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サマーデイズその2

結城家の玄関の前には、西園寺勤が花束を持って立っていた。

「ああ、双葉さんおはよう」

「あ、おはよう」

双葉は信じられないという表情で、勤の姿をまじまじと見つめていた。


「おほん。双葉さん行こうか」

勤は双葉の手を握ると、やや強引に引っ張った。その時、彼女の脳内にミリーの声が語り掛けて来た


「双葉、双葉、聞こえますか?

「ミリーか。お前何処に?」

「あなたの部屋にいます。と言っても、現実世界の方ですが」

「現実って。ここは何処なんだよ」

「落ち着いて下さい。そこは意識の世界です。人の意識というのは、時に世界を構築する力があります。ある人間が、あなたに強い未練や憎しみなどの、偏屈な感情を抱いたが故に誕生した世界です」


ミリーの声が徐々に熱を帯びて来た。

「どうすりゃ良いんだ?」

「私の推理では、あなたにここまでの強い感情を抱いているのは、恐らく神崎稔しか考えられません。見定めるのです。この世界で死んだ者は、二度と現実に帰ることはできない。絶対に死んではならない」


ミリーの声はそこで途切れた。同時に双葉の手を掴んでいた勤の足が止まった。

「双葉さん、遊園地でも行こうか?」

「ふん、そうだね。但しお前一人でな」

双葉は勤の顔を思い切り殴り飛ばした。彼はそのまま背後に吹っ飛ぶと、電柱に激突し、そのまま気を失ってしまった。


「酷いことするね」

双葉の背後に城所斗真が現れた。彼はニタニタと嫌らしい笑みを浮かべていた。

「死者が喋るな。どうせ神崎だろ?」

「何を言っているんだか。それより、救急車呼んだ方が良くないか。アイツ、頭をぶつけたみたいだ」

「な、何言ってやがる。お前は神崎じゃないのか?」


戸惑う双葉に、斗真は笑って返した。

「ああ、そうだよ。でも、君と争うつもりはない。ここで、君と一緒に暮らそうと思ってね。死ぬこともない。老いることもない。この世界で」

「冗談じゃない。お前だけで暮らしてろ」

双葉はポケットからナイフを取り出すと、斗真に斬り掛かった。彼はそれをヒラリと避け、双葉の腕を掴んだ。


「くっ」

「細い腕だ。しかし程よい肉も付いている。美味しそうだ 」

斗真は舌を突き出すと、双葉の腕を、舌の先で軽く舐めた。

「うあ、気持ち悪いんだよ。この変態野郎」

「良いね。その言葉凄い好きだよ。もっと言ってくれ」


双葉は強引に斗真の手を振り解くと、サッと彼から距離を取った。背筋に寒いものを覚えていた。

「来るな」

「酷いな。君の可愛いお口は、僕のをしゃぶるために付いていると言うのに。これではあんまりだ」

斗真は双葉にゆっくりと迫っていた。

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