総司令官と絶対神
とある異世界の惑星『ライフ』。
ゴットフリート地区の首都、ライフシティ地下の本部で
一人の男が山積みの書類にハンコを押し続けていた……。
・・・・・・。
「あーもうなんだよこれ!!」
俺は『ミクサ・アルバティアン』。軍の総司令官を務めている。
俺は今日も山積みにされた書類に印鑑を押し続けていた。
「……って!やってられっかあーっ!!」
俺は持っている紙切れを机に叩きつける。
この書類の量、尋常じゃない。
なぜならそれが、俺の身長ぐらいあるからだ。
これは今日中には終わらない。
……そう悟った俺はこっそり本部を抜けることにした。
・・・。
「案外、今日はすんなりいけたな。」
俺は近くのコンビニに寄っていた。
簡単に抜け出せたからか、罪悪感が少しした。
……でも、あまり気にしないでおこう。
「さーて、何買うかなー。」
俺はコンビニに入ろうとする。
……すると。
グオオォォォオオオオオオン……
「……っ?なんだ?……ってうおっ!?」
突然目の前に黒い渦が現れる。
油断していたこともあってか、俺は突然現れた渦に
なすすべなく吸い込まれてしまう。
「うあああああああああああああ!?」
視界が暗くなる……。
・・・・・・。
(……ぅ、うぅ。)
俺は目を覚ました。
「…………。」
俺が目を覚ますと、まず飛び込んできたのが……白。
白。白。白。
辺り一面真っ白の空間に俺はいた。
「……どこだここ。」
いやまて。俺はコンビニに寄ってドアに入ろうとしていた。
それで、黒い渦に吸い込まれて……。
「やっと起きた。やれやれなのです。」
「……っ!?」
すると突然、声をかけられる。
俺は飛び起きて身構える。
「ああ、構えなくてけっこうです。僕達は敵じゃありませんので。」
俺の目の前には、10代ぐらいの少年がいた。
ジャージの片方がなびいているところから、片腕がないと俺は悟る。
「自己紹介をしておきましょう。
ボクはリリースです。家名みたいなのはないです。
宜しくお願いします。」
「……お、おう……。」
丁寧に自己紹介をされ、一瞬戸惑う。
……そう俺が少年と話をしていると。
「なんだリリース。どうかしたか?急に呼び出して。」
今度は王冠をかぶったちょっとチャラめの少年が現れた。
本当に現れたのだ。瞬間移動でもしたかのように。
「うん。リスト、みんなをここに連れてきて欲しいのです。」
「ああ了解わかった……。って、そこのやつ……誰?」
「あ。そういえば名前を聞いていませんでした。てへぺろり。」
そういうと二人がこっちを向いて自己紹介を求める。
「ああ……。えーと、俺はミクサだ。軍の総司令官を務めている。」
「へえ……?とんだお偉いさんがこの世界に転がり込んできたわけだな。」
二人の言っている意味が分からない。
すると、片腕がない……リリースと言ったか。
そいつがコソコソし始めた。
「(…………えぇはい。……へ?…………はぁ。了解。)」
するとリリースがリストと呼ばれた少年に耳打ちする。
二人はかなり困惑しているようだ。
「おまえ、マスターの世界の奴じゃないな。今俺の『リスト』を
見たが、ミクサなんて名前ありゃしない。」
「しかもあなたをマスターはとてもよく知っているようです。
あなた……一体何者なんですか?」
(それはこっちが聞きたいわ!!)
何々なんだよ!?こっちも聞きたいことがありすぎて困惑
してるんですけど!!
そう俺が思っていた矢先、突然。
「話は聞かせてもらったよ。」
「……おお?皆さん、呼んでないのに来られましたね。」
五人の少年たちが現れた。
これまた瞬間移動で。
「いやぁ。指令領にくるのは久しぶりといったところか。」
「そうだな。」
少年たちはこの場を懐かしむようにそう呟く。
俺はその五人の様子を伺う。……すると、見覚えのある顔がひとつあった。
「……!イデアルじゃないか!」
「……えぇっ!?」
青い軍帽に青の軍服。まさにあれは俺の古き友人だ。
最近あいつが忙しいと言って会えていないからか、妙に懐かしい。
俺はイデアルに話しかけようとする。……って、ん?
イデアルの身長が低い……っていうか子供っぽいな。
……いや。子供。十代の子供だ。
「……す、すまん。人違いだ……。」
「……ええっと、僕、イデアルですが……。」
この制服、たしかにイデアルのものだが……雰囲気が
まったく違う……。絶対人違いだ。
「……ますます困惑しそうです。ダイさん、
状況整理の魔眼を発動して頂けますか?」
「・・・。開眼。」
するとリリースが、ダイと呼ばれた包帯頭の少年に
魔眼がどうこうと話す。
するとダイは、目を見開き、紅くその色を染め上げる。
(…………!)
