第四幕 呪文と責任
【現代の登場人物】
グランディア王(64歳):穏やかで誰からにも愛される。雷の力を宿す。
ルベリア王子(11歳):現代の王子。ヤンチャで勉強が嫌い。母様が死ぬほど怖い。雷の力を宿す。
【過去の登場人物】
氷華(16歳):フレアに対しての口の悪さは以上。氷の力を宿す。
フレア(16歳):氷華といつも喧嘩している。喧嘩っ早い。炎の力を宿す。
ボルト(14歳):泣き虫だが、決断力と行動力は凄まじい。いつもシーフにからかわれたり、イジメられたりする。雷の力を宿す。
シーフ(19歳):いつもチャラケている。ボルトのことを毎日のようにからかい、毎日のようにエレメントに叱られる。風の力を宿す。
エレメント(18歳):普段は優しい皆のお姉さんだが、怒るとそれなりに怖い。シーフにだけやたらと厳しい。水の力を宿す。
ジル(35歳):5人の世話係、兼魔術講師。温厚な性格だが何処か冷たい。風の力を宿す。
Nナレーション
【配役】 9人 男:5 女:3 不問:1
グランディア♂:
ルベリア♂:
氷華♀:
フレア♀:
ボルト♂:
シーフ♂:
エレメント♀:
ジル♂:
N/♂♀(被り推奨):
【被り有り】 6人 男:3 女:3
グランディア/ジル♂:
ルベリア/ボルト♂:
エレメント♀:
シーフ♂/N:
氷華♀:
フレア♀
N「前回までのあらすじ。
ジルが講師として行う授業。座学を苦手とするフレア、ボルト、氷華。そしてフレアは魔法の威力は高いが技術面が不足していた。シーフは女性に対してのデリカシーがなく、そしてエレメントはその事にすぐに腹を立てていた。そんな子供のような彼らの姿を聞かされたルベリアはショックの色を隠しきれず、彼の中にあった理想の竜騎士達は無残にも崩れ去っていった」
N「氷の華。第四幕、呪文と責任」
【現代】
ルベリア「……」
グランディア「どうかしたか? ルベリア」
ルベリア「竜騎士ってもっと凄いのかと思ってました。小さい時から皆んな天才で完璧で、なにも不便なく隊長になって……それに、なんといいますか」
グランディア「子供であろう」
ルベリア「はい……」
グランディア「人は誰しも完璧ではない。城下の子供と違い、多くの友と協調しあい共に成長するという経験を、彼らは得られなかった。まぁシーフとエレメントに関しては外の世界が長かったからな、他の3人と比べて大人びてはいたがな。彼らもお互いに足りない部分があったからこそ、支え合うことが出来たんだ」
ルベリア「それは、そうですけど……」
グランディア「……なら、あの話をしてやろう。彼らがとても高度な魔法を習った時の話だ」
間【過去】
ジル「毎年行われる我が国の創立記念式典のパレードはそれはそれは盛大に行われます。5年後皆様にはそのパレードに参加して頂きます。ですので本日はパレードで使用する魔法を皆様にお教えします。それは……守護神召喚魔法です」
ボルト「やった……」
フレア「ついにこの時が」
氷華「高等召喚魔術、守護神召喚魔法」
シーフ「くぅぅ!! いいねぇその響き!!」
エレメント「私達全員が、その魔法を使うのに値する力を身につけたってことね」
ボルト「僕、早く使ってみたかったんだっ!」
ジル「皆様、はしゃぐのもいいですが、この魔法は完全に取得するのは、通常5年から10年かかると言われています。ですが皆様にはそれを5年で取得して頂きます」
シーフ「いいじゃねぇか、腕が鳴るぜ!」
ボルト「もし5年でマスター出来たら、僕ら凄いよね!」
氷華「まずは召喚するとこからね」
ボルト「ちゃんと呼び出せるかなぁ……」
エレメント「きっと召喚だけでも難しいんでしょうね」
フレア「うー! ワクワクする!」
ジル「期待しているところ悪いのですが……実はこの召喚魔法、守護神を呼び出すだけなら簡単なんです」
フレア「え?」
シーフ「は?」
ボルト「そうなの!?」
エレメント「以外ね……」
ジル「勿論ある程度の力と技量は必要としますが……。今の皆様なら難しいことではないでしょう」
氷華「召喚魔法はまず、呼び出すことが難しいんじゃないの?」
