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双葉、盗撮されるッ!

「おい、もっとゆっくり歩こうぜ」

「ダメです。早くしないと、大変なことになっちゃいます」

 ミリーは双葉の腕を掴んで走っていた。そしてしばらく無言を貫いていたが、途中で何かに気付いたようで、突然立ち止まった。そのせいで、双葉はミリーの背中に顔をぶつけてしまった。

「痛、何だよ」

「私、飛べるの忘れてました」

 ミリーはペロッと舌を出すと、突然、両足で地面を蹴った。同時に彼女の背中に白い小さな羽が生え、フワッと宙に浮いた。少しずつ上昇して行き、いつの間にか、民家の屋根を上から見下ろすほどにまで、高い位置にいた。腕を掴まれたままの双葉は、スカートがまくれ上がり、酷い有様になっていた。

「うわああ、降ろせ、馬鹿」

「死んじゃいますよ」

 双葉は恐る恐る下を向くと、まるで上空ヘリからの映像のように、建物が小さい点になっているのを見て、顔を青くした。


「やだぁ。死にたくない」

「大丈夫ですよ。でも、あんまり怖いなら良い方法があります」

「やってくれ。何でも良いからやってくれ」

「分かりました。全速力で行きます」

 ミリーの羽が鋭さを増した。そしてジェット機のようなスピードで、雲を突き抜けて、一気に双葉の通う中学校に到着した。しかし着陸は上手くいかなかったようだ。二人は後者の窓ガラスに突っ込むと、そのまま廊下の上に投げ出された。


「あ、痛、・・・・」

 双葉は頭を押さえ、周囲を見回した。案の定、二人を、性徒達の輪が囲んでいたのだ。頼りのミリーもグルグルと眼を回しているし、双葉は困り果てた様子で、何も言えずに、ただそこに座っていた。すると、突然カメラのシャッターが押され、双葉の眼に眩しい光が当たった。

「えへへへ、ナイスショット」

 人ごみの先頭に、坊主頭の男子学生がカメラ片手にはしゃいでいた。そこに同じような風貌をした、男子達が彼を囲んで、何かを騒いでいた。


「見たかよ。あんな美少女がうちの学校にいたとはな」

「あのサラサラした髪。絶対いい匂いがするぜ」

「転校生かな。うちのクラスだったら良いな」

 口々に勝手なことを騒ぐ思春期男子達の前に、双葉はズカズカと進んで行くと、カメラを取り上げて、ギロッと男らを睨み付けた。

「何勝手に撮ってんだ。肖像権を知らないのか?」

 双葉は男の脛を蹴り上げると、カメラをポイッと天井に向かって放り投げた。男達は、その清楚な外見からは想像もつかないほどの、彼女の粗暴さに、眼を丸くしていた。

「くそ、顔は良いのになあ~」

「でも、ただのツンデレかもよ」


「アホらし」

 双葉は倒れているミリーを引き摺ると、そのまま人ごみを掻き分けて、彼女を屋上に連れて行った。

「起きろ」

「んん、ここはどこですか?」

「校舎の屋上だよ。ここでなら、ゆっくりと話ができるな」

「ああ、そう言えば。ジェリースライムを見つけなきゃです」

「それよりも、お前は何者なんだ?」

 双葉は緑のフェンスに背中を押しつけた。前はこんなフェンスは無かったのだが、10年前に一人の女子生徒が自殺して以来、ここには分厚いフェンスが付けられていた。

「話しますです。私はミリー。あなた達、人類はきっと信じないでしょうけど、私は遥か宇宙からこの星にやって来ました。我々を宇宙では「統制者」と呼びます。その正体は、魔法を極めてた結果。人間でありながら、人間ならざる者に変貌してしまった愚かな存在。私も昔は魔法使いでした。魔法を研究し、いつしか、人類の目的地である、不老不死の領域にまで到達してしまった」


 ミリーは眼を細めると、空を見上げた。雲一つない晴天だった。

「私のような統制者は宇宙各地にいますが、基本的には不老不死なので、皆、色んな星に行っては、そこの生物を観察したり、ちょっと悪戯してみたり。逆に、その星の進歩のために尽力したりします。しかし中には、星の中で戦争を起こしてそれを楽しんだり、統制者同士で、星を巻き込んだ戦争をすることもあります。星を破壊することに喜びを感じる異常な連中だって、けっして少なくない」

「何が言いたいんだ?」

「今回、この宇宙の底辺にある青き星に、ある統制者の一人が来たのです。その者の名はゼニス。私と一緒に、宇宙のバランスを維持することを使命とする「機関」の一員でした。それが、つい先日、突然、行方をくらませて、この星に亡命したのです。それどころか。星獣を放って、この星を破壊しようとしている」


 双葉はミリーの話を理解できなかったが、彼女がふざけていないことだけは分かった。

「それで、あの気味悪い耳垢野郎も。そのゼニスって奴の差し金だと?」

「察しが良いですね。あれはゼニスが青き星に持ち込んだ。言うなればペットのような物です」

「変な物を持ち込みやがって。生態系を考えろっての」

「とにかく、それを探さないと」

 ミリーは立ち上がった。その頃、下の階では大変なことが起ころうとしていた事実に、まだ二人は気付いていないようだった。

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