第八話 ファッションの街〘クロート〙そのニ
結局昨日は、ケアラとレイナを、俺の部屋に泊めることになった。
マリア曰く、「転移させても向こうの世界では、時間が経過しないから、すぐ連れ戻すことになるわ。そうすると、私とシンジさんは、寝てるからいいけど、ケアラとレイナは、睡眠が取れないままになるのよ。」
ご高説、もっともでございます。なんだか、俺より転移について、詳しくなってるような気がするけど、文句は言えない。
ということで、泊まらせたのだが、軽くビールと乾物と干した果物のつまみを出したら。
「このチータラ、ビールのつまみに最適ですね。」
「それより、干したブドウとかパイナップルとか、驚きですよね。干すとこうなるとは。」
「私は、このさきいかが、気に入りましてございます。柔らかくて、噛めば噛むほど味が出て参ります。」
「この小さな魚のみりん干が、断然いいわ。」
皆さん、なかなか通なこと、おっしゃってます。ビールが無くなると、酎ハイに移行して、酔っぱらいの会話です。
「だへど、このへかいは、ぶんへいがすすんへいまふね。」
「そふよ、ようへふが、すへきだは。」
意味不明なので、以下割愛。結局三人をダブルベッドに寝かせ、俺は、居間のソファで寝た。
休日だが、出勤時間に目が覚める、悲しい習性がついている俺は、起きて来ない三人をしり目に、朝食を作ることにする。
クロワッサンのパンがあるから、スクランブルエッグとソーセージを焼く。レタスとトマトのサラダ。ドレッシングを三種類、玉葱ドレッシングとゴマドレッシングとコールスロー、それにマヨネーズで、好きなのを選ばせる。
飲み物は、紅茶がいいのかな?レモンティーとミルクティーを用意する。俺は珈琲だけど。
台所でドタバタやってたら、三人が起きてきた。
「おはようございます。夕べはご迷惑をお掛けしたみたいで、申し訳ございません。」
「おまけに、旦那様を押し退けて、奥様とのベッドに寝てしまい、お詫びの言葉もありません。」
「はははっ、別に気にしてないから。謝らなくていいよ。それより、今日も買い物で忙しいよ。早く顔を洗って、朝ごはんだよ。」
三人は、朝から姦しい。
「このクロワッサンは、ふかふかで甘みがあって、美味し過ぎますわ。」
「スクランブルエッグにケチャップ、それにソーセージ、王家の朝食のようです。」
「サラダにいろいろなドレッシング、どれも素晴らしい美味しさでございます。
それにこの紅茶、王家の茶葉にも劣らないかと推察致します。」
さて、昨日の続きで、ショッピングモールにやって来た。
今日は、紳士服、子供服の順に選んでいく。
紳士服は、背広とかYシャツはパス。トレーナーや作業着を選んでいく。
子供服は、サイズいろいろを選択。生地はあちらの世界に近いものを選んだ。
ふう、4時間経過。あとは、三人のお買い物だ。俺はパスして、珈琲ショップで休憩だ。
マリアに携帯電話を買ったから、連絡の心配はない。スマホは、操作が面倒なのでやめた。
珈琲ショップで珈琲を2杯お代りして、やっと三人が戻って来た。女性の買い物は長い。
でも、三人ともとても笑顔で、嬉しそうだ。
「ごめんなさい。待たせてしまって。あなたの服も選びたかったけど、時間がかかるから、今度にしたの。」
「ああ、構わないよ。俺の服はあるから。」
「旦那様、素適なお洋服を買っていただきました。まさか、このような奇蹟に巡り会うとは、お嬢様がお生まれになって、乳母になってほんとうに幸運でございました。」
「私も若奥様の侍女になれて、それだけで幸せでしたのに、最高の旦那様を連れて来られて、こんなお買い物ができるなんて、夢のようです。」
「二人は、頻繁には連れて来られないけど、また次の買い物もあるし、この世界のことはあまり広めないように頼むね。
向こうへ帰る前に、昨日とは違う夕食と行きますか。」
「「「わぁー、楽しみ。」」」
取り敢えず、〘ファッションの街クロート〙のためのお買い物ツアーの打ち上げということで、三人をホテルのバイキングにご招待した。
ここなら、和洋中華料理が一通り楽しめるはずで、日本の食事が名残惜しい二人にも満足してもらえるだろう。
おまけに、ここのホテルのバイキングの売りは、デザートのバイキングメニューだから、彼女達には最適に違いない。
バイキングのシステムを教えると、三人は楚々くさと、料理を取りに向かった。
俺は、食前酒にシャンパンを人数分頼み、おもむろに料理を取りに行く。
ご飯は炊き込みご飯があるな。やっぱりステーキは欠かせないと。肉じゃがいいね。ラザニアに小籠包、シーザーサラダを少し。スープはポタージュにするか。取り敢えず、こんなものか。
席に戻ったのは、俺が一番早かった。少し遅れて、三人が戻って来た。両手の皿に料理が山盛りだっ。
「そんなにたくさんじゃ、一回でお腹いっぱいにならないか?」
「大丈夫ですっ、この機会を逃す訳には行きませんっ。」 レイナは、なぜか鼻息が荒い。
「皆、お買い物、ご苦労様でした。これは、シャンパンというお酒だけど、アルコールは低いから安心して飲んで。乾杯だ。」
「「「「かんぱい」」」」
「それにしても、まるで宮廷の晩餐会のような豪華なメニューでございますね。」
「あらケアラ、それより豪華だと思うわ。」
「確かに、どのお料理も一品一品が食べたことのない美味しさです。」
皆、口に入れては、目をみはり、無言で夢中で食べている。あっと言う間に平らげると、お替りを取りに立つ。
「デザートのコーナーもあるから、見て来るといいよ。」
「先程、下見を致しました。デザートは次回で、十分にございます。」
あっ、そう。それにしてもケアラは、ダイエットを放棄してるね。レイナはたくさん食べて、育ってほしいけど。〘特に胸とか。〙
三人は、料理をほぼ全種類味わったあと、デザートも完全制覇していた。
そんなこんなで、俺達のショッピングツアーは、一回目の幕を閉じました。