ジル「我々がこれから呼び出すのは、守護神です。常に側につき、いつでも見守っています。ですから我々の呼びかけに答え下さり、召喚するこが出来るのです」
エレメント「なるほどね……」
氷華「じゃぁ高等召喚魔術と言われる理由は何?」
ジル「彼らは守護神。その姿形は個々で異なりますが、殆どは獣の姿をしています。故に一般的には守護獣とも呼ばれています。ですがどんな姿であっても彼らは気高き守護神。誇りも高いため、そうやすやすと、手を取り合うことは出来ません」
フレア「つまり?」
シーフ「つまり、呼ぶのは簡単だけど、いう事を聞かないってことだろ?」
ジル「まぁそういうことですね」
シーフ「いちいち回りくどい言い方すんなよ」
ジル「そんなことはありませんよ。とても大事なことですので覚えておいて下さいね」
ボルト「?」
ジル「さぁそれではさっそく呪文を唱えてみましょう。私が手本を見せますので、続いて詠唱してください。『永久に漂いし、我が守護神よ。我の身と心を糧に、汝との誓いをたてる。ホーリス』」
SE:風の音
氷華「ジルの守護獣は、やっぱりペガサスなのね」
フレア「綺麗……」
エレメント「何度見ても素敵な魔法ね」
フレア「風使いのペガサスは、安らぎと平穏をもたらすって伝えられてるんだよ」
ボルト「へー!」
氷華「馬鹿なのにそういった無駄な知識は持っているのね」
フレア「ぬあっ!?」
ジル「では皆様、準備はよろしいですね?」
エレメント「ええ」
氷華「勿論よ」
ボルト「ドキドキしてきたぁ」
フレア「うう私も……」
シーフ「緊張しすぎだって」
ジル「合図をしたら、一斉に唱えて下さい。……3、2、1」
エレメント「永久に漂いし」
シーフ「我が守護神よ」
氷華「我の身と心を糧に」
ボルト「汝との誓いをたてる」
フレア「ホーリス!」
SE:火、水、氷、風、雷の音
少しの間
フレア「こ、これは……!」
氷華「なんというか……」
シーフ「ちっさあぁ!!」
ジル「予想通りですね」
フレア「予想してたの!?」
エレメント「でも、可愛いかも……」
ボルト「これって子供?」
フレア「子供? じゃぁ成長するの?」
ジル「いえ、今は幼い姿をしていますが通常の生物のようには成長しません。成長しなければならないのは、皆様の方です」
氷華「どういうこと?」
ジル「守護獣が幼い姿をしているのは、上手く魔力を送れていない証拠です。魔力が上手く送られないと、守護獣は真の力を発揮できず、また真の姿を見ることがません……。というわけで、これから皆様にして頂くのは、彼らをとの共同生活です。彼らの真の姿が見れ、尚且つ使役することが出来れば合格です。期間は3年」
フレア「3年!?」
ボルト「5年じゃないの!?」
ジル「ただ使役するだけじゃなく、守護獣の癖や性格を知ること、又守護獣を通して使う魔力の配分、式典の準備など、全てを兼ねての5年です。4年後には次期王位継承者を決める最終試合もあります。そこで守護獣を使うことが出来ればかなり有利になるでしょう」
ボルト「最終……」
ジル「守護獣は召喚した状態を維持するだけでも魔力を消費しますから、力を使えばなおのこと」
エレメント「3年か……」
ジル「あぁ勿論、名前を付けて仲良くなるのも一つの手ですよ。それでは、今日の授業はこれにて終了です、お疲れ様でした」
少しの間
シーフ「さぁて、どうしたものかねぇ」
氷華「とにかく、守護獣に上手く魔力を送ることからね。じゃなきゃ使役もなにも、力が出せないし」
フレア「とは言っても……」
ボルト「やり方がわからない……」
エレメント「……ふふっ……可愛い……」
フレア「エレ姉聞いてる?」
エレメント「え!? ええ勿論よ! まぁまず皆の守護獣が何か確認して行きましょ」
ボルト「僕のは、犬かな」
氷華「これは狼よ」
フレア「へぇ雷使いの狼かぁ。よしよーし、おいでおいで〜」
シーフ「あ! 馬鹿! 触るなっ!!」
フレア「へ?」
SE:バリバリ(フレアが感電する音)
フレア「ヘボボボボばびびびっ!!」
SE:プス〜(黒焦げになった音)
シーフ「あーあ」
