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独身女魔法使い「プロフィールオープン」

作者: ぺたにゃー

これが婚活の現実だい。

ゼクシオ王国王都イントゥーサークルはヒト、モノ、カネが集まる王国内随一の街である。


その街角の一角で浮かない顔をした女魔法使いがいた。


彼女の名前はサシャ=デバッカー、王国内でも名門のグリンウォーター魔法学園を卒業した高学歴魔法使いだ。


そんな彼女がいまいるお店はアイン魔法具店、彼女はこのお店の常連であった。


「サシャさん、今日は浮かない顔をして、どうしたんですか。」


アイン魔法具店の従業員であるクラリスがサシャに声を掛けて来た。


クラリスとサシャは同じ女性で年齢も近いこともあり、気さくに話す間柄だ。


「ちょっと親と喧嘩しちゃってね。」


サシャはクラリスに今朝のことを話した。


サシャは王都内で親と同居しており、親からの何気ない一言で大げんかした。


「”そろそろ結婚しないの”だってよ。私だって良い人がいればとっくに結婚しているわよ。」


サシャは来年で30歳、結婚に関して少々焦り始めていた。


「分かる。分かりますよ。こっちだって苦労しているのに無神経に言われると頭にきますよね。


実は最近、独身女性の間でこんな商品が流行っていますよ。」


クラリスは一旦離れると、小さな小箱を持ってサシャの元へ戻って来た。


「これはですね。恋活のコンタクトと呼ばれる魔法アイテムで、一定の場所で異性の特殊なステータスを知ることが出来るものです。」


「そうなの。鑑定魔法とは違うのよね。」


「はい。鑑定魔法では相手の強さに関することを知ることが出来ますが、これは恋愛や結婚をする上で必要なことを知ることが出来ます。


これを付けて婚活パーティーやお見合いに望まれる女性が急増しており、言わば婚活女子のマストアイテムです。」


「面白そうね。購入するわ。」


「有難うございます。一つ2万ギルになります。細かい使用方法は添付の説明書をお読み願います。」


サシャはクラリスより勧められた恋活のコンタクトを購入した。



備考:1ギル=1円



(さて、このアイテムを使って婚活パーティーに臨んでみないとね。)


サシャは王都の中心街にある婚活パーティー会場にやってきた。


王都では近年飛ぶ鳥を落とすが如く勢いで婚活パーティーが盛んに行われている。


ひと昔前までは、お見合いや紹介が主流であったが、情報魔法工学の発展による情報化社会の波は男女の出会いに関して大きく変えていった。


鑑定魔法と伝達魔法の応用によるマッチングという魔法など、当人たちがその場にいなくても恋愛を成立させる。


「いらっしゃいませ。女性の方は一人3千ギルとなります。」


サシャはそそくさと受付を済ませると会場にある席に座った。


開始ギリギリだったこともあり、会場内は男女ともに満席である。


サシャは15番と書いてある名札に自分の名前を書くと、服の胸元部分に取り付けた。


今回は男女共に15名程度の規模のパーティーで、男女一組ずつのテーブルに別れ、数分話したら男性がテーブルを移動するというものだ。


カイテンスシ方式と呼ばれるこの方式は小規模な婚活パーティーではもっともメジャーな方式である。


(さっそく使ってみましょう。”プロフィールオープン”)


サシャが頭の中でそう念じると目の前の男の情報が頭の中に流れこんできた。



名前:レモン=スカッシュ


年齢:31歳


職業:C級冒険者(格闘家)


年収:450万ギル


出身:シャイン村


趣味:筋トレ、木彫り


飲酒:付き合い程度


タバコ;吸わない


好きな食べ物:カレーライス


休日の過ごし方:筋トレするか木彫り


(C級冒険者ってことは平均レベルの冒険者ってことね。冒険者の横に格闘家ってあるのは、ステータス上のジョブね。


趣味は筋トレに木彫り、木彫りって何かしら。容姿は可も無く不可も無くな感じだけど、やっぱりかなり筋肉質ね。緩やかな服で誤魔化しているわね。)


「はじめまして、レモン=スカッシュと申します。職業は冒険者をやっています。」


「はじめまして、サシャ=デバッカーです。王立土木局で事務をやっています。」


それから数分、二人は互いの趣味に関して軽く話をして終わった。



(さて次の男は、顔立ちは良いわね。”プロフィールオープン”)


名前:ホント=エドウィン


年齢:29歳


職業:E級冒険者(剣士)


年収:250万ギル


趣味:ビリヤード


飲酒:付き合い程度


タバコ:吸う


好きな食べ物:漬けマグロ丼


休日の過ごし方:王都散策


(趣味はビリヤードで、休日は王都散策なんだ。一緒に王都散策したら楽しいかも。)


「はじめまして、ホントです。」


「はじめまして、サシャです。ホントさんの趣味は何ですか。」


サシャはホントに対して趣味と休日の過ごし方を中心にグイグイ聞いた。


ホントの返答の中にサシャも知っているお店などもあり、二人の会話はそれなりに盛り上がった。



(ホント君は良かったな。あれ、いつの間にかホント君があんなに遠くにいる。)


サシャが正気に戻るとホントとは3つほど席が離れていた。


ホントとの会話時間が終わった後、2人と会話したが、頭の中に入ってはいなかった。


2人ともそれ程悪い感じではなかったがホントの印象が強過ぎたようだ。


(今度の男は身なり良いわね。”プロフィールオープン”)


名前:ケトル=ラバー


年齢:28歳


職業:商会職員(騎馬兵)


