第三幕 暦と学び
【現代の登場人物】
グランディア王(64歳):穏やかで誰からにも愛される。雷の力を宿す。
ルベリア王子(11歳):現代の王子。ヤンチャで勉強が嫌い。母様が死ぬほど怖い。雷の力を宿す。
【過去の登場人物】
氷華(13歳):フレアに対しての口の悪さは以上。氷の力を宿す。
フレア(13歳):氷華といつも喧嘩している。喧嘩っ早い。炎の力を宿す。
ボルト(11歳):泣き虫だが、決断力と行動力は凄まじい。いつもシーフにからかわれたり、イジメられたりする。雷の力を宿す。
シーフ(16歳):いつもチャラケている。ボルトのことを毎日のようにからかい、毎日のようにエレメントに叱られる。風の力を宿す。
エレメント(15歳):普段は優しい皆のお姉さんだが、怒るとそれなりに怖い。シーフにだけやたらと厳しい。水の力を宿す。
ジル(31歳):5人の世話係、兼魔術講師。温厚な性格だが何処か冷たい。風の力を宿す。
Nナレーション
【配役】 9人 男:5 女:3 不問:1
グランディア♂:
ルベリア♂:
氷華♀:
フレア♀:
ボルト♂:
シーフ♂:
エレメント♀:
ジル♂:
N♂♀(被り推奨):
【被り有り】 6人 男:3 女:3
グランディア/ジル♂:
ルベリア/ボルト♂:
エレメント♀:
シーフ♂/N:
氷華♀:
フレア♀
N「前回までのあらすじ。
無事に狼の群から氷華を救い出したフレアと、ボルト。城を抜け出した理由を問い詰めると、それは、亡くなった父への弔いの花、月下美人を探す為であったと話した。幼い頃に王都の貴族の身勝手な都合で、住んでいた村を消され、反逆者として追われて生きて来た。このような行為が二度と起こらぬようにする為、コロシアムに参加したと語る氷華。その思いを受け、これから先持つであろう各々の隊の名前を決め、目標を高くすることをシーフが提案する。疾風隊、水蓮隊、雷電隊、炎火隊、そして氷輪隊。全員の思いは一つとなり、この国をより良くすることを、その夜、誓ったのであった」
N「氷の華。第三幕、暦と学び」
間【現代】
ルベリア「へぇー! 隊の名前は、そうやって決まったんですね!」
グランディア「中々、センスがいいと思わんか?」
ルベリア「はい! そっかぁ雷電隊か……雷電隊隊長ルベリア……へへっ」
グランディア「そう皆から呼ばれたければ、もっと頑張らないといけない。特に座学をな」
ルベリア「うっ……そ、それより僕はもっと沢山、魔法の勉強がしたいです!」
グランディア「座学もしっかりやっておかないと、隊長にはなれないぞ?」
ルベリア「それは……その」
グランディア「はっはっは! まぁ彼らも、座学はあまり得意ではなかったようだがな」
ルベリア「竜騎士達が?」
グランディア「椅子に縛り付けられるより、魔法を使うことに全員長けていたからな」
ルベリア「竜騎士達はどんな勉強をしていたんですか!?」
グランディア「そうだなぁ、彼らには学校は無いからな、使用人であるジルに座学も魔法も教わっていたんだ」
間【過去】
ジル「というわけで、以下のことをもう一度復習してみましょう。私達の持つ魔力は、ある一定の時期が来ると、大幅に増幅し、そしてある歳を迎えると、増幅の幅が安定してきます。それは何時でしょうか。簡単ですね。ボルト様、答えを」
ボルト「えぇっと、増幅するのは、10代で、安定してくるのは、18歳……」
ジル「正解です。魔力の増幅が10代と曖昧なのに対し、安定するのは、18歳の誕生日を迎えた日と決まっています。何故18歳で安定するのか、この謎は未だ解明はされていません」
フレア「ふあぁ……」
ジル「ですが、ある一つの有力な仮説を研究者達が立てました。そもそも、私達が使う魔法の原動力である魔力は、一体何処から来ているのか。フレア様、わかりますか?」
フレア「ええっ!? えぇっとぉ……パラドギアスソウル?」
ジル「そうです。パラドギアスソウルは私達魔法使いに常に魔力を供給し続けてくれています。ではここで先程の話に戻りましょう。パラドギアスソウルは、初代国王の名前が付けられています。その国王の名前をフルネームで……氷華様」
氷華「パ、パラドギアス・ラエル・マレスト……」
ジル「パラドギアス・ハエル・マレストです」
氷華「うっ……」
フレア「プププ」
氷華「こんのっ……」
ジル「(咳払い)」
氷華「っ……」
フレア「キシシッ」
氷華「くっ」
ジル「では、魔力の増幅が18歳で安定する仮説と、パラドギアス王はどんなお方だったか、フレア様、答えて下さい」
フレア「えっ……えぇとぉ」
氷華「どうしたの? さっさと答えなさいよ。それとも、私が答えてあげましょうか?」
