第五幕 茶会と家
【現代の登場人物】
グランディア王(64歳):穏やかで誰からにも愛される。雷の力を宿す。
ルベリア王子(11歳):現代の王子。ヤンチャで勉強が嫌い。母様が死ぬほど怖い。雷の力を宿す。
ミラク(45歳):使用人で苦労人。ルベリアの世話係。ベテランだが、どこかおっちょこちょい。力は持っていない。
【過去の登場人物】
氷華(17歳):フレアに対しての口の悪さは以上。氷の力を宿す。
守護獣:久遠 (タツノオトシゴ)
フレア(17歳):氷華といつも喧嘩している。喧嘩っ早い。炎の力を宿す。
守護獣:ホルン(フェニックスの雛?)
ボルト(15歳):泣き虫だが、決断力と行動力は凄まじい。いつもシーフにからかわれたり、イジメられたりする。雷の力を宿す。
守護獣:ライト(狼)
シーフ(20歳):いつもチャラケている。ボルトのことを毎日のようにからかい、毎日のようにエレメントに叱られる。風の力を宿す。
守護獣:チート(イタチ〈鎌鼬〉)
エレメント(19歳):普段は優しい皆のお姉さんだが、怒るとそれなりに怖い。シーフにだけやたらと厳しい。水の力を宿す。
守護獣:ルターナ(小鹿)
ジル(36歳):5人の世話係、兼魔術講師。温厚な性格だが何処か冷たい。風の力を宿す。
守護獣:ペガサス3頭
アグリウス(48歳):6代目国王。妻子はおらず、国を守るため、より魔力の強い者自分の意思を強く継げる者を次期跡継ぎにするため「ミステリア・チャーム・コロシアム」を開いた張本人。
Nナレーション
【配役】 11人 男:7 女:3 不問:1
グランディア♂:
ルベリア♂:
ミラク♂(被り推奨):
氷華♀:
フレア♀:
ボルト♂:
シーフ♂:
エレメント♀:
ジル♂:
アグリウス♂:
N/♂♀(被り推奨):
【被り】 7人 男:4 女:3
グランディア/ジル♂:
ルベリア/ボルト♂:
ミラク/アグリウス♂:
氷華/N♀:
フレア♀:
エレメント♀:
シーフ♂:
N「前回のあらすじ。ジルから守護神召喚魔法を3年で会得し、4年後の王位最終試合、5年後の創立記念式典のパレードに備えるよう言い付けられた5人は守護獣を呼び出すが、その姿はどれも小さく可愛らしい動物ばかりであった。真の姿を見るには守護獣と向き合う必要があると話すジル、それから1年彼らは日々奮闘するが、なかなか成果を得られずにいた」
N「氷の華。第五幕、茶会と家」
【過去】
SE:ノック
アグリウス「入れ」
ジル「失礼いたします。お呼びでしょうか、アグリウス陛下」
アグリウス「彼等の様子はどうだ」
ジル「順調ですよ。ボルトは独自の魔法を編み出し新たな魔術として生成する事が出来、シーフは多彩な魔術を覚えることに長けており、使用できる魔術の数は5人の中で群を抜いています。エレメントは一つ一つの魔法が丁寧でコントロールや性能は勿論ですが、見る者が魅了される程の繊細で美しい魔法を放ちます。フレアはコントロールがやや不安要素ではありますが、一度の魔力の放出が多くボムだけでもその威力は目を見張るものがあります。氷華は……」
アグリウス「何だ?」
ジル「いえ、彼女はその場その時にどの量の魔力を消費すればいいかなど、ペース配分を完璧にこなし、5人の中でも向上心が一番高く性格も負けず嫌いです。ただ、彼女の場合ペース配分など考えなくてもいい程魔力量が多く、まるであえてペース配分をし、力を使わないよう制御している様に見えます」
アグリウス「そうか」
ジル「陛下、貴方は私に彼らの監視を命じられた時、氷華への監視を重点に置くようお言い付けになりました。彼女の何がそんなに気なるのですか?」
アグリウス「お前はあの子供がただ魔力が多いだけの子供に思えるか?」
ジル「それは……」
アグリウス「否定しきれまい。なんせあの子供はあの村の出身だからな」
少しの間
フレア「ホルン! ファイアブレス!!」
ホルン:欠伸
フレア「ダメか……」
氷華「相変わらず言うこと聞かないのね」
フレア「氷華の久遠はどうなのよ」
氷華「も、勿論聞くわよ。まだ真の姿は見れてないけど」
フレア「じーっ」
氷華「なによ」
フレア「ほんとにぃ?」
氷華「本当に決まってるじゃない! それとも何? 私が嘘でも付いてるって言いたいの!?」
フレア「あんたなら見栄張って嘘付きかねないじゃない」
ボルト「氷華この間久遠に、ずっと頭突きされてなかった?」
