双葉、家族に正体ばらすッ!
双葉は硫酸の瓶を持ったまま震えていた。そして自分の頭に、それの中身をぶちまけようとした。正に絶体絶命というこの時に、双葉はニヤッと笑った。
「どうしましたですか?」
ミリーは、気でも触れたのかと心配そうにしていた。しかし、双葉は冷静だった。そして彼女の方を見ると、突然、腹に力を入れた。
「んぐ・・・・」
双葉は口からジェリースライムを吐き出すと、それを手掴みで捕まえた。
「こいつ、いつの間にか、口の中に入っていたみたいなんだ。俺を操ろうとしたのは良い度胸だが、相手が悪かったみたいだな。結城家の人間は、自身の体をコントロールできる。こんな奴に操られたりなんてしない」
双葉はジュリースライムを意地悪そうに見ると、それを硫酸の瓶に入れてしまった。
「ぶぎゃあああ」
耳障りな奇声とともに、ジェリースライムは煙を出し、そのまま蒸発してしまった。
その後、双葉とミリーは理科室の窓から、こっそりと外に脱出、そのまま校門を抜けて、学校から退散したのだった。
家に戻った双葉とミリーは早速、茶の間にて尋問に掛けられた。ちゃぶ台の上には、刑事が取り調べで使うようなライトが置かれており、父の厳と、妹の若葉、そして兄の松葉は学校で既にいなかった。最も、若葉も学校のはずなのだが、これを理由に休んだらしい。
「さて、君は、あくまでも、自分をわしの息子、双葉であると主張するのだね?」
「だから、何度も言っているだろ。俺だよ。クソ親父」
双葉は愛らしい外見からは想像もつかないほどの、ドスの利いた声で、厳に叫んだ。
「ううむ、確かに、この喋り方は双葉そのもの・・・・」
厳は腕を組んで何やら難しい顔をしていた。そこに、今度はミリーが口を挟んだ。
「私が、双葉さんをこんな姿にしてしまったのです。実は、私、この星の人間じゃなくて・・・・」
「もういい」
双葉は余計に事態を悪化させるであろうミリーの口を塞いだ。そして若葉と厳を交互に見比べた。
「ふん、実の息子も分からないなんて、何て家族だ」
「じゃあ、証拠を見せてよ」
突然、さっきまで黙り込んでいた若葉が口を開いた。そして双葉の元にグイグイと詰め寄ってきた。
「な、証拠って?」
「確か、お兄ちゃんのお尻には、ホクロがあったはず」
「それじゃ。早速見てみよう」
「はい?」
厳と若葉は手をワシワシと怪しげに動かすと、そのまま双葉に飛び掛かった。
「おい、馬鹿か。止めろよ・・・・」
双葉は必死に抵抗するが、あっという間にパンツごと脱がされ、うつ伏せに押さえつけられると、尻にある、小さなホクロを二人の前に晒した。
「うおお、正しく。ワシの息子、双葉じゃあ」
「本当だね。やっぱり、あたしの勘は正しかったんだね」
互いに喜び合う二人はさておき、双葉は顔を真っ赤にし、突然、台所から包丁を持ってくると、それを振り回して、二人に襲い掛かった。
「この、よくもやりやがったな」
「落ち着け、双葉よ。これでお前のことを信じるから」
「む、本当か?」
「ああ、だから、今夜はワシと・・・・」
「ワシと?」
「一緒にお風呂に入るぞ」
厳は嬉しそうに言った。双葉は口をあんぐりと開けたまま硬直した。さらに今度は、若葉が無理矢理割り込んできた。
「やったああ、お姉ちゃんずっと欲しかったんだ。よろしくね。双葉お姉ちゃん」
「うお、お前まで・・・・」
少し危ない家族の、危ない日常が始まろうとしていた。ちなみにいつの間にか、ミリーは結城家に当分の間。世話になることとなっていた。