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斗真、幽霊に襲われるッ!

 双葉の体がフェンスを今にも乗り越えそうになっていた。斗真はポケットから紙切れを出すと、それを双葉の体に張り付けた。紙には「止まれ」と書かれていた。その途端、双葉の体がフェンス越しに固定された。まるで壁に刺さった画鋲のように、彼女の体が動かなくなっていた。

「ナイスだ。先生」

「ふん、この程度余裕さ。しかし、このままどうしたものか。この現象を引き起こしている霊の姿も見えないしな」

「ジャマスルナ」

 斗真の背後から不気味な声が聞こえて来た。すると、彼の体が殴り付けられたように、背後から空気の塊のようなものがぶつかり、フェンスに顔から激突した。

「カエレ・・・・」

「げほっ、なんだこいつは・・・・?」

 斗真の後ろには、紺色のブレザーに灰色のスカートを履いた女子高生が立っていた。髪は青く長いストレートヘヤー、さらに眼は真っ赤に充血していた。


「こいつは幽霊か?」

「カエレ、カエレ・・・・」

「くそ、人に命令されて大人しく帰る僕だと思うなよ」

 斗真の腕を幽霊がそっと触れた。すると、斗真の脳内に見覚えの無い映像が浮かんで来た。


 それは、おかっぱ頭の見るからに薄幸そうな少女だった。少女は中学校の制服を着ており、公園で砂場遊びをしていた。誰が見たって分かることだが、この少女は精神年齢が肉体年齢と比べて非常に低かった。中学生にもなって公園の砂を弄る者などそういないだろう。

「やあ、君何しているんだい?」

 そこにワックスで塗り固められた黒髪の若い男が現れた。男は端正な顔立ちをしており、所謂モテそうなタイプの人間だった。男は砂場の少女に近付くと、突然、背後から少女の首を絞めた。

「んぐぐぐ・・・・」

 少女の華奢な体が男の力で浮いた。そして顔を凧のように真っ赤にし苦しんでいた。男は顔の血管をピクピクと動かしながら、腕に力を込めた。

「君、苦しむ顔も可愛いね。僕のために死んでくれよ。ああ、名乗り忘れたが、僕の名前は神崎稔。教員志望の大学生さ。こんな男が教師を目指すなんて馬鹿らしいと思うかも知れないが、僕は本気だ。君のような美しい少女をこの手で絞めていると、ストレスが全て浄化されていくようで、とても清々しい気持ちだよ」

 神崎稔は、少女が泡を噴いても、痙攣を起こしても、冷たくなっても、腕の力を抜くことはなかった。そして、そこで映像は途切れていた。


「う・・・・。何だ今の映像は・・・・」

 斗真は貧血にでも襲われたかのように、眩暈と吐き気に思わず座り込んでしまった。目の前の幽霊はいつの間にか消えており、双葉の体も解放されていた。

「何を見たんだ?」

「恐ろしい映像だ。あの公園は僕も知っている。まさか、こんな平凡な町に、あんな殺人鬼がいるというのか。彼女はそれを警告するために現れたとでも言うのか?」

「おい、俺の質問に答えろ」

「神崎稔だよ。神崎稔とかいう男が、ある少女を殺害したんだ。そしてその少女こそが、僕らを襲った幽霊の正体。こんな恐ろしい話は聞いたことがない」

 双葉は知っていた。神崎稔という男を。そして負傷しているミリーを背中に背負うと、双葉は非常階段をゆっくりと降りて行った。そこに再び幽霊が現れた。

「オシエテアゲル。アイツノイバショ」

 幽霊は双葉の額にそっと触れた。そして彼女の脳内に、神崎稔の潜伏している場所の映像が映った。



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