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双葉、廃墟に行く

「んん・・・・」

 双葉はベッドの上でうなされていた。昨日の神崎稔との戦いによる疲労が取れていない様子だった。

「何をしとる・・・・」

 双葉はパチッと両目を開けると、自分が被っている毛布を思い切り持ち上げた。すると、毛布の下から彼女のシーツに、芋虫のごとく丸くなっている若葉の姿が見えた。

「ああ、お姉ちゃんの匂いがする」

 若葉はシーツに鼻を付けると、それを思い切り吸引してうっとりとしていた。それを見て、双葉は疲れがさらに溜まった気がした。

「そう言えばね。お姉ちゃんにお客さんが来てるんだよ」

「お客さん?」

「うん」

 双葉は急いで着替え、申し訳程度にクシで髪を解かすと、そのまま玄関に走って行った。外には前髪を弄りながら不機嫌そうに立っている城所斗真の姿があった。


「何だ。お前か・・・・」

「お前かとは失礼な。せっかくわざわざ来てやったと言うのに」

「何の用だ?」

「君、ニュースは見る方かい?」

「いや全く・・・・」

「聞いた僕が悪かったな。実は、これはネットのオカルトサイトで得た情報なのだが、隣町の廃墟ビルの屋上で、若い女性が飛び降り自殺をしたということだ」

「普通だろう。自殺する奴なんているぜ」

「違うんだ。問題はその廃墟ビルで自殺している人間が、既に8人いるということ、そしてそれらは全て同じような年代の女性なんだ。最初に自殺したのは女子高生で、その後にその女子高生と同じような年代の少女が同じ場所で自殺している。」

「また妙な話だな」

 双葉は言いながら、退屈そうに眼を細めた。そんな彼女の隣にミリーがひょっこりと姿を現した。

「どうしましたか、二人とも・・・・」

「廃墟ビルで自殺が多いんだと」


「間抜けめ。話を要約しすぎだ。同じような年代の女が同じ場所で同じ方法で自殺しているんだぞ。何か高まってくるだろう。こう、小説にしたら面白そうだとか・・・・」

「ねえよ。というかさ、よく芸能人が自殺するとさ、それに影響を受けて自殺する人がいるだろ。きっと今回のもそれだよ」

「ウェルテル効果か。しかし最初に廃墟ビルで自殺したのは、芸能人とは程遠い地味な少女だ。彼女の死が周囲にそれほどまでの影響力を持つとは考え難い。彼女が自殺したのは2週間前。その2週間の間に、彼女と年齢の近い女性が8人も、廃墟ビルから飛び降り自殺だ。彼女が死んだ場所も同じ廃墟ビル、これは何かあるだろ」

 斗真は力説すると、ミリーもそれに同調したのか、急に顔をグイッと前に出して話に聞き入っていた。

「もしかしたら、ゼニスの核が関係しているかも知れないです」

 ミリーの言葉に、半信半疑だった双葉も少しだけ顔を上げた。昨日、神崎稔を捕まえる直前に逃げ出したというゼニスの核を捕まえるチャンスだ。

「とにかく行こう」

 上手く言い包められたが、双葉とミリーは斗真の車に乗り、問題の廃墟ビルへ向かった。



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