ミリー、斗真を訪ねるッ!
双葉が消えてから、ミリーは意外な人物の元を訪れていた。
「君が結城双葉の同居人?」
「そうなんです。双葉が大変なんです。助けてください」
「大変と言われてもな。僕にも大学と執筆がある。まあ、上がれよ」
ミリーは斗真の部屋に案内された。彼は紙にマジックで何かをサラサラと書いて、それをミリーの背中に張った。
(嘘をつけなくなる)
紙には文字が書かれていた。
「これは何ですか?」
「前に、妙な化け物に操られた時に目覚めた能力だ。以前のような力はないが、紙に書いたことを、人に張り付けて命令にしたり、紙自体にも命令できる」
ミリーは口をあんぐりと開けたまま驚いていた。ゼニスに憑依された者は、確かに不思議な力を得るが、それは一過性のもので、ゼニスの支配から逃れた際に、失われてしまうのが普通だった。
「君は何かを知っているな?」
「はい」
誤魔化そうにも口が勝手に動いてしまうので、仕方がない。ミリーは双葉のこと、自分のことなど全て話した。
「ふん、まるでC級小説だな。双葉は実は男で、君の魔法によって女になった。これは信じられる。アイツのガサツさは、女性的のそれとは違うからな。そして、君が宇宙人という件については、これは君の脳味噌が宇宙みたいだと、僕は言わせてもらうよ」
斗真はティーカップにコーヒーを入れてミリーに渡した。
「飲めよ。ブルーマウンテンだ」
「ごめんなさい。コーヒー飲めないです」
「ほう、宇宙人にコーヒーは駄目か。じゃあ、ジュースで良いかい?」
「はい、それなら…」
斗真はガラスのコップにオレンジジュースを入れると、ミリーの前に置いた。そして、自分はパソコンの前の椅子に座り、大きく欠伸をした。
「ところで、双葉が大変だと言っていたな」
「はい、エクストリームファイターってゲームを知ってますか?」
「ああ、知っているが。それと双葉が大変なことに、何の関係があるんだい?」
ミリーは身振り手振りで、双葉の陥っている状況を説明した。斗真はしばらく黙って聞いていたが、やがて立ち上がると、ゲーム機を床に置いて、ゲームを起動させた。
「双葉を拐った奴とゲームをして勝てば良いのだろう。君の話していたゼニスという奴は、僕に素晴らしい能力をくれた恩人なので、心苦しいが、まあ、仕方あるまい」
斗真のゲームでのプロフィール画面が表示された。そこには切断数5回と、不名誉な記録も見受けられていた。
「切断数があるんですね」
「ふん、別に良いだろ。相手が舐めたプレイをして来たんで、報復してやったのさ。最もおかげで誰も対戦してくれなくなったがね」
「MASAというプレイヤーなんですけど。対戦してくれますかね?」
「そいつなら聞いたことがある。かなり有名なプレイヤーだ。動画配信などしてたな」
斗真がネット対戦に繋げると、早速探していたMASAと遭遇した。