フレア「ゔ〜……わからん……」
氷華「ふんっ(勝ち誇る)」
ジル「はぁ……パラドギアス王はこの国の創設者の一人です。ですが、国が完成する姿を見ることなく、17歳という若さでこの世を去りました。記述によると、18歳の誕生日を迎える前日に亡くなったと記してあります。そしてパラドギアスソウルは、パラドギアス王自身では無いかと言われており、魔力が18歳で安定することもそれと関係しているのではないかと、考えられています」
フレア「今の国王は何代目だっけ?」
氷華「6代目よ。そんなことも知らないの? 本当頭悪いのね」
フレア「なっ……氷華だって、座学が出来ないからここでジルの補修受けてるんでしょ!!?」
氷華「貴方なんかと一緒にしないで!!私は学校そのものに行ったことがないの、だから貴方みたいなのに遅れを取らないよう、自分から進んでここにいるのよ!まぁ元々、貴方と私では頭の出来が違うから、そんなブランク無かったことにしてみせるけど」
フレア「うぐっ……」
ボルト「今のは氷華に賛成かな」
フレア「ええぇ!ちょっとボルト!私の見方してくれないの!?」
ボルト「う、うーん、しないというより、出来ない……かな?」
フレア「ボルトは、仲間だと思ってたのに〜」
ボルト「それ、なんかやだな……」
ジル「さぁさぁ、無駄話をしている暇はありませんよ。この後には、魔術の訓練がありますからね」
フレア「へーい……」
間【現在】
ルベリア「氷華も座学が苦手だったんですか!?」
グランディア「いや、彼女の場合、11年間学校に通えなかったからな、始めの一年は、まず字を書くことから始めたくらいだ。それを思えば、彼女はとても頭が良く、努力家だったんじゃないか?まあ後の二人は真面目に出来なかったみたいだがな」
ルベリア「……」
グランディア「さぁ、話を戻そうか座学はともかく、魔法使いとしては実に優秀だった。一般の成人した者の魔力を、夕に超えていたが、彼らは子供として優秀であった」
間【過去】
フレア「だぁ〜……」
エレメント「お疲れね」
ボルト「う〜……座学苦手……」
シーフ「仕方ねぇよ、座学は何処に行っても必要だからな」
フレア「ていうか……シーフが座学トップってありえないんだけど!!」
エレメント「同感ね」
シーフ「ええぇ!?」
ボルト「問題数も難易度も僕の方が低かったのに、シーフの点数越えれなかった」
シーフ「だって俺満点だもーん、ふごっ!! ……何故殴ったのですか……エレメントさん……」
エレメント「腹の底からムカついたからよ」
シーフ「横暴だぁ!!」
氷華「そもそも、なんでシーフが満点獲れるか、そこが問題よ」
フレア「なにか、コツがあるの? 暗記のコツとか」
シーフ「コツもなにも……ちっせえ頃から耳にタコが出来るくらい、いろいろ聞かされたからな。暗記とかそんなんじゃねぇよ」
ボルト「そっか〜」
シーフ「まっ年の功ってやつだな」
エレメント「何が年の功よ。たかだか17年じゃない」
シーフ「でもエレメントより、1年長く生きてるぜ?」
エレメント「……」
シーフ「待った! 待った!! 暴力反対!!!」
ジル「何をやってるんですか……」
シーフ「おお! ジル! いいところに!!」
ジル「言って置きますが、助けませんよ」
シーフ「そんな殺生な!!」
ジル「紳士たる者、女性の機嫌を損ねるなどあってはなりません」
エレメント「あら、いいこと言うわね」
シーフ「どうやって、こんなじゃじゃ馬の機嫌を取れって言うんだ!! ……あ」
エレメント「覚悟出来たみたいね(笑顔)」
シーフの断末魔が聞こえる(断末魔に被せるように続けて下さい)
フレア「頭はいいのに……」
ジル「デリカシーがありませんね」
氷華「馬鹿とアホは別物よ」
ボルト「じゃぁシーフは、アホなんだね」
シーフ「ぐ、ふっ……(倒れる)」
エレメント「お待たせ(満面の笑み)」
フレア「謎の返り血……」
ボルト「大丈夫? シーフ」
シーフ「ぼう……りょく、は、ん……たい」
ジル「さぁ、授業を始めましょうか。今日は、皆さんの力が今どれ位成長しているか見ますので、順にボムを撃って下さい」
フレア「ボムでそんなこと解るの?」
ジル「ええ、解りますとも。ボムは攻撃魔法でも基本中の基本。その威力が強ければ強いほど、その使い手は魔力が高い事を表します。相手の力量を見る方法としても友好な手段ですね」
ボルト「へぇ!」
ジル「では、ここで復習です。魔法の使用方法には、基本、3パターンの方法があります。ではエレメント様、基本の方法と、その説明をして頂けますか?」
