第四話 僕の街へようこそマリアさん その一
不定期になりますが、連載再開です。
再び、俺の部屋へ転移で戻った俺たちは、戦いに備え、装備を整えるまで、こちらの世界、つまり日本で過ごすことに決めた。
「マリア、さっきは少し言い過ぎたかもしれないけど、あの宰相は、自分のしでかした失敗を詫びようともせず、マリアの人生を狂わせたかもしれないのに、王への態度がどうとか、話にならないから、腹が立ってしょうがなかったんだよ。」
「いいのよ、私のために怒ってくれたのだもの。
でも、すっかり敵対しちゃったわね。ああいう人物なら、いずれは敵対するでしょうから、遅いか早いかの違いだけだと思うわ。」
「そう言ってくれると、ほっとするよ。」
「私はあなたに、どこまでもついていくって決めたのよ。たとえそれが私にとっての異世界であってもねっ。」
そう言って、微笑むマリアに見とれてしまった。だって、こんな綺麗な娘、この世界に居そうもないもの。
「マリア、これからのことだけどね、二人で両方の世界を行き来して暮らすことになるよ。もちろん夫婦としてね。
マリアにも領主の娘としての仕事があるように、俺にもこちらの世界での仕事があるから、時にはこの部屋で一人で留守番してもらうけど、慣れてくれば外で買い物や散歩もできるようになると思うよ。」
「ええ、そうね、今はこちらの世界のことを何も知らないから、少し怖いけど、あなたと暮らすのだから、しっかり覚えるわ。」
「よしっ、そうと決まれば、さっそく出かけてみよう。もうじきお昼だし、何か美味しいものを外のお店で食べよう。まあ、マリアにとっては初めての食べ物ばかりだとは思うけどね。」
外はいい天気だ、季節は夏の終わり、なんとなく空が澄んで、秋の気配間近なのかも知れない。
マリアを俺の愛車、濃紺のシボレーMWの助手席に乗せて、大型ショッピングモールをめざす。二度目の外出だから、マリアは車のことや、車道、歩道、信号のことなんかを知っている。
ちゃんと言ってなかったね、この街は札幌という名の街だよ。
四つの大きな島からなる日本という国の北に位置してるんだ。
春夏秋冬の四季があって、夏は暑いけど、冬には雪が降るんだ。
今は、夏の終わりだから、だんだん涼しくなっていくよ。
そんな説明をしながら車を走らせて、市内を見下ろせる公園にやってきた。
駐車場から、ちょっと登ると眼下に斜面が広がり、市内が一望できる。公園のベンチに腰掛けて、自販機で買ったジュースをマリアに、俺は、缶珈琲を飲む。
突然、「きゃっ、何かしら、小さな生き物がいるわ」 マリアの声に少し驚きながら、視線の先を見つめると、いた。
「どうやら、リスのようだね、森に住むとても臆病な動物だよ、木の実なんかを食べるんだ。」
リスは、一瞬こちらを向いたがすぐに木々の中へ姿を消した。
「なんかとても可愛らしかったわ、この世界にも野生の動物達がいるのね。
もしかして、危険な動物もいるのかしら?」
「うん、この国には少ないけど、山の奥には、大型の熊や毒を持った蛇、海の中には、大型で人を襲う鮫という魚もいるよ。」
「まあ、やはりどこの世界にも危険はあるものなのね。」
それから俺達は、ショッピングモールにやって来た。
「うわぁ、屋台がいっぱいあるようなところなのね。どれも美味しそうな匂いがするわ。」
連れて行ったのは、《フードコート》だ。
「何がいいかな、お米のご飯はカレーで食べたから、麺にしようか?」
「なんでもいいわ。だってどれも初めて食べるものでしょう?」
「そうだね、それじゃあ、ラーメンと焼きそばにしようか。二人で半分粉すれば両方食べられるしね。」
注文して待ってると、ポケットベルがなった。
《ピンポーン!》
「僕らの分ができたっていう知らせだよ。」
「へぇ、魔法みたいね。便利には違いないわ。」
マリアは、箸が使えないので、フォークなのだが、プラスチックなので使いづらそうだ。
「《もぐもぐ、》この『焼きそば』というのは、油濃いけど、この赤い野菜の辛味が合うわ。」
「《チュルチュル、》こちらは『ラーメン』だったかしら? このコクのあるスープがすごく美味しい。
入っているお肉も、信じられないくらい柔らかいの。こちらの世界にも魔法があると私は信じることにしたわ。」
どうやら、二つともお口に合ったようだ。