氷華「ちょっと! ボルト!!」
フレア「やっぱり嘘じゃなぁい」
氷華「たまたまよ! たまたま!」
フレア「どうだかねぇ」
エレメント「そのぐらいにしておきなさいフレア」
フレア「あっエレ姉!」
エレメント「調子はどう?」
フレア「全然だめ」
氷華「まぁ長時間召喚したままでも疲れなくなったけど」
ボルト「エレ姉の守護獣はどう?」
エレメント「ルターナのこと? 言うことは聞いてくれるけどなかなか上手くいかないわ」
フレア「あーあいつになったら真の姿とやらが見れるのかねぇ」
氷華「私も早く真の姿で自在に操れるようにしたいわ……そして必ず、最終試合で陛下に認めて貰うわ!!」
ボルト「凄い気合……」
フレア「氷使いのくせに後ろに火が見えるくらい熱いわね……」
エレメント「修練もいいけど、たまには休憩もしないとね」
メイド「エレメント様、中庭の準備が整いました」
エレメント「ありがとう、今行くわ」
ボルト「エレ姉準備って?」
エレメント「ふふっお茶会の準備よ」
少しの間
エレメント「さぁ召し上がれ」
フレア「うわぁ! このクッキーどうしたの!?」
エレメント「私が焼いたのよ、家にいる時はよくお菓子作りをしていたから、久しぶりにね」
氷華「でもすごい量ね……」
エレメント「張り切りすぎて大量に作っちゃったのよ、使用人の人達にもおすそ分けしたくらいで……」
メイド「とても美味しゅうございましたよ、他の者も喜んでおりました」
エレメント「ありがとう」
フレア「ねぇねぇ! 私もう待ちきれない食べてもいい!?」
ボルト「でも、シーフは?」
エレメント「それがさっきから探してるんだけど見つからなくて」
氷華「じゃあシーフが見つかるまでお預けね」
フレア「ええ!!!」
エレメント「別にいいわよ先に食べてて頂戴、クッキーはまだあるし。私はもう一度シーフを探してくるわ」
氷華「まだあるの!?」
フレア「行ってらっしゃあい! はむっ、んん~美味しい!!」
(↑このあたりからフェードアウト)
ボルト「フレア行儀が悪いよ」
氷華「えっちょっと待って美味しい……」
間
【現代】
ルベリア「お茶会ですか? なんだか呑気ですね」
グランディア「たまにはいいとは思わんか?」
ルベリア「僕もなんだか喉乾きました」
グランディア「ははははっさっきから喋り通しだからのう」
ミラク「あっ陛下、ルベリア王子こちらにいらしたのですか」
ルベリア「ミラクいい所に!」
ミラク「えっはいなんでしょうか……」
ルベリア「飲み物を持ってきてくれ!」
ミラク「畏まりました。ですが、あの中庭ではなく中でお食事になられた方がよろしいかと……外はまだ冷えますし」
ルベリア「うるさい! さっさと持って来い! 」
ミラク「か、畏まりました!」
グランディア「あぁなら茶菓子も持ってきてもらえんか、何分喋り通しで喉も乾いているが小腹も減ってなぁ。そうだな……クッキーなんか持ってきてもらえると嬉しいんだが」
ミラク「陛下まで!!」
ルベリア「ほら、ぐずぐずしない! お爺様がクッキーをご所望だぞ!」
ミラク「は、はい! すぐお持ちいたします!!」
SE:ミラク走り去る音
ルベリア「……ぷっくくくっ」
グランディア「くくくっ……ははははは!」
ルベリア「あはははっ」
グランディア「ミラクには悪いことをしたな」
ルベリア「ねぇお爺様お茶会はどうなったのですか?」
グランディア「ああ、エレメントがシーフを探しに行った後……」
間
【過去】
SE:大理石の廊下を歩く音
SE:ノック
エレメント「シーフ?いるの?入るわよ」
SE:扉の開閉音
エレメント「ここにもいないか……何処に行ったのかしら……。あら?ベットの下に本が落ちてるわ、全く片ずけくらいちゃんとしな……はっ!」
エレメントM「ベットの下……男の部屋……本……もしかして……春画!?」
SE:ピンポーン(チャイムではありません)
シーフN「(少し早口)春画とは男女の情交を描いた物、様はエロ本のことである」
エレメントM「でも、どうししてそんな物が? 外との接触は禁止されているから外部の物は持ち込めないはず……使用人との会話もジルに監視されて物の受け渡しも監視されて……はっ! ……ジルか!!」