エレメント「放出型、具現型、装填型の3パターンがあり、放出型は魔力を体外に出すこと。体外に出すことで、魔法を直接対象にぶつける事が出来るわ。勿論攻撃以外に使うこともあるし、私なら花に水をやったり」
氷華「ボムも放出型の一つね」
エレメント「具現型は、体外に出すだけじゃなく、形にする方法。召喚魔法がその類ね。そして装填型が、魔術具という特殊な道具に自分の魔力を与えることで、剣や銃に自分の属性を付けることができるわ」
ジル「流石です、素晴らしい説明でした。ですが、もう一つ、基本型とは違い、あまり使われない方法があります。それが……」
シーフ「混合型、だろ?」
ボルト「シーフが復活した」
フレア「混合型……ってなに?」
ボルト「フレアもう忘れたの……?」
ジル「怒りを通りこして、呆れを覚えます……」
シーフ「混合型は混合魔法とも言って、自分の魔力だけじゃなく、2人以上の魔力を混ぜ合わせて使う方法だ。成功すれば強大な力になるが、失敗すると……」
氷華「術者側が多大な深手を負うことになる」
シーフ「せーかーい!」
ジル「強大な力を使えば使うほど、失敗した時の代償は大きくなります。ですので、この方法で魔力を使用することはあまり好ましくないでしょう」
フレア「混合魔法……あ! そう言えば、去年森で氷華が狼に襲われたときにさ、ボルトと一緒に混合魔法使わなかったっけ?」
ボルト「あっそう言えばそうだったね!」
シーフ「え?」
エレメント「貴方達そんなことしたの……?」
氷華「でもあれは混合魔法というより、同時にボムを撃っただけな気がするけど」
エレメント「馬鹿! なんてことしてるの!! 一歩間違えば怪我だけじゃすまないのよ!!」
フレア「うぅ……」
ボルト「ご、ごめんなさい……」
氷華「いや、だからあれは混合魔法じゃ……」
フレア「なにさっ狼相手に腰抜かしてたくせに!!」
氷華「別に腰抜かしてたわけじゃないわよ!!」
シーフ「でも素人なのに、よく失敗しなかったな」
ジル「フレア様とボルト様が心から信頼してた証ですね」
ボルト「どういうこと?」
ジル「『魔法とは自身であり、自身に在らず』」
フレア「何それ?」
エレメント「創設者の一人が残した言葉よ」
ジル「魔法は体力や意思より、心に強く反応します。怒れば、通常の倍の魔力を出し相手を傷つけ、優しい心で使えば誰も傷つけたりはしません。また恐怖すれば、足がすくむのと同じように、魔法も出にくくなります」
フレア「もしかして、あの時氷華が魔法を使えなくなったのって」
氷華「あ……」
ジル「混合魔法は、お互いが心から信頼していないと成功しません。ほんの少しでも相手を疑っていれば、魔力は混ざることなく、衝突し合い自分が痛手を負うことになります。ですから本当に心を許せる者、信頼し信用できる者とでしか混合魔法は成功しません」
ボルト「へへっなんだかちょっと嬉しいな」
フレア「うーん、私は照れ臭いけどね」
シーフ「ってことは、俺ら全員で混合魔法が使えるってことか!」
エレメント「私、シーフだけは信用出来ないわね」
シーフ「なんで!?」
氷華「同感ね」
ボルト「僕も……無理かなぁ」
フレア「あ、右に同じく」
ジル「私も少し考えさせられますね」
シーフ「ジルまで!? なんで!? 皆酷くない!?」
フレア「まぁまぁその分、愛されてるんだよ」
シーフ「何故だろう、嬉しくねぇ……」
ジル「さぁ本題に戻りましょうか。あちらに大岩を5つ用意していますので、そのうちの一つに向かってボムを撃って下さい。それでは最初はフレア様」
フレア「おっけい……(深呼吸)……ボム!!」
SE:爆発音。少しの間
フレア「あ……」
ボルト「あーあ」
エレメント「はぁ……」
シーフ「あちゃー」
氷華「ノーコン。全部砕いてどうするのよ」
ジル「これはこれは……」
フレア「あははは……ごめんなさい」
N「次回予告。
想像していた竜騎士とは、遥に異なった過去にショックを受けるルベリア。そこでグランディアが語った竜騎士達の姿とは……?」
N「次回。第四幕、呪文と責任」
エレメント「……ふふっ……可愛い……」
…To Be Continued…
初心者の拙い文章ですが、楽しんで頂ければ幸いです。
本作品はユーザー様でなくても、コメント出来るように設定しおります。どなた様でも気軽に要望、ご意見、アドバイスがございましたらご連絡ください。
最後までお読み頂き誠に恐縮です。
本作品は『D&K Project』にてボイドラ化、進行中です。
公開はまだ未定なので決まり次第発表いたします。
『D&K Project』ホームページサイトURL
http://dk-project.com/index.html