第12話 休日の過ごし方 その三
動物園をたっぷり3時間堪能したので、次の目的地へ移動です。高速道路を使って1時間程のところにあります。
昼食の頃合いだけど、レストランに入ると時間が掛るし、給料日前なので、ドライブスルーハンバーガーで、時間とお金を節約だ。
マリアは、ドライブスルー初体験を喜んでいるよ。
「まあっ、注文の時、お店の人と話したのは、この世界の魔法よね。
それにしても、このチーズバーガーを選んだあなたは、私の好みを当てる魔法を使ったのかしら。」
「そんなことないよ。単に、俺の好きなのを選んだだけだよ。他のハンバーガーも食べてみたら、もっと気に入るのが、あるかも知れないよ。」
次の目的地、日帰り温泉の〘古代の湯〙に着いた。
ここは、直径2メートル もの杉の丸太を柱にして、古代の原始林をイメージしている浴場が売りなのです。
受付で湯上りの浴衣を受け取り、男女の浴場の入口で、1時間後に待合せの場所を、ゲームコーナーの隣の休憩室として、別れました。
「温まったわっ。いろんな湯船があって、お湯の温度もいろいろあったの。
薬湯の湯は、薬臭くてすぐ出たけれど、泡の出てる湯船は、気持ちが良くて寝てしまいそうだったわ。」
「洗場のシャンプーとか、ちゃんと使えたかい? ボディシャンプーとか迷わなかった?」
「大丈夫よ、隣の人が使うのを見てたから!」
「サウナとミストの部屋があったのは、気がついた?」
「ええ、両方とも入って見たわ。でも、露天風呂の方がゆっくり温まることができたわ。
上からお湯が落ちて来るところなのだけど。何かなと思っていたら、おばあちゃんが入ったのを見て、わかったの。
肩とか腰とかのマッサージになるのね、やって見たけれど、私には強すぎたわ。」
「うん、結構楽しめたようだね。お風呂に入ると喉が渇くし、飲み物でも飲んで休もうか。」
「ね、ね。私あれがいい!この前のとっておきのあれ。」
「ああ、ソフトクリームだね。イチゴやチョコレート味もあるけど、何にする?」
「チョコレートも食べてみたいけど、バニラが食べたいの。」
リクエストにお答えして、バニラとチョコのミックスにしたよ。マリアの満面の笑みが正解だったと証明してる。
〘古代の湯〙のある街は、俺が以前、近くに住んでいたことがあるので、街の情報には事欠かないのです。
俺のこよなく愛するラーメン店や、好みのスープカレー店、落ち着ける蕎麦屋、独特なタレが旨い焼き肉屋、居酒屋の雰囲気でリーズナブルなイタリアンレストランと、選択肢は豊富です。
だけど、今回は決まってます。ここまで来ないと食べられないラーメン、〘羅漢太〙本店です。
「マリア、この前ラーメンは食べたと思うけど、俺が大好きなラーメン店が、近くにあるんだ。少し早いけど、夕食はラーメンでいいかな?」
「ええ、もちろんいいわ。この前食べたラーメンの味は忘れられないの。それより美味しいラーメンがあるというなら、食べない訳にはいかないわ。」
〘古代の湯〙から〘羅漢太〙までは、車で10分もかからない。店内に入ると、大食いチャレンジのポスターが、貼ってありました。
「あら、60分以内に特大のラーメンを食べたら、無料ですって。どのくらいの量なのかしら?」
「5人前位らしいよ。大食いに自信がある人が挑戦しているけど、ほとんどの人は無理みたいだね。
ところで、おすすめは、チャッチャ系の味噌ラーメンか、ピリ辛の担々麺だよ。二つ頼んで半分粉しようか。」
「それがいいわ。両方食べてみたいもの。」
『お待ちどう様、チャッチャ系の味噌と担々麺です。お熱いので、お気を付けください。』
「マリアは、味噌ラーメンから食べるといい。その方が味が良くわかると思うよ。」
「ふぅふぅ。むっ、スープは濃厚なコクがあるわ。あなたが、好きと言うだけはあるわね。入ってるお肉も、信じられないくらい柔らかくて、スープの味と合って、とても美味しい。」
「それじゃあ、今度は担々麺を食べてごらん。ちょっと辛いけど、それが美味しいんだよ。」
「チュルチュルっ。そんなに辛くないわ。こちらもコクがあるわね。辛さが美味しさになっているわ。どちらも病みつきになる味よ。」
マリアさんは、大食いだね。俺の分がなくなっちゃうよ。
仕方がなく、味噌ラーメンを追加注文した、俺でした。
帰りの車の中では、満腹と一日の疲れで、〘 眠れる森の美女 〙と化したマリアさんがいました。




