シロウと魔王の杖 4
平日はリアルの仕事の合間に書いて、週末に頑張ります。
「警戒するなよ。ジェシカを連れ戻そうとかじゃない。あいつの力が必要になったんだ。いや、あいつの魔法が必要になったのさ」
「何故、彼女への依頼を私に言うのですか?」
「家にはもう1人妹がいる。困った時にはシロウに言えとね。妹宛の手紙に書かれていたんだ。差出人の名前がない手紙だが、父も俺もジェシカからだと解った。本当に頼る時が来るとは思わなかったが」
「わかりました。彼女には伝えますが、ケルン様に会うのも依頼を聞くのもジェシカが決める事です」
「あいつは親父が嫌いだがらな。家の依頼は聞かないだろう。言った途端に旅に出るかもしれない。伝える際にはもう一つ加えて欲しい、依頼は魔王の杖の破壊だ」
◇
「アイナさん、出かけます」
「わかりました。視察は大丈夫でしょうか?」
「視察は問題ない。他に必要な書類を言ってきたら、出してあげて。あとマスターが来たら経緯を説明して欲しい」
「補佐はどちらに」
「昨日の件でちょっとね。いってきます」
ケルンは全てとは言わないが、かなり深いところまで話してくれたと思う、でもシロウは自分に起こった魔王の杖に関する事を言わなかった。ケルンは信用出来ると思うが、貴族というものは信用出来ない。
◇
『ミラージュ』
シロウは町で一番賑わっている市場なら立ち並ぶ通りに来ると、気配を消す魔法を唱えた。
『フロート』を唱えて少し浮き、足音や足跡も消す。実際には精霊達に邪魔されるから、シロウ以外がジェシカの元に辿り着けるはずはないのだが、精霊に頼ってばかりというのも申し訳ない。
ジェシカの家は町から少し離れた森の一角に普通に建っている。たが精霊達が視認出来ないようにしている。
森に入り少し歩くとすっかり見慣れたログハウスが見えてきた。扉からジェシカが出てきて手を振っている。
長い金髪に、大きなブルーアイ。出るところは出ているのに、全体的に華奢な身体のラインはとても冒険者とは思えない。見る度に綺麗だと思うが、近づくとその大きな瞳に少し怒りの色が見えた。こういう時はとりあえずだ。
「ごめん」
「何で謝ったのか分かってないでしょ。本当に仕事以外は馬鹿なんだから、いいよ教えてあげる、次来る時は何を買ってくるんだったっけ?」
「悪かった。ちょっと色々あって余裕がなくてね」
「依頼ね。楽しい依頼を期待するわ」
家に入りテーブルに座ると早速依頼の話に移る。最初は「はやくはやく」と急かされ、ギルドに来たおじいさんの話までは「それでそれで」とノリ良く聞いていたのに、ケルンの名が出て以降の話は、目に見えて嫌がりだした。
ケルンから力を貸して欲しいと言われたのくだりでは、大きな袋に食糧を入れだした。旅に出る用意だろうか?
「ケルン様がね、ハインツ家の依頼であれば、ジェシカは旅に出て行方をくらますかも知れないと言われてね、依頼の内容を教えてくれたんだけど、何だと思う?」
「見合いは嫌だし、パーティへの参加も嫌」
「何があったかは知らないけど、ジェシカが家を飛び出して冒険者になった時に、そういうのは諦めたんじゃないのかな」
「じゃあ何?兄も魔王の杖を壊せってお願いしてきたの?」
「ご名答。報酬は聞いていないけどね」
評価の程、何卒宜しくお願いします。