表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おどろ 弐  作者: 沖崎りぃ
4/5

おどろ④


 男の目の前には 髪を乱し 虚ろな

 女の顔が 転がっている

 切断され 削がれ 噛られ

 骨が見え 口裂け 目垂れ 血にまみれた

 女の顔が 男の視界を 覆い尽くす

 その顔の 目や 鼻や 耳は

 グネグネと、又はコキコキと、

 動いている


 激しく動いていた 男の血眼(まなこ)

 一点に止まり その顔を じっと見ている

 (なげ)くように 悲しむように 哀れむように

 悔やむように 悟るように 抗うように

 男の血眼(まなこ)は ひび割れ飛び出し

 女の顔を 凝視する 


 後ろで音がする

 ねちゃり、くちゃり、と 

 咀嚼する音がする

 女の顔は グネグネと、又はコキコキと、

 動き続けている

 一歩、また一歩と 咀嚼する音が近づく

 男の血眼(まなこ)が ゆっくりと動き出す

 漆黒のカビが 繁殖を止める

 男の血眼(まなこ)は 揺れ動き 辺りを伺う

 咀嚼する音が すぐ後ろで鳴る

 蛆が涙を流し

 鼠が鼻を垂れ

 女の口が動き

 ホウゥ、ホウホウ、と叫ぶ


 男の血眼(まなこ)が 激しく

 ギロギロギロギロギロギロ、と 回り

 女の口が 激しく

 ホホホホ、ホウゥ、ホウホウ、と 叫び続ける


 男の背中が 削がれ 咀嚼される

 男の血眼(まなこ)は 回り続け

 女の口は 叫び続け

 女の手も 動き回る

 その手が 遠ざかる

 少しずつ 視界の隅に 消えていく

 男の血眼(まなこ)が それを追う

 女の手が 消えていく

 すがるように 男の眼球が 追いかける

 裏返る程に、千切れる程に、

 男は 眼球を向ける

 裏返る程に、千切れる程に、

 力を込め 追いかける


 そして 男の眼球は 千切れ

 ゴロンと 裏返り

 男の視界も 裏返り

 己の脳が 視界の全てとなる

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