エレメント「まだ制御も出来てない、他人の召喚獣に触っちゃいけないのは常識でしょ?」
氷華「本当馬鹿ね」
氷華M「フレアが先に触ってよかった、危うく私もああなるとこだったわ……」
ボルト「氷華のは、タツノオトシゴ?」
氷華「小さいけど、そうみたいね」
エレメント「私は子鹿……可愛い……」
氷華「シーフのは……ネズミ?」
ボルト「うーん、オコジョじゃないかな?」
シーフ「イタチだろ! 見て分かれ!!」
ボルト「鎌まで持ってるよ!」
氷華「鎌鼬ってことかしら?」
フレア「はっ! そうだ私の守護獣!! あーよっかったぁ、無事だった。私が黒焦げになったら、この子も黒焦げになるのかと思って焦ったよぉ」
氷華「黒焦げどころか、火を吹いてるわよこのヒナ」
シーフ「……お、おいフレア。もしかして、そのヒナって……」
フレア「ん? 何?」
エレメント「フェニックス……?」
フレア「へ?」
ボルト「えええ!!! 嘘でしょ!?」
フレア「え……えぇぇぇぇ!!!??」
氷華「声がデカいわよ、馬鹿」
フレア「いや、いやいやいやいや!! ありえないでしょ!? だって、だってフェニックスって不死鳥でしょ!? 伝説の生き物でしょ! ?」
エレメント「落ち着いて。まだ断定出来ないけど、多分そうかもって話よ」
フレア「フェニックス……」
氷華「何にせよ、真の姿を見ることが出来れば判ることだわ」
ボルト「ねぇ……なんか僕、しんどいんだけど……」
フレア「そう言えば、少し体が重いような」
シーフ「守護獣出しっぱなしにしてるからだな」
エレメント「少し休憩しましょ」
氷華「そろそろお昼だし、丁度いいわね」
少しの間
フレア「こらっ待ちなさい!ホルン!!」
氷華「いい? 久遠。お行儀よくよ? そのままジッとしててねぇ……あいたたた!! 霰を降らすのはやめてって!! いたたたっ!」
シーフ「ほらっ! 捕まえたぞチート、ちょこまか走りやがってっ……う、うわぁぁ!! 鎌は禁止! 反則だって!!」
ボルト「皆大変そうだね。ね、ライト」
エレメント「ボルトの守護獣は大人しいのね」
ボルト「うん。エレ姉はどう?」
エレメント「大人しいと言うより、人懐こいって感じね。……ふふふっ……可愛いわねルターナ……」
ボルト「エレ姉……なんか、怖い……」
フレア「あっ! そ、それはジルが大事にしてる壺……ホルンちゃ〜ん、動いちゃだめだからねぇ……」
氷華「久遠! いい加減言うこを聞きなさい!!」
シーフ「チート! 走り回るなっ! あっ氷華! 足元! 避けろ!!!」
氷華「え!? きゃっ!」
フレア「よし、捕まえっあぁ! 逃げられたっ」
氷華「きゃぁぁぁ!!」
フレア「え?」
SE:ドン(ぶつかる音)ガシャーン(壺割れる音)
エレメント「あーあ」
シーフ「あちゃー……」
ボルト「やっちゃった……」
SE:大扉が開く
ジル「何事ですか!? おや? これは……」
フレア「あ、あ、あの私達じゃなくて……」
氷華「これはその、守護獣が……」
ジル「……フレア様、氷華様。食事が終わり次第私の書斎までお越し下さい。いいですね?」
氷華・フレア「はい……」
少しの間
氷華「……」
フレア「……」
ボルト「大丈夫かな? 二人とも」
エレメント「さぁ……ジルのお気に入りの壺を割っちゃったからね」
シーフ「まぁ、ドンマイ!」
氷華「シーフのせいでしょ!?」
フレア「そうだよ! シーフが自分の守護獣を、ちゃんと見てなかったのがいけなかったんだよ!!」
シーフ「う……」
ボルト「僕も一理あると思う」
エレメント「でもそれは二人も同じでしょ?」
フレア「ううっ」
氷華「そうね……」
エレメント「まぁ何を言い合ったってジルに怒られることは変わらないし、早く食べちゃいなさい」
氷華・フレア「……はぁ」
少しの間
氷華「……」
フレア「……」
氷華「何してるのよ、早くノックしなさいよ」
フレア「いやいや、お先にどうぞ」
氷華「私はいいわよ別に」
フレア「気を使ってくれなくていいってば」
氷華「貴方こそ、気を使ってその胸みたいに縮こまらなくていいのよ?」
フレア「なっ!!」
氷華「あら違った? てっきりワザと引っ込めてるんだと」