エレメント「……そ、そうねシーフだって男だものそういう本を1、2冊持っていたっておかしくないわ、ジルだって大人だものね……。まぁでもあんな見える所に置いて、もしボルトの目にでも入ったらいけないわ、置くの方に入れとこうかしら、 別に見ないし押し込むくらい……」
ボルト「エレ姉シーフ見つかった?」
エレメント「うわあああ!!」
ボルト「えっと…エレ姉?」
エレメント「あ、あああボルト! ううん! シーフはまだで……!」
ボルト「そっか。あれ? ベットの下本が落ちてる」
エレメント「あ! 見ちゃダメ!」
ボルト「え?」
エレメント「あ、その……やっぱり人の物だし勝手に見るのはその……」
ボルト「う、うん。別に見たりしないよ。こんな所に置くなんてもしかしたら日記かもしれないしね。流石にシーフのでも人の日記を見たりするのは……どうしたの?」
エレメント「なんでもないわ、自分の心の汚さにちょっと落ち込んでるだけ」
シーフ「お前ら人の部屋で何してるんだ?」
ボルト「シーフどこ行ってたの!? 探してたんだよ!」
シーフ「ちょっと野暮用があってな。どうした?」
ボルト「エレメントがクッキー焼いてくれたんだ、それで皆んなで食べようと思って。氷華とフレアはもう先に中庭で食べてるよ」
シーフ「サンキューすぐ行くから、ボルト先戻っててくれ」
ボルト「うん」
SE:走り去る音
エレメント「さ、私達も行きましょう」
シーフ「なぁエレメント」
エレメント「何?」
シーフ「この本、春画じゃないぜ?」
エレメント「っ!!!」
シーフ「いやあ男より女の方がエロいって言うしエレメントがそう思うのも可笑しくな……」
SE:鈍い音(殴る様な音)
ボルト「シーフその顔どうしたの?」
シーフ「いはー実ははあ……(いやあ実はさあ)」
エレメント「(咳払い)」
シーフ「なんへもない(なんでもない)」
フレア「ふーっお腹いっぱい……」
氷華「よく食べたわね」
ボルト「少しでも余っててよかった。食べ始めた時フレア全部食べちゃうんじゃないかと思ったよ」
フレア「いやあ本当は全部食べる気だったけどねぇ」
氷華「エレ姉このクッキー凄く美味しかったわ」
ボルト「うんっお店のクッキーみたいだったよ!」
エレメント「本当? そう言って貰えると嬉しいわ」
シーフ「お、うめーなこれ。料理でもやってたのか?」
エレメント「いいえ、昔からお菓子作りが好きだっただけよ。小さい頃から何か作って両親や姉様達に配って回るのが好きだったの」
ボルト「エレ姉の家って貴族なんでしょ?」
フレア「え!? お金持ちじゃん!!」
エレメント「そんな大したものじゃないわ、貴族と言ってもただの下請けよ。確かに周りよりは裕福だったかもしれないけど、それ以外は何も変わらないし」
フレア「いいなぁ、あたしの家農家だからめちゃくちゃ貧乏。まぁ貧乏は貧乏なりに楽しかったけどね、山に入って自分で山菜採りに行ったり、川で魚釣って帰ったり、それを母さんが塩だけで焼いてくれてさあ、それがものすっごい美味しくて! あーなんかホームシックになってきた」
氷華「私もお父さんと暮らしてる時はよく海に潜ったわ……」
フレア「潜ったの!?」
氷華「ええ、氷でモリを作ってそれを魚目掛けて投げていたの」
シーフ「モリは投げるんじゃなくて突くものだからな……」
氷華「父は魔法が使えなかったから、私が獲った魚を次から次へと籠に入れていたわ」
エレメント「サバイバルね……」
ボルト「いいなあ、僕もお父さんやお母さんと色んなことしたかったな……」
シーフ「あ……そういやあボルトって……」
氷華「ごめんなさいボルト! 悪気は無くってその……」
ボルト「ううん! いいよ! 孤児って言っても院には沢山家族がいたし全然寂しくなかったから。でもお父さんやお母さんの顔ぐらいは見たかったなあって思って」
フレア「大丈夫だよボルト、お父さんやお母さん知らなくても、今は私達が家族だし。孤児院にも家族が沢山いるんでしょ? あっちにもこっちにも沢山家族がいるんだから、ボルトは幸せ物だよ!」
ボルト「フレア……」
エレメント「そうよボルト、私達は家族なんだから沢山甘えていいんだからね」
氷華「そうね……ボルトとなら家族って言われても悪くないわね」
エレメント「とならって事は部外者がいるの?」
氷華「エレ姉とも家族って言われてもいいわね、フレアは絶対ごめんだわ」
フレア「あたしもあんたみたいな奴ごめんよぉ」
シーフ「俺は?」
氷華「シーフは……」
