラスに馴染むなどという概念は存在しないのだ。
席替えにおいても同様だ。上下左右、自分の環境を形成する全てが男。そのため青春の1ページを彩る、あの子の隣に神頼み!ドキドキ!新学期席替えタイーム!など男子校には存在しない。淡々と、粛々に行われる移動 like a 軍隊。そのため学校説明での【死角がない】というのは断じて違う。女の子に見とれる、といった【視覚を奪われるものがなにもない】の省略形【視覚がない】へ変更、または【視覚がなくてもよい】と言い換えるのが妥当だ。
そんな変わり映えのしない日常にため息をつきながら学ランを脱ぎ、背伸びをする。と同時に遅刻寸前ダッシュを決めながら富田林 陽介がドタドタと教室に入ってきた。
光明学院に通う生徒は三パターンの人間しかいない。
まずは頭が良すぎて頭がおかしい人間だ。小学生の頃から勉強が好き好きboyがそのまま成長してしまったパターン。ただでさえ勉強至上主義の中学で三年間も勉強し続け、中等・高等教育には収まらず、数学オリンピックなどとかいう凡人には到底到達することすら出来ない世界で戦い、金メダルなどを獲得したりしている。中学に入ってから勉強を辞めた四条にとっては基本的になにを話しているかわからない。住んでいる世界線が違うからといって迫害されるどころか一目置かれていて、秀才による秀才のためのコミュニティの中で生きている。童貞しかいない。
次に光明学院の過半数を占めるであろうオタクといわれる人種だ。勉強は基本的にできる。共学では迫害を受けがちなオタク達であるが、男子校ではオタクの数が半端じゃないため、ある程度の強いコミュニティが形成されている。そのため共学では難しいオタクと後に語る運動部とが共存出来ている。なぜオタクが多いのか。その理由は男子校であるからだ。これは卵が先か、鶏が先か、という永遠の議題になるのでここらで悟って頂きたい。二次元女子に欲望のすべてをぶつけて、それが正当化されているため、童貞しかいない。
最後に運動部に所属するいわゆる陽キャラと呼ばれる人達だ。といっても所謂ウェイと呼ばれるような人を指すものではなく、ある程度普通のコミュニケーションがとれれば光明学院のなかでは陽キャラに認定される。部活に所属する人は自然と声を出す。よって陽キャ。ただそれだけの理由だ。一応四条もバレー部に所属しているため、区分的にはここに入る。
陽キャとオタクとの決定的な差は生身の女性が好きなことだ。といっても実際に同年代女子と関わる生徒などほぼ皆無である。みなどのような女子がいいか、どのようなおっぱいが好きか、どのようなシチュエーションで昨日右手で捌いていたかの話で想像力を高め合っている。そのため想像力豊かであるので文系に多い。そのため95%の確率で童貞である。
富田林もバスケ部に所属しているため、この区分に入る。しかし、こいつはおそらく共学に行っていたとしても陽キャであったと思えてならない。身長は180を超え、顔立ちがくっきりしていて愛嬌もあり成績も上位30位には入る。おまけにバスケ部のエースで運動神経がいいときた。控えめに言っても圧倒的優良物件である。しかし富田林にはその自覚がないので、成績は下の下、よく言っても中の中の顔立ちで身長が170もないバレー部補欠の四条は絶対にこれだけは口に出すまいと決めているのだ。
そんな富田林 陽介は四条の気の抜けた挨拶には答えず、席に着くかどうかのタイミングで口を開いた。
「かんたぁ、今日の英語の予習してきたか?」
「やるわけなくね。予習せず且つ当てられない。これが一番幸福度高い。バヤシは?」
「清々しいねぇ~。ま、俺もだけど」
お前は当てられてからでもその場で和訳できるからだろ。くそが。と心の中で呟く。こちとら英語の授業中は一生ビクビクしてんだっての。
そんな愚痴を飲み込んでいると、チャイムと共に担任が入ってきた。それと同時に富田林がふと漏らした。
「てかB組の佐藤、なんか塾で彼女出来たらしいな」
次回。四条 寛太、四年ぶり二回目の塾へ通う。




