双葉、幽霊レストランに行くッ!
高級レストラン、その名もシャンデリア。古びたレストランには、双葉と斗真を除いて客はいなかった。朝であることも理由の一つかも知れないが。予約票には、「キドコロ様」という文字以外に、名前らしきものは書かれてなかった。
「このボロいレストランが、どうして潰れないのか。気にならないか?」
斗真はこんなことを言った。双葉はこの店自体が初めて訪れたので、特に相づちは打たなかったが、斗真はさらに続けた。
「このレストラン、シャンデリアは、僕が生まれる以前から、この町にあった。しかし、客が来た形ことは一度としてない」
「はあ…」
「問題はここからだ。シャンデリアは、オカルト雑誌にも取り上げられたことがある、有名なお化けレストラン。僕はここの秘密を解きに来たのさ」
斗真の話を聞いていた双葉だったが、その言葉を聞いたとたん、椅子を蹴り飛ばすほどの勢いで立ち上がった。
「おい、聞いてないぞ。俺をここに連れて来たのは、それが目的か」
「落ち着け、とにかく座れ」
「この援交野郎。さっきから偉そうに」
我慢していたせいか。双葉は散々に斗真を罵ったが、大きな白い皿に、カラフルな野菜の盛り合わせが来たのを見て、思わず口をつぐんだ。
「あれ?」
「つまらん。ただのレストランのようだな」
オードブルが二人の元に置かれた。何とも美味しそうな、特に朝食を食べていない双葉には、たまらなかった。
「当てが外れたよ。ここはただのレストランだ。ちなみに、僕の発言がフラグであってくれれば、この後に何か起きるかも」
「いや、それがもうフラグだから」
双葉と斗真は二人同時にオードブルを口にした。その味は今まで食べたどの野菜よりも美味だった。
「これは美味いぞ」
斗真は瞳を輝かせると、突然立ち上がった。
「コックに御礼が言いたい。こんなシャキシャキとした、瑞々しい野菜を食べたのは初めてだ」
斗真は居ても立ってもいられなくなり、階段を降りて行った。
「コックに会わせてくれ」
強引に厨房に入ると、そこには紫のドレスに身を包んだ、長く白い髪をした。麗しい女性が、何かをフライパンで炒めていた。何故、ドレスなのか。斗真は気になったが、もっと驚くべきところが、もう一つあった。
女性のスカートの下。つまり足首の部分が透けていたのだ。膝小僧から下が無く、まるで宙に浮いているようだ。ふと、後ろを見ると。今度は、先程のオーナーらしき老人が、無表情で斗真を見つめていた。
老人の首は、手打ち麺のように伸びており、いわゆる、ろくろ首のような形状をしていた。
「うわあああ」
斗真は大声で叫ぶと、ドタドタと乱暴に階段を駆け上がり、双葉の所に向かった。




