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夜光島の謎その3

「おい、これからは僕がリーダーだと言ったな。まずは、そうだな~」

 公平は顎に手を当てて何かを考え込んでいた。それを見て双葉の眼が鋭くなった。

(懐中電灯を奪い取るのは今がチャンスか・・・・)

 双葉は音も無くゆっくりと足を上げた。その時だった。突然、綾香が公平に向かってぶつかり、彼の手から懐中電灯を奪おうと試みた。

「綾香だめだ・・・・」

 双葉は叫ぶが、時すでに遅く、綾香は公平に腹を蹴られて双葉の方に倒れ込んだ。

「はあ・・・・はあ・・・・止めろ。変な気を起こすな。今、良いことを考えているんだから」

 公平は息を荒げると、懐中電灯を大事そうに抱きしめた。


「痛たた・・・・」

「大丈夫、綾香?」

「ええ・・・・」

 双葉は綾香をミリーに任せると、公平を睨み付けた、そして彼の前に右手を突き出した。

「返せ。これが最終勧告だ。もし返さなかったら、俺は本気になるぜ」

「リーダーは僕だと言ったはずだ。言うことを聞けないなら」

 公平はポケットからマッチの箱を取り出すと、そこから一本取り出してその場で火を点けた。

「この小屋を燃やす」

「本気か?」

「ああ、これで全部焼いてしまえば、警察も俺らに対する疑いを持たないだろう」

「放火の罪は重いぞ」

「黙れ」


 公平は叫ぶと、マッチを人差し指と親指で摘んで、火を床に向けた。

「止めろ・・・・」

「じゃあ、僕の言うことを聞くんだ。良いな?」

「分かった・・・・」

「分かったじゃない。返事は「はい」だ」

「はい」

「良いだろう」

 公平は紐で掛けたカメラのレンズを双葉に向けた。

「何の真似だ?」

「僕は凄く運が悪い。しかし、ここで幸運を手にするんだ。おい、双葉ちゃん。ここで着ている物を全部脱げ・・・・」


 公平の発言に双葉の顔が歪んだ。背後でそれを聞いていたミリーと綾香は、心配そうに双葉の後ろ姿を見守っていた。

「早くしろ・・・・」

「お前がそんな奴だとは思わなかった」

「うるさいぞ。早くしないと、本当に燃やすからね」

「くそ、分かったよ」

 双葉はミリーと綾香の方をチラッと見た。

「恥ずかしいからさ。あっち向いてて」

「双葉、ダメです」

「そうよ、止めて・・・・」

「大丈夫だよ。最後は勝つから・・・・」


 双葉はシャツのボタンを一つ一つ丁寧に外し始めた。公平はカメラを回して、その映像を撮影していた。双葉はブラを着けていなかったので、服の下はすぐに彼女の裸体となっていた。次に公平は下も脱ぐように指示した。双葉はやはり反抗せずに、大人しくGパンを脱ぐと、パンティー一枚になった。

「これで良いだろ」

「ダメだよ。下も脱がなきゃ」

「ちっ・・・・」

 双葉はパンティーも脱いで床に置いた。

「反抗的な眼が気に入らないが、とりあえず両手を頭の後ろで組め」

「くっ・・・・」

 双葉は全裸のまま両手を頭の後ろで組んでいた。ミリーと綾香は真っ暗なため、彼女の姿を見ることは無かったが、綾香は自分で無いにも関わらず、一人ですすり泣いていた。しばらくして、公平はドアを開けると、自分が先頭になり、懐中電灯で外を照らした。


「さあ、行くぞ。へへへ、良いモノ見たな」

 公平は最早別人のように変わり果てていた。双葉はミリーと綾香を連れて小屋から一緒に出た。そして公平の後を付いて行った。

「ゥゥ・・・・双葉」

「泣くなよ。泣きないのはこっちだぜ」

 双葉は綾香の頭を撫でながら、彼女を泣き止ませようと必死だった。それを見て公平が振り向き様に言った。

「クラスの人気者のヌードは最高だったな。なあ、双葉ちゃん」

 双葉はそれには答えず、ひたすら綾香を励ましていた。そして一同は山を下り船着き場まで到着した。流石に船着き場の近くには、照明がいくつも設置されているので、懐中電灯は不要だった。すると突然双葉が、公平の右肩を強く叩いた。


「ん?」

 公平が振り返ると、双葉は彼の頬を思い切り殴り付けた。

「ごふ・・・・」

 公平はそのまま砂場に顔ごと突っ込んで行った。

「よう、元気か?」

「げっほ、お、お前なあ・・・・」

 公平は砂を口から吐き出すと、懐中電灯を投げ捨てた。そして殴られた部分を手で押さえた。すると手には肌色の粘土のようなものが付着していた。そしてガムのように手にべったりと張り付いていた。彼を殴った双葉の右手にも、同じものが付着していた。


「痛てえよ・・・・俺の顔がああああ」

「お前、いつからすり替わっていた?」

 双葉は懐中電灯を足で蹴り上げて、公平の顔にぶつけた。

「すり替わっただと・・・・?」

 公平は首を傾げていた。それを見て双葉は舌打ちをした。

「どうやら神崎稔本人では無いようだな。神崎に操られて顔を公平に変えられた人間か。恐らく、自分が操られていることや、自分が公平でないことにも気付いていないだろうな」

「ちょっと待って下さい。神崎稔って・・・・」

「ああ、あいつだよ。あれから出て来ないと思ったら、活動再開しやがったか。何のつもりなんだ」


「結城双葉・・・・。今回はお前の勝ちだ」

 公平の声色が突然変わった。まるで壊れた機械の電子音のようになると、ポケットからナイフを取り出して、その刃先を舌で舐めた。

「ぼ、僕は君と仲良くなりたい。だ、だからゲームがしたかったんだ。ま、またあああ、遊んでくれよ」

 公平の姿をした何かはナイフを手首に当てると、そのまま脈を斬って、大量の血を手首から滝のように噴出しながら倒れた。

「斗真先生に続いて、西園寺と公平まで・・・・」

 双葉は膝を砂の上に突いた。そして静けさの中、彼らの夏休みの一日がまた過ぎて行った。

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