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サマーデイズその3

「くそ、このままじゃ・・・・」

 双葉は後ずさると、背後から見覚えのある日本刀が飛んで来た。慌ててそれをキャッチすると、そこにはミリーが立っていた。

「ミリー・・・・」

「私もこちらの世界に来ました。さあ、決着を付けましょ」

「おう」


 双葉は静かに刀を鞘から抜いた。すると、白い輝きが彼女の全身を包んだ。胸や尻が僅かに大きくなり、鋭い目つきになっていた。そしてそれを神崎稔に向けた。

「馬鹿な真似は止めろ。この世界にいれば、悩みなどは全て無くなるんだぞ」

「うるさい。俺にとっての幸せは、いつもの日常に帰ることだ」

 双葉はゆっくりと、稔との距離を少しずつ詰めて行った。そして稔に向かって走って行った。


「これで終わりだ」

「馬鹿な止めろ」

 稔の右腕が変形し、肉塊の槍に変化していた。稔はそれで双葉の胸を刺そうとしたが、双葉はそれを素早く避けて、稔の右腕を切断した。

「ぐおおお」

 稔は斬られた腕を押さえて蹲った。見た目が城所斗真なので、罪悪感は伴うが、ここで引くわけには行かない。双葉はさらに刀を振り下ろした。

「無駄だ。俺は不死身なのだぞ」


「何?」

「不死身なんだ。この俺が本当の稔だと思っているのか?」

「それは・・・・」

 双葉は一瞬、躊躇したが、ミリーが背後から力強く答えた。

「双葉、大丈夫です。確かに神崎稔を殺すことはできませんが、二度と私達の世界に来れないようにすることはできます」

「そうらしいぜ。稔」


 双葉は刀を構えると、それをそのまま稔の右肩から左脇腹にまで斜め一直線に切り裂いた。

「がは・・・・馬鹿な。永遠を行きたいとは思わないのか」

「永遠なんかいらないよ」

 城所斗真の姿をした稔は、そのまま背後に倒れて動かなくなった。ミリーは双葉の肩を後ろから叩いた。

「今です。神崎稔が来る前に、帰りましょう」

 ミリーは双葉の肩に触れたまま、青い光を放ち、そのまま現実世界へと戻って行った。


 その後、双葉はいつもの日常に戻った。結局、ミリーは双葉を男に戻せず、その代わり、双葉を元に戻すまでは、結城家で暮らすこととなった。


「うああああ」

 稔は誰もいない町で独り叫んでいた。彼の望んだ永遠の世界は、所詮は虚構だった。彼は文字通り不死身であったし、もうこの世界に、彼を殺そうとする敵は一人も存在しない。しかし、それが却って彼の精神を追い詰めて行った。誰もいない。年も取らない。稔は人として死ぬことすらできず、毎日、変化しない小さな町で、孤独に生き続けなければならなくなった。


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