フレア「論外?」
シーフ「論外って何!!?」
エレメント「まぁまぁ、物事は深く考えちゃダメよ?」
シーフ「頼むエレメント、その笑顔の意味を教えてくれ……」
ボルト「僕はシーフの事家族だと思ってるから大丈夫だよ?」
シーフ「哀れんだ目を向けんじゃない、泣きたくなってきた……」
フレア「ねぇシーフは?」
シーフ「なんだよ、今哀しみに浸ってるとこなんだから邪魔すんなよ……」
フレア「か、ぞ、く!! シーフのとこはどうなの?」
氷華「そういえば、シーフから家族の話ってあまり聞かないわね」
シーフ「あーまぁ俺はなぁ……」
フレア「おーしーえーてーよ!」
シーフ「教えるつーかなんていうか、話す事がないというか」
エレメント「シーフ、話したくないなら無理にはなさなくていいのよ?」
ボルト「そうだよ僕も本当の家族を知らないし……」
シーフ「はぁ……いるぜ、親父とオカンと、妹と弟、ついでに兄貴も一人いる。ただあんまり一緒にいなかったからな、今じゃ声も顔も思い出せねえ」
ボルト「寂しくないの……?」
シーフ「さぁな。でもそれが普通だったから、今はもうなんとも思ってねえよ」
氷華「そう……なの……」
シーフ「……あー……悪りぃな、なんか辛気臭くしちまって。さっエレメントのクッキーでも食べようぜ」
SE:フレアが立ち上がる音(↑最後被せる)
フレア「決めた!!」
氷華「何よいきなり……」
フレア「外に行こう!」
ボルト「外ってどこの?」
フレア「そんなのお城の外に決まってるじゃんか!!」
4人「……はぁ!!!!?」
氷華「あんた正気!?」
エレメント「そんなの無理よ!」
フレア「大丈夫だって!」
ボルト「それに僕ら一回規則破って見逃してもらってるんだよ!?」
フレア「そんなのジルにお願いして許して貰えばいいんだよっ」
シーフ「んなことジルが許すわけねぇだろ!?」
フレア「策はあるから大丈夫! 私ジルの弱み知ってるから。ね、氷華」
氷華「……へ?」
少しの間
ジル「へっくしょん!!」
アグリアス「随分盛大なくしゃみだな」
ジル「失礼致しました」
アグリアス「何処ぞの誰かがお前の噂話でもしているのではないか?」
ジル「だとすればあまりいい噂とは思えませんね……」
アグリアス「はっはっはっは!! 言えとるわ!」
ジル「誰が噂しているのかは大方検討つきますが」
アグリアス「しかしお前も意地が悪い。あの守護神召喚を5年で取得するよう言ったそうだな?あれは通常10年以上修行して完成する召喚魔法だろうに」
ジル「彼らなら出来ますよ。それ程の力を彼らは持っています」
アグリアス「ふんっ……守護神召喚魔法……。完全に会得するには長い精神修行が必要とされ、術の創設者の家系の元でその修行を積まなければならない……。創設者の名はウルスラ・テトール。他国で崇められる守護聖人の名を持つ者……。そうであったな? ジル・テトール」
ジル「仰る通りでございます」
アグリアス「だがしかし、いくらなんでも5年は買い被り過ぎではないか?」
ジル「確かに通常より早くはありますが、買い被りなどではございません。私は彼らの修行を出会った時から行っておりました、今では心も魔力も成長を遂げ、いつ真の姿が見れてもおかしくないでしょう」
アグリアス「子孫であるお前が言うのだ間違いないだろう。ならば私も動かねばな……」
ジル「動くとは……?」
アグリアス「私も自身の目で確かめようと思うてな、誰が王に相応しいか……。それでは後は頼んだぞ」
ジル「畏まりました」
SE:扉の開閉音
アグリアス「そうだ、見分けなければならん……誰がより私の意思を強く継げるかをな……」
ジル「守護獣は心の強気者にしかその姿を現さず、強気意識の元にしか従わない……。私はただ期待しているのかもしれません、貴方がたがこの国を変えてくれる事を……」
初心者の拙い文章ですが、楽しんで頂ければ幸いです。
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最後までお読み頂き誠に恐縮です。
本作品は『D&K Project』にてボイドラ化、進行中です。
公開はまだ未定なので決まり次第発表いたします。
『D&K Project』ホームページサイトURL
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