すると、ダイが見たところに映像が浮かび上がる。
映像の内容は……。…………。
(俺じゃん!!)
俺が渦に吸い込まれてからここに来るまでの一部始終であった。
俺が書類を放り出し、少ししてコンビニに着き、
中に入ろうとしたところを渦に吸い込まれる。
……終わり。
「ほむ……。総司令官の仕事をすっぽかしてコンビニですか。」
「お前、よくそれで仕事が務まるなぁ。え?」
「……いやいや二人とも、そこじゃないでしょ。」
グサグサと二槍ぐらい突かれた気がしたけど、気にしない。うん。
リリースとリストの二人を、王冠をかぶった真面目そうな少年が
指摘する。
「この人、ミクサさんはこことは別の近未来世界に住んで
いるようですね。
そして、ここに繋がる簡易型の渦……または現実との狭間が
突然現れてここに来てしまった……と。
あの渦は別世界にたまに現れるものなので、ミクサさんは
偶然あれに吸い込まれてしまったのでしょう。」
(う……うん……?)
分かったようで分からない。
さらに聞きたいことが増えてしまった。
「これは長くなりそうです。なので、必殺奥義を使います。」
「……あ。ありましたね。そういえば。」
俺がさらに困惑していると、少年たちが説明し始めた。
かくかくしかじか……(必殺奥義)
「つ、つまり、君たちは、俺からして別の世界の絶対神であって、
元の世界に戻そうとしている。早くしないと、この世界の
住人になってしまう……と?」
「はいそうです。はい。」
話が突然綺麗にまとまった気がしたが、今はそんな場合ではない。
このままだと、帰れなくなってしまうと言う事だ。
俺には家族がいる。軍のこともある。
これはだいぶヤバい状況だぞ……。
だがこの少年たちは、この世界の絶対神らしい。
にわかに信じがたいが、ここは彼らに任そう。
そう思っていると、またリリースがこそこそし始める。
「(……はいはい。……。むむ……。それは……。……了解。)」
するとリリースがこちらに来るようにと、誘導し始めた。
この白い世界に、何があるっていうんだ……?
・・・。
「………!」
俺が誘導されて着いたところ。そこには、巨大なテレビが浮遊してあった。
「マスター。連れてきましたけど……。」
『……ごくろうだったね。』
そのテレビから声が響く。画面には、『unknown』とだけ
書かれていた。
『ミクサくん。……ああ。あの記憶は無いみたいだね。』
「……?」
『……自己紹介が遅れた。僕は現実の空間で、この世界全てを
操っている者だ。当然、そこにいるリリースたちも僕が操っている。』
「……!?」
威圧がかけられ、声が出ない。が、俺は声にならない声を上げる。
『だけど、君は操ることができていない。なぜなら、君の所有権が
別の人物にあるからだ。』
「…………。」
『その人物の名前は……っと危ない危ない。
その人物の名前は言えないけど、今帰ることが出来れば
君はいつもの生活に戻ることができる。』
「……っ!?」
すると、俺の体が淡く光る。
体が少しずつ薄くなっていく……。
『もう少し話していたかったけど、ここまで。
続きは……。君のマスターにでも話をつけとくよ。』
(ま、まってくれ!マスターってなんだ!?
それにお前は……!)
『……もう時間切れだ。ミクサくん。
それではまた、会える日まで。』
(っ……!)
視界が真っ白になる……。
・・・・・・。
「う……うぅ……。」
俺は目を覚ます。
いつの間にか、コンビニの裏に俺はへたり込んでいた。
「あれは夢だったのか……?」
俺はそう思う。
ふと、手元をみると……
「……ん!?」
八つの手紙が俺の手に握られていた。
「……夢じゃ、ない。か……。ハハ……。」
俺は今までのことが夢ではないと悟る。
俺は急に面白くなって、その場で笑った。笑い続けた。
・・・。
あんなことがあってから俺は、また総司令官としての仕事を
こなしている。
……たまに、俺の友人であり大佐のイデアルに説教されたりするが、
俺はこの世界が好きだ。
でも、またあの少年たちに会って見たいと思うこともある。
そう思ってまたあのコンビニに寄ろうとする。そして、
イデアルに見つかり捕まる日々がまた始まるのを、俺は
複雑な気持ちで受け入れた。
???「八人いるのに全員登場していないとは何事だ!!」