年収:1000万ギル


趣味:乗馬、投資


飲酒:よく飲む


タバコ:吸わない


好きな食べ物:ドラゴンのフィレ肉


休日の過ごし方:演劇鑑賞


(年収1000万ギルなんて凄い。趣味や食べ物、休日の過ごし方もブルジョワなのね。)


「はじめまして、ケトル=ラバーです。」


「はじめまして、サシャ=デバッカーです。王立土木局で事務をやっています。ケトルさんは何をやっているのですか。」


「お恥ずかしい話ですが、父の経営する商会で下働きをしています。」


「いえいえ、全然恥ずかしいことではないと思います。具体的には・・・」


サシャはケトルの話を前のめりで聞き、気が付くと規定の時間となった。



(ケトルさん、商会の跡取りにはなれないらしいけど年収はやっぱり凄いわね。あれ、いつの間にか最初の人に戻っている。)


サシャが我に返ると、机の前には最初に会話した男がいた。


正直、会話したことは覚えているが名前すら思いだせない。


「それでは、これよりカップリングタイムにうつります。机に置きました木皮に興味のある方の番号を3名まで記載願います。」


司会の女性より促される形でサシャは今日気になった男性について考える。


(今日気になった男性はホントさんとケトルさんよね。他の男性についてはよく思い出せないしね。


1番目はホントさん、2番目はケトルさんで良いかしら。)


サシャは番号を書くと、司会の女性にそれを手早く渡した。



「それではカップリング発表となります。番号を呼ばれた方はこの後、受付にてお待ちください。」


司会の発表にサシャは心躍らせ期待するが、けっきょく番号を呼ばれることは無かった。


(あ~あ、結局今日も駄目でしたか。でも諦めないで続けていけば良い人と巡りあえるわよね。)


サシャはトボトボと家路に着いた。





婚活パーティー会場に二人の男女がいた。


サシャが参加したパーティーの司会進行をしていた者達だ。


「今回のカップリングは2組ですか。もう少し多いかと思ったのですがね。」


「前回は0組だったからまだマシな方よ。」


婚活パーティーのカップリング率は決して高いものではない。


否、婚活パーティーに限らず婚活でのカップリング率と成婚率は決して高くないのが現状だ。


情報化社会がやってきてカップリング率と成婚率が下がっているのが現状だ。


「女性はね、目の前に王子様がやってくることを期待しちゃうんだよ。それが年を取れば取るほどね。


今日だってイケメンが一人と高所得者が一人いたでしょ。女性は皆彼等二人に集まっちゃった。


その他の男性達だって決して悪い感じじゃなかったし、出会い方が違えば付き合っていたかも。」


「そう考えると、我々の仕事って何なんですかね。出会いの場を提供しているつもりが、却って出会えない状況を作り出している気がします。


商会は利益が出ているけど、上司はカップリング率低過ぎて頭抱えていますよ。」


二人の勤める商会は王国でも屈指の商会で、赤ちゃんの哺乳瓶から城まで取り扱っている。


あまりに大きな商会なのでマクロレベルのカップリング率と成婚率の低下が商会の業績に少なからず打撃を与えていた。


婚活パーティーで小さな利益を上げても意味がないのだ。


売上よりもカップリング率の上昇こそが二人い与えられたミッションなのだ。


「でも、他の婚活パーティーで提示されている見せかけだけのカップリング率は意味がないわ。」


パーティー内だけのカップリング率を上げるのはそれ程難しい訳ではない。


興味のあった異性の記入の枠を増加させ強制的に記載させる方式にすれば良いのだ。


しかし、それだと後々トラブルになることが多く、そのやり方は自粛している。


そもそも二人の勤める商会は婚姻後の生活をターゲットにしており、見せかけのカップリング率など意味がなく本末転倒なのである。


「どうしたら良いのですかね。」


「一番は男女ともに魅力値を上げて貰うことね。男性もメイクを覚えてより魅力的に見える努力をもっとした方が良いわ。


結局こういう場では見た目のポイントがもっとも高いのだから、そこを努力すべきね。もちろん女性もよ。


1回限りのパーティーではなく、半年間に渡って行う月に1~2回参加型の講習やレクレーション型のものを開講するのもありね。


当商会の様な集客力があり資本力がある商会なら可能だと思うのよ。あとは、男女の料金差を極力無くすことね。」


「というのは。」


「男女の料金差が大きいとそれだけトラブルも多いのよ。当当会のパーティーは極力料金差を無くしているけど、それでも女性の方が少し安いわ。


婚活なんて男女が同じレベルのやる気を持たないと上手くいかないものよ。」


「確かに男性陣も高いお金支払ったのに女性陣がやる気なかったら最悪ですもんね。他の商会でその手の話をよく聞きます。」


「私達も頑張ってもっとカップリング率を上げる努力をしましょう。」


二人は決意を新たに仕事を頑張ることにした。



ある日、ある場所


一人の男が婚活パーティー会場にいた。


男は日課の筋トレをした後、水浴びをし、身だしなみを整えパーティー会場に赴いた。


男の前に座った女性は化粧っ気の薄い、中肉中背の30前後の女性だ。


(どういう女性なのだろう。”プロフィールオープン”)


名前:サシャ=デバッカー


年齢:29歳


職業:事務員(魔法使い)


年収:400万ギル


趣味:読書


飲酒:よく飲む


タバコ:吸わない


好きな食べ物:おでん


休日の過ごし方:魔法道具採集



ある日、ある場所、ある男女たち

最後までお読み頂きありがとうございます。

ポイントとコメント頂けますと幸いです。


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