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双葉、なろう作家と闘うッ!

 次の日、斗真の家に再び、双葉がやって来た。

「ふん、入れよ」

「お邪魔しまーす」

 双葉は部屋に入って、妙な違和感を感じていた。

(あれ、なんで、斗真先生の部屋にいるんだ?)

 まるで夢でも見ているかのような感覚だった。自分は夢遊病にでも患ったのだろうか。朝起きたら、朝飯も食べずにここに来ていたのだ。

「どうやら、自分の身に何が起こったのか理解していないようだね」

 斗真は口調こそ、昨日と同じだったが、まるで別人のような、気味の悪い雰囲気を放っていた。そしてその雰囲気を、双葉は知っていた。

「この状況、ミリーだったら、邪悪な魔力がどうとか言っているな」

 勤や金山のそれと同じように、城所斗真は、ゼニスに憑依されている。双葉の推理は当たっていた。


「魔力なんてどうだって良い。それは僕の次回作のプロットに使う。それよりも、何故、君がここに来てしまったのか教えてあげよう」

 斗真はパソコン画面に映った、文字の羅列を双葉に見せた。そこにはこう書かれていた。「結城双葉は、今日の朝、9時30分に城所斗真の住むマンションにやって来る」このように書かれていた。

「驚いただろう。僕は小説を現実に投影できるんだ。何故、こんなことができるのか分からないが、きっと、神様がくれたプレゼントだろう。そう捉えるしか説明が付かないからね」

「お前、自分が憑依されていることに気付いていないみたいだな」

「ふん、だから何だそれは。僕は僕だよ。もう帰って良いよ。ちょっと試してみただけだからね。この能力があれば、もう、大学に行く必要もないから、今日、本当は必修授業なんだけど、サボっちゃった。テヘ」

「か、帰ります」

 双葉の口が勝手に動いた。これも、たった今、斗真がパソコンで書いた文章によるものだった。


 さらに次の日、双葉と、学級委員の佐伯綾香は一緒に下校していた。男の時は一切、絡まなかった存在の彼女だったが、女体化してからは、良く会話するようになった。やはり女子の仲間入りをしたからには、男子とつるむのは不自然に感じられたというのもあるが、女体化してから、一週間も経っていない現在、彼女の友人は、綾香しかいなかった。

 男性だった時の人気が災いしたのだ。クラスメイト達は、男子の双葉を懐かしく想い、反面、転校してきた双葉には、少し冷たかった。知らないというのもあるが、彼と交代で転校したということもあってか、何となく、男の双葉と比べられ、男の時は大胆で、見た目に似合わず、度胸のある性格も、性別が変わると、ただのガサツなじゃじゃ馬以上のものではなかった。

「結城さん、きちんと宿題やって来るのよ」

 とても同い年とは思えない、キツイ口調で、綾香は双葉に忠告した。そのお節介とも言える性格のせいか、綾香にも友人は少なかった。


「へいへい」

「女の子なんだから、もっとお淑やかに・・・・」

「お淑やかって、どうやって?」

 双葉は綾香の顔を真剣に見つめていた。お淑やかさについて教えろと言わんばかりの顔付きだった。しかし、当の綾香は、それとは全く別なことを考えていた。

(そんな真剣な眼で見ないでよ。抱きたくなるじゃない)

 顔を赤らめる綾香を尻目に、双葉の顔が急に険しくなった。

「綾香、隠れて」

 双葉は綾香の肩を軽く押すと、突き当たりの塀の前に隠れさせた。状況の分からない綾香は、双葉に何かを言おうとしたが、彼女の真剣な眼差しを見て、それを止めた。彼は、若い男性と何かを話していたのだ。


「おい、そう構えるなよ」

「斗真先生、悪いけど、用がないなら、何処かに消えて下さい」

 双葉は緊張していた。ポケットにはオリハルコンのナイフがある。いざとなったらそれで闘うことだってできるのだ。しかし、斗真の能力はまだ分からないことが多すぎる。敵意が相手にないのに、襲い掛かるのは、得策でないと双葉は判断した。

「僕と会って、不運だと思っているんだろうけど。ここで僕らが遭遇するのは既に決まっていたことなんだ。僕が書いたからね。僕は最強のシナリオライターなんだ。どんな奇跡的な体験も、恐ろしい事件も、この指だけで引き起こすことができる。面白いね」

「ついに本性現したな。俺の家族と友人に手を出したら・・・・」

「個人の発言までは深く決められないんだよ。本当は黙らせたいんだけどね。安心しなよ。君の家族や友人に興味ないから。それよりも、ちょっと付き合ってくれるかい?」

 斗真が妖しく笑った。その陰にはゼニスのほくそ笑む姿も映っていた。

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