表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/24

第一話 王国に暗躍する影

 アルバス王国の遥か西に、砂漠とモスク(きょうかい)の国、クムール聖教国がある。

 文字通り、クムール教を国教とする宗教国である。

 今、モスクの一室では、この国の王であるバビデ教皇が、数人の覆面をした者達から、報告を受けていた。


「ほう、アルバスでは、そのような者達がおるのか。」

「はい、ブレメン侯爵を初め、武力で従えようとした勢力を返り討ちにしたそうに、ございます。」

「国王もその者達には、手を出すなと命じたそうですわ。」

「また、最近のアルバス王国での、新しき商品の数々も、その地で生み出されておるようにございます。」

「王国に歯向かうことのできる、勢力か。面白い、利用してみる価値はあるかも知れん。

 その地に、人を送り込め。例のものを使うのだ。そして、少しずつ毒を盛るのだ。じわりじわりと効くようにな。」

「はっ、そのように手配致しましょう。」



 その日の深夜、イシスタ領の警備に当っているレンジャー部隊から、緊急の連絡が入った。

 深夜、イシスタ領に何者かが侵入してきたとのこと。その数、7名。領堺に設置した暗視カメラが捉えた。

 すぐさま俺は、捕捉と尾行を命じ、侵入者の正体を(あば)くべく、接近を試みることにした。

 侵入者達は、イシスタ領に入った森の一画に潜み、朝を待つようである。俺は、転移で侵入者達の周囲に、盗聴器を仕掛けた。

『豊かな土地だな。作物が実っている。』

『そんな土地の民は、お人好しだからやりやすい。』

『まずは、酒場からだ。』


 たいした情報は得られなかったが、侵入者達は、酒場で何か企んでるらしい。

 俺は、罠を仕掛けることにした。ブルータスの酒場のうち、5軒を除き開店時間を遅くするよう手配した。

 通常どおり開店させる5軒には、警備隊長のクラウド達に私服での張り込みを指示。そして、夜を待った。


 侵入者達は、二人ずつ3軒の酒場に分かれて入り、酒を飲んでる。次第に客が増え、酔いが喧騒を生んで行く。

 頃合いと見たのか、侵入者の一人が、大声で話し始める。

『よおっ、これ知ってるかあ。これを吸って、女を抱いてみろっ。めちゃくちゃ気持ちいいし、女もめろめろになるぜっ。』

 客を装ったクラウドが話し掛ける。

「それ、ほんとかよ。そりゃなんだ? おめぇ達、見ない顔だな。どこから来た?」

『俺は、西方の国から来た商人さね。これは向こうで仕入れた精力増強の秘薬さね。どうだね、一つ使って見ないかね。』

 アヘンの(たぐ)いだ。〘捕縛しろ、確保だ。〙無線で指示を出す。一斉に私服の警備隊員が侵入者を捕らえる。

 他の店の二組も同時だ。そして、残りの一人にも。


 捕らえた男達と女1名を尋問しても、何も喋らないので、あることを試すことにした。

 クラウドが言うには、酒場で話した相手には、クムール聖教国の訛りが感じられたというので、クムール教の教典を用意し、彼らに踏むように命じたのだ。そう、踏み絵の2番煎じだ。

 案の定、誰一人踏むことをしなかった。宗教というのは、まったく個人の命より重いから厄介である。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