第四話 新婦マリアの新婚ライフ
私はその日、シンジさんと神殿で結婚の誓いを行い、夫婦になりました。
幼い頃から、あこがれ夢見た《花嫁》に、私はなったのです。よく理想の男性を〘白馬に乗った王子様〙などと例えますが、私の旦那様は、それ以上の方なんです。
なにせ、異世界の方。しかも私もちょくちょく彼の世界におじゃまします。
え〜と、結婚した日の夜の話なんですが、家臣達の任命式のあと、舘の皆でパーティーをしたの、食事とお酒でね。
皆がシンジさんと私に話したがって、たいへん!。
それでも、ほとんどの皆と話し終えて、酔い始めている人達もいたから、私達は寝室へ引き上げたの。え〜、それは緊張してましたわよ。初めて抱いて貰うのですから。
でもね、それは〘カラ回り〙。寝室に着くと、
「マリア、僕達の家に行こう。」そう言って、シンジの家に転移したの。
なんで、カラ回りか、ですって? だって、着いたら、
お昼くらいの時間なんですもの。夜まで、お預けだわ。
べ、べつに急いでないけど。
シンジさんの家で、日本の服装に着替えて、お出かけですって。行き先は、神社。こちらに世界の神殿ね。こちらでも、神様に結婚の報告をするみたい。
大きな神社だわ。広い境内という敷地の中を、二人で腕を組みして歩いて行く。ちらほら行き交う人もいるけど、鳥の声がするし、とても気持ちが落ち着くところね。
拝殿にたどり着くと、シンジさんに教えられて、ニ礼ニ拝一礼。そしてこちらの神様にも、報告とお願いをする。〘シンジさんといつまでも、二人仲良く暮らせますように〙。
お参りを終えると、「お昼ご飯を食べに行こうか。今日は、お米や麺じゃない変わったものだよ。」そう言って、笑ってる。笑顔が素敵っ。
「ええ、いいわ。早くこの世界の食べ物を知らないと、美味しいものを選ぶことができないわ。できれば一回ニ食たべたいくらいよ。」
「おいおい、そんなことをしたら、スタイルの良い俺の奥さんが、タヌキさんのお腹になってしまうね。は、は、は。」
「あら、あなたは私のスタイルが悪くなったら、嫌いになるのかしら!」
「降参、降参。どんなきみでも愛し続けるって、誓ったばかりなんだよ。いじめないでくれっ。」
勝ったわ。これで大食いの権利を勝ち取ったわ。まあ、そんなに太るつもりはないけど。
シンジさんが連れて来てくれたのは、ショッピングモールの飲食店街の〘お好み焼き〙というお店でした。
「タコ焼きと、イカのお好み焼きと、モダン焼きをください。」
「まぁ、この鉄板で焼くのね。楽しみだわ。」
「小麦粉を水で溶いて、キャベツの千切りとお好みの具材を入れて焼くんだ。だから、お好み焼き。
タコ焼きは、タコの具材だけの小さいお好み焼きだけど、まん丸で食感が違うよ。
モダン焼きは、お好み焼きの具にさらに焼き蕎麦が入っているんだ。」
シンジさんがカップに入ったお好み焼きの材料をかき混ぜ、鉄板の上に流した。ちょっと焼けて片面に皮ができると、ひっくり返して少し上から押さえて焼けてきたら、ソースとマヨネーズと青海苔をかけて出来上がり。
「ねぇ、ねぇ。私にもさせてっ。」
「うん、じゃあ、このモダン焼きをやってみて。蕎麦はお好み焼きの片面を焼いている時に上に乗せるんだよ。」
「お好み焼きができたよ。さあ食べてごらをん。」
シンジさんが切り分けてくれたお好み焼きを、〘ふぅふぅ〙しながら口に入れる。
「う〜ん、美味しいわ。ふくらんでいないパンみたいに思ったけど、具材が入ってパンとは別物ね。イカってこんなに美味しいのね。」
モダン焼きをひっくり返すのを失敗しちゃったわ。シンジさんが直してくれたの。
「モダン焼きもできたよ。」お店の人がタコ焼きも運んできた。
「あら、焼き蕎麦が入っていると、ずいぶん味が変わるわね。タコ焼きの方は、ふんわりしていて、いくらでも食べれそう。」
食べたのは、合計三人前だけど、私が1.7人前くらい食べちゃったわ。私と食事するとシンジさん痩せちゃわないかしら、ちょっと心配。
うふふっ、食事のあと、宝石店に行ったの。
ペアのエンゲージリングを買ってもらちゃったわ。本当は、結婚式の前にあげたかったけど、私の指のサイズが分からないから、ごめんね。
そう言って謝ってくれたけど、全然構わないわ。だって私の世界では、そんな習慣ないんですもの。サプライズですわ、とびっきりの。
そして夜。ここからは、黙秘ですわ。
ただ、シンジさんは、とてもとても優しかったの。私は、毎日抱いてもらいたいと思ったの。それ、普通よね?




