第七話 パットンレンジャー部隊
パットンの怪我を治癒した後、俺達は、これまでに判明したことを話し、これからの行動について話し合った。
まず、副騎士団長のゲストスの排除。
次に、アサルト教団本部への襲撃。
そして、ブータン子爵を初めとする周辺貴族の粛清。
パットンには、密かに信頼のおける部下を集めてもらい、対アサルト教団用、特殊部隊《パットンレンジャー隊》を訓練させることとにした。
これには、秘策がある。隊員達を転移で、俺の世界に連れて行けば、こちらの時間は止まったままだ。隊員には俺の世界で一ヶ月、厳しい訓練を積んでもらう。
パットンの元に集められたのは、総勢26名の騎士団員。うち女性が3名含まれる。
女性に過酷な訓練はどうかと思ったのだが、パットンが「下手な男より鍛えられていますよ。」というので、差別はしないことに決めた。
隊員達の移転先は、とある山中の温泉宿。人里離れ、登山者がたまに訪れるような場所。ここを合宿所とすれば、隊員達に俺の世界の文明にあまり接触させずに済むだろう。
合宿所で、ビデオを見せて、レンジャー部隊の訓練と、空手の修練。それにボウガンとモトクロスバイクの訓練を実施した。
この合宿に、マリアが参加すると言って聞かなくて、参加することになったのだが、隊員達の士気が上がりまくって、思わぬ効果があったのは余談だ。
ところで俺はこの間、昼間は会社務めのサラリーマン、仕事を終えると合宿に参加するというハードな日々だ。一日くらい家でのんびりしたいところだが、マリアが許してくれない。
それから、この合宿や隊員達の装備の費用だが、マリアが出してくれた。
マリアの結婚費用のためにと、父親のイシスタ伯爵が遺してくれたうずらの卵ほどもある《ダイヤモンド》を俺の世界で売却して、資金に替えたのだ。なんとその額、5億円。
俺、『サラリーマン辞めてもいいかな?』 と思ったことは、マリアには内緒だ。
隊員達の装備は、一新した。
武器は、[ボウガン]と刃長70センチと短めの[日本刀]。これは、狭い室内での戦いを想定したいわゆる忍者刀にならったものだ。
刀剣類は、銃刀法の規制を受けるので、輸出品会社を設立して、輸出品として仕入れた。
ちなみに、社長はマリアである。俺は、非常勤役員におさまった。
補助武器としては、[サバイバルナイフ]、[投擲用、催涙弾]、目くらまし用の[フラッシュライト]、手投げ用の[火炎瓶]。
防具の装備は、フルフェイスの[ヘルメット]、ポケットが多い[防水の作業服上下]、中の金網が鎖帷子の役目を果たす[防刃ベスト]、硬質プラスチック製の肩·肘の[小手]、合成皮革の[手袋]、スパイク付きの軽量[登山靴]。
そして、ジュラルミン製の盾。
靴下と下着は、支給品だ。
その他の装備は、小型[トランシーバー]、防水[腕時計]、[赤外線暗視ゴーグル]、合図のための[発煙筒]、ペンサイズの[サーチライト]、折畳み[オペラグラス(双眼鏡)]。
さらに、部隊の武器として、[ピッチングマシン]を2台購入した。大型火炎瓶の投擲用だ。
錨のついたロープを圧縮空気で飛ばし、城壁を登るために使う器材や、ワニバサミの罠も購入した。
合宿中の隊員達の楽しみは、宿の食事だ。自分達の世界では、食べたことのない料理が出る。
酒は、作戦終了まで禁止したが、夕食時には、ビールコップ一杯だけ許可した。
「ぷふぁ、旨いぜっ。おらぁ、この一杯ために今日一日、がんばった気がするぜっ。」
「ほんとね。お酒なんて飲まなかった私が、このビールの味だけは、最高だと思うわ。」
「さあて、腹も膨れたし、温泉にゆっくり浸かるとするかな。ここの温泉は、疲れがとれるし、最高だぜっ。」
隊員達の憩いの時間は、あっと言う間に過ぎて行く。最高の思い出とともに。