第八話 対アサルト教団
パットンレンジャー部隊の合宿も大詰めを迎えた頃、万全の準備を整えた俺達は、戦いの火蓋を切った。
イシスタ伯爵領の今後について話しをすると、騎士団の副騎士団長以下、幹部10人を集めた。
「イシスタ伯爵領の今後については、私に婿になった方に、領地を継がせると、王城からの使者が参りました。
その後、近隣の貴族の間で、その婿を決闘で選ぶということになったそうです。
そして、結婚のあかつきには、その方の領地に併合すると。」
「なんと、姫様それは本当ですか? 婿をいずれお迎えするのは、やぶさかではありませんが、イシスタ領を併合するなどというのは、暴挙以外のなにものでもないのではありませんか。」
「ええ、私もそう思います。そしてこれは、父の暗殺も含めて、仕組まれたことです。」
「待ってください姫様。イシスタ伯爵は、魔物と戦って殺されたのです。私がこの目で見ていたのですよ。」
「ならば、ゲストス。あなたが嘘をついた裏切り者ということになりますね。
皆のもの、ゲストスを拘束しなさい。証拠を見せます。」
「なにを根拠に、私が嘘をついたなどと。姫様は、ありもしない妄想をお持ちなのだ。
今、騎士団の長は私であり、騎士団は私に従って行動せよ。」
「墓穴を掘ったな。ゲストス。」
「パ、パットン団長! どうしてここへ。」
「まんまとお前に嵌められたわ。儂を後ろから襲うなど、騎士の風上にもおけぬやつ。皆のもの、裏切り者を拘束しろっ。」
騎士達に取り押さえられたゲストスの前で、アサルト教団の教皇とゴルゴの会話の場面の録画を皆に見せる。
そして俺の正体を明かす。
「ゲストス! 覚悟なさい! 父の仇、思い知りなさいっ。」マリアの刃がゲストスの首をはねた。
「これより、父イシスタ伯爵の弔い合戦を開始する。アサルト教団を壊滅し、ブータン子爵以下、この企みに加わった貴族どもを皆殺しにする。」
『『『おおぅ、』』』
次の朝、アサルト教団の本部前には、イシスタ騎士団400名余りが転移し、建物を取り囲んだ。
そして、突入したのは、パットンレンジャー部隊26名。
まず、城壁のように建物を取り囲む壁に、鍵付きロープを打ち込む。ロープには、20センチ間隔でコブが付けられており、それを伝って、隊員が次々と壁をよじ登って行く。
壁の向こう側へは、別のロープを使って一気に降りる。
地面に着いたら、3人一組となり、教団の者を手当り次第、ボウガンで始末してゆく。
俺とマリアも彼らに続いて突入する。
教団員は、弓で毒矢を放ったり、槍を投げたりと応戦するが、ジュラルミンの盾に身を隠して迫るレンジャー部隊に、次第に追い詰められていく。
レンジャー部隊には、剣を交えるなどの接近戦を固く禁じており、あくまでも、ボウガンを主とする遠距離からの攻撃で敵を倒すように命じている。
突入して、30分後には、教皇の部屋に立て籠る数十人との攻防となったが、破った扉の隙間
から、一斉に催涙弾を投げ入れて突入し、教皇以下を皆殺しにした。
教団本部を取り囲んだ騎士団も、逃げ出す教団員を問答無用で殺害し、一人の生存者も許さなかった。
この日、教団本部にいた823名の教団員が命を失った。
この中には、単なる非戦闘員の使用人達も含まれていたが、アサルト教団が、暗殺教団であることは、周知の事実であり、たとえ非戦闘員であっても殺害に加担したのであり、その罪は死罪でしかない。