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第六話 探偵シンジの犯人捜査

 翌日、通販注文した品物が続々と届く。途中、マリアが突き止めた暗殺教団アサルトの本部のある場所へ転移する。

 マリアを連れて一度、自宅へ戻ると、監視カメラ用の超小型カメラ5台と、盗聴器10個を持って、今度は俺単独で転移した。

 カメラも盗聴器も無線で受信できる。


 教団本部のある場所は、険しい渓谷の中にあり、周囲には人が住む気配もない孤立した場所だ。

 夜になるのを待って、本部の建物に侵入する。本部建物は、石造りの2階建てで、窓には鉄格子が嵌めてあるが俺には関係ない。

 窓から覗いて、視認できた場所へは転移ができるからだ。

 超小型カメラを広間に2台、会議室、二階の奥まった場所のある教皇の私室らしき部屋、その隣の部屋に各1台を、併せて盗聴器を設置して、ひとまず撤退する。


 部屋へ戻ると、不思議なことか起こった。教団本部の建物の外に、隠して置いてきたはずの受信機が、目の前のテーブルの上に〘ぼんやり〙とした光に包まれて置かれていたのだ。

 スイッチを入れて見ると、なお驚くことが起きた。もう既に録画されているのだ。


 マリアと二人で、ビデオ鑑賞会だ。カメラとその場所の盗聴器は、《人感センサー》で電源が入るので、人がいない場面は映っていない。

 

 しばらく見入っていると、決定的な場面に遭遇した。場所は教皇の隣室、一人の男が膝まづいて教皇と話している。

 「ゴルゴ、イシスタの件か。状況はどうなっておる?」

 「はい、明後日中天の刻限に決闘が行われる運びになっております。」

 「ブータンの小倅を勝たせる手はずは、整ったのか?」

 「はい、決闘の場に紛れ込ませた侍女に、含み針を用いて、相手を痺れさせる手はずにございます。」

 「せっかく、何人もの手練を失いながら、イシスタ伯を亡き者にしたのだ。ブータン子爵には、イシスタ領を手に入れて貰わねばな。」  

 「イシスタ伯爵の元に入り込ませた、ゲストスはいかが致しますか?」

 「そのまま、ブータンの元へ送り込ませよ。ブータン子爵を監視させるのだ。」

 

 他の場面も見終わったが、この場面以外に有益な情報はなかった。

 

 「マリア、《ゲストス》というのは?」

 「うちの副騎士団長です。彼が裏切り者だったなんて。」

 「裏切り者じゃないさ。最初から、送り込まれた敵だったのさ。」

 「騎士団長も殺されたのかい?」

 「騎士団長は、《パットン》というのですが、命は助かったものの、右腕を失い目も見えなくなって、今は屋敷において侍女に世話をさせています。」

 「何か話しは、聞いているかい?」

 「魔物との混戦の中、いきなり後ろから殴られ倒れたと。気がついた時は、右腕がなく目も見えなくなっていたと。」


 騎士団長には、会いに行かなくてはならないな。副騎士団長の《ゲストス》が裏切り者なら、騎士団をいいようにされてしまう。

 問題は、損傷した身体か。こちらの世界の医薬品を持ち込んで、奇跡が起こってくれればよいのだが。


 俺は、ネットで調べた結果、白内障の治療薬として有効な《カルノシン点眼薬》と、骨肉の成分を含む各種サプリメントを持ち込むことにした。効果の程は全くわからないが。


 マリアを伴い、イシスタ伯爵の城に転移する。

 すぐさま、飛んできた侍女のレイアに案内され、騎士団長のパットンの療養している部屋へ向う。

 「パットン、私です、マリアです。入ってもいいかしら?」

 「その声は、マリア様。どうぞ、お入りください。」

 部屋の中には、窓際の椅子に、思慮深げな男が腰掛けていた。

 「パットン、紹介しますわ。信じては貰えないかも知れないけど、女神クロートさまのお導きで、異世界からお出でくださった《シンジ》さんよ。私はこの方に嫁ぐことに決めました。」

 「おお、なにやら話しが飛躍していて、このパットン詳しく聞かねば、理解できませぬが、ただ、姫様が選んだお方ならば、間違いはないかと。」

 「初めまして、パットンさん。シンジと言います。この世界とは別の世界に住む者です。

 マリア姫とは婚約を交しました。そして、イシスタ伯爵のことやマリア姫が現在置かれている状況も聞きました。

 どこまでできるかは、わかりませんが、マリア姫の力になりたいと思っています。」

 「姫様の伴侶となる方ならば、それは我が主君。このパットン、只今この場にて、シンジ様に生涯の忠誠を誓わせていただきます。

 ただ、このとおり、目も見えず、剣を握る右腕も無くしております。

 しかしながら、我が全知全能を傾けてお役にたってみせますぞ。」


 「その怪我ですが、治るかどうかわからないですが、僕の世界から持ってきた薬を試させてください。」

 「おお、それは是非、お願い致します。」

 まず、パットンの顔を上向けて、《カルノシン点眼薬》を2·3滴垂らす。

 すると、目とその周囲が光輝き、その光が治まると、驚愕の表情で、涙を流しているパットンがいた。

 「姫様、見えます。見えます、シンジ様のお顔も。 

 なんと、奇跡をこの身に受けることがあるとは。

 シンジ様が異世界の方であること。パットン、しかと承知致しました。」

 「パットンさん、次はこの錠剤をとりあえず、2錠ずつ飲んでください。」

 パットンが8種類の錠剤を飲むと、なくなった右手の位置が光輝き、そしてそこに右手が現れた。

 ただ、痩せ細っている。もう2錠ずつ飲ませると、ほぼ完全だが爪が薄い。

 もう1錠ずつ追加し、パットンの右腕は完全に治った。


 

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