フレア「引っ込められるかっ!! そもそもなんで胸の話になるのよ!」
氷華「なにやら緊張してるようだから、雰囲気を和らげてあげようと思って親切で言ったあげたのよ」
フレア「そういう氷華はどうなのよ!緊張し過ぎてお腹が痛くなってるんじゃないのぉ!?」
氷華「はぁ? ジルに叱責を受けること位で、私が緊張するわけないじゃない」
フレア「ふーん……。で、本当は?」
氷華「帰りたいお腹痛い……」
フレア「素直でよろしい」
ジル「何してるんです?」
氷華「ひぃぃいい!!」
フレア「でたあああ!!」
ジル「……私は幽霊か何かですか? はぁ全く、さっお入り下さい」
SE:扉が開閉する音
フレア「あの、その……ごめんなさい! ジルの大切な壺割っちゃって……」
氷華「私もごめんなさい」
ジル「私はそんなことでお二人お呼びしたんじゃありませんよ。まぁ確かに壺が割れたことには、少々気落ちしてはいますが……」
氷華「あぁなんかその……」
フレア「うん、ごめん……」
ジル「壺のことは兎も角、それ以外にお二人は反省しなければならないことがあります」
フレア「?」
ジル「私が割れた音を聞いて大広間に入った時、お二人は謝ることよりも先に守護獣の責任にしようとなさいました」
氷華「あっ……」
ジル「守護獣が犯した失態は召喚した者の失態です。加減を間違え、人一人を傷つけ殺めてしまってもです。そして言うことを聞かないのはしっかりと守護獣と向き合えていない証拠です」
氷華「守護獣と向き合う……?」
ジル「ええ。きっと彼らは答えてくれますよ」
フレア「ねぇジルこの写真に写ってる人誰?」
ジル「フレア様? 私の話、聞いておられましたか?」
フレア「もっちろん! んで、誰?」
ジル「はぁ……私の妻です」
フレア「へぇ〜綺麗な人だね!」
ジル「ありがとうございます」
氷華「子供はいないの?」
ジル「身籠ったと聞いていますが、しばらく会ってませんのでなんとも……」
フレア「そっかぁ……」
ジル「さて、話しはまだ終わってませんよ」
フレア「え、今ので終わりじゃないの?」
ジル「いえいえ、そんなまさか。私個人があの壺を気に入っていたことは事実ですが、あれは大切な城の美術品。お二人にはどれだけの事をしてしまったか、知っておいてもらう必要があります」
氷華「こ、これは相当怒ってる……」
ジル「さぁお二人共、覚悟して下さね?」
フレア・氷華「ひええええ!!」
少しの間
SE:扉の閉まる音
フレア・氷華「はぁぁぁああ」
氷華「たっぷりとお灸を据えられたわね」
フレア「しかも壺の価値と魅力まで語られたしね……。尋常じゃないくらい疲れた」
氷華「……向き合う、か……」
フレア「まぁ始まったばっかりだし、今はそんなに焦ることないんじゃない? 私はのんびりやってくつもりだし……氷華?」
氷華「私は必ずマスターしてみせる。あの人に側にいるためにも」
フレア「ちょっと氷華?」
氷華「そうと決まれば、行くわよフレア」
フレア「は!? ど、どこに!!?」
氷華「特訓に決まってるじゃない! これくらいの呪文、さっさとマスターしないと次期王位は勝ち取れないわよ!!」
フレア「待って氷華! 待ってってば!」
N「次回予告。
守護獣を使役するため、修練に励むフレア、氷華、ボルトの元にエレメントが休息をするよう彼らを中庭へと誘う。そこにはエレメントが用意した大量のクッキーが置いてあった……」
N「次回。第五幕、茶会と家」
ボルト「シーフその顔どうしたの?」
…To Be Continued…
初心者の拙い文章ですが、楽しんで頂ければ幸いです。
本作品はユーザー様でなくても、コメント出来るように設定しております。どなた様でも気軽に要望、ご意見、アドバイスがございましたらご連絡ください。
最後までお読み頂き誠に恐縮です。
本作品は『D&K Project』にてボイドラ化、進行中です。
公開はまだ未定なので決まり次第発表いたします。
『D&K Project』ホームページサイトURL
http://dk-project.com/index.html