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おどろ 弐  作者: 沖崎りぃ
3/5

おどろ③


 ホウゥ、ホウホウ、ホウゥ、ホウホウ、

 誰も見てはいけません

 ホウゥ、ホウホウ、ホウゥ、ホウホウ、

 誰も嗅いではいけません

 ホウゥ、ホウホウ、ホウゥ、ホウホウ、

 誰も聞いてはいけません


 あいつが来るから

 あいつが来るから

 あいつが来るから


 ホウゥ、ホウホウ、ホウゥ、ホウホウ、

 涙を流してはいけません

 ホウゥ、ホウホウ、ホウゥ、ホウホウ、

 鼻を垂れてもいけません

 ホウゥ、ホウホウ、ホウゥ、ホウホウ、

 耳を落としてはいけません


 あいつが来るから

 あいつが来るから

 あいつが来るから


 語る事だけ 許されます

 唄う事だけ 許されます

 ねちゃり、くちゃり、と耳元で

 呪う事だけ 許されます



 ギシギシと軋み

 ゴトゴトと揺れる

 乳母車押し

 あいつが来るから

 あいつが来るから

 あいつが来るから


 ホウゥ、ホウホウ、ホウゥ、ホウホウ、

 見たもの 思い出してはいけません

 ホウゥ、ホウホウ、ホウゥ、ホウホウ、

 血の匂いを 嗅いではいけません

 ホウゥ、ホウホウ、ホウゥ、ホウホウ、

 ギィ、ギギギ、ガタ、ガタタ、

 音を聞いてはいけません

 ホウゥ、ホウホウ、ホウゥ、ホウホウ、

 夜の山から

 ホウゥ、ホウホウ、ホウゥ、ホウホウ、

 全速力で

 ホウゥ、ホウホウ、ホウゥ、ホウホウ、

 あいつが来るから

 ホウゥ、ホウホウ、ホウゥ、ホウホウ、

 あいつが来るから、

 あいつが来るから、



 悲し儚し情け無し

 (はなし)聴きし欠き乱し 

 ホウゥ、ホウホウ、ホウゥ、ホウホウ、

 と、耳残れば

 ホウゥ、ホウホウ、ホウゥ、ホウホウ、

 あいつは既に傍にいる

 あいつはあなたの横にいる

 

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