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氷の華  作者: 店員
2/5

第二幕 絆と輪

【現代の登場人物】

グランディア王(64歳):穏やかで誰からにも愛される。雷の力を宿す。


ルベリア王子(11歳):現代の王子。ヤンチャで勉強が嫌い。母様が死ぬほど怖い。雷の力を宿す。


【過去の登場人物】

氷華(13歳):フレアに対しての口の悪さは以上。氷の力を宿す。


フレア(13歳):氷華といつも喧嘩している。喧嘩っ早い。炎の力を宿す。


ボルト(11歳):泣き虫だが、決断力と行動力は凄まじい。いつもシーフにからかわれたり、イジメられたりする。雷の力を宿す。


シーフ(16歳):いつもチャラケている。ボルトのことを毎日のようにからかい、毎日のようにエレメントに叱られる。風の力を宿す。


エレメント(15歳):普段は優しい皆のお姉さんだが、怒るとそれなりに怖い。シーフにだけやたらと厳しい。水の力を宿す。


ジル(32歳):5人の世話係、兼魔術講師。温厚な性格だが何処か冷たい。風の力を宿す。


Nナレーション



【配役】 9人 男:5 女:3 不問:1

グランディア♂:

ルベリア♂:

氷華♀:

フレア♀:

ボルト♂:

シーフ♂:

エレメント♀:

ジル♂:

N/狼♂♀:


【被り有り】 7人 男:3 女:3 不問:1

グランディア/ジル♂:

ルベリア/ボルト♂:

エレメント♀:

シーフ♂:

氷華♀:

フレア♀:

N/狼♂♀:


※(狼は個人ではなく、演者の皆様全員でやっても面白いです)

N「前回までのあらすじ。

魔法使い達が住まう国で、グランディア国王は、孫であるルベリア王子にこの国で起きた一つの伝説を語っていた。

先代王が開催したコロンビアで勝ち残り、次期王候補者となった、氷華、フレア、ボルト、エレメント、シーフの5人。

規則を破れば候補者の権利剥奪、城からの追放となる。

しかし、夜の外出は禁止とされていたのにもかかわらず、その晩、氷華の姿が無かった。

行方を案じた4人は、氷華を探す為、自分達も規則を侵してしまう。だがそこに4人を見張る影があった……」


N「氷の華。第二幕、絆と輪」



【過去】



シーフ「氷華~? いたら返事しろ~ たっく、どこ行きやがったんだあいつ。早く見つけて帰んねぇと、マジでやばい……禁止事項を破れば次期候補の権利を剥奪か」


エレメント「シーフ! 氷華いた!?」


シーフ「おおエレメントか。いや全然だ。そっちはどうだった?」


エレメント「いいえ。本当どこ行ったのかしら……」


シーフ「敷地内にいないとすると……」


エレメント「残るは、外にあるあの森ね……」


シーフ「行くか?」


エレメント「当たり前でしょ!?」


シーフ「でも見つかったら、俺達までこの城追い出されるんだぞ? それに、このまま放っておけば、次期候補のライバルも減るんだぜ?」


エレメント「確かに、次期候補の権利を剥奪されるのは怖いし、巻き添えなんていやよ……でも行方も理由もわからないまま、ライバルが減るのはもっと嫌なの」


シーフ「けっ、そうかよ……」


エレメント「それじゃぁ、氷華を探しに森に行くわよ!」


シーフ「ちょおっと待った!」


エレメント「わっ! な、なによ、折角キメたのに!」


シーフ「森に行くのは少し待とう」


エレメント「はぁ!? 今の完全に森に行く流れだったでしょ!?」


シーフ「いやまぁそうなんだけど……」


エレメント「何か気になる事でもあるの?」


シーフ「いや、そのぉ……あの森って確か、狼とかいるんだよな……?」


エレメント「…………え……?」



少しの間



ボルト「氷華~」


フレア「悪口女! 悪女! たらし! 高飛車ぁ!! いたら返事しろぉぉ!」


ボルト「フレア、言いたい放題だね」


フレア「真面目に探そうと思ったんだけど、なんか腹が立ってきてさぁ、つい」


ボルト「それじゃぁ返事してくれないよ?」


フレア「うっ……だってぇ」


ボルト「はぁ……。でもこの森、いったい何処まであるのかな?」


フレア「結構歩いたんだけどねぇ」


ボルト「氷華、本当にこんな所にいると思う?」


フレア「敷地内はエレ姉とシーフが探してくれてるから、私達がこっち探す方が効率いいでしょ? それに炎使いと雷使いなら、暗闇でも探せるしね」


ボルト「うん、そうだね。でも、もし森の中にいるなら早く見つけないと。この森、結構出るし」


フレア「何が!?」


ボルト「え、何がって……フレア知らないの?」


フレア「し、知らないわよ!!」


ボルト「そっか、フレアが知らないなら、氷華も知らないかもしれないね。急いで見つけないと」


フレア「ちょっとボルト! 言いなさいよ! この森に何がいるのよ!?」


ボルト「あ、うん。えっとね……あーえっと、お化け?」


フレア「ひっ! や、やっぱり!?」


ボルト「……フレアお化け怖いの?」


フレア「え!? べ、別にぃ怖くなんてないわよ」


ボルト「ふーん……あのね、昔、僕らのいるお城に住んでたある貴族の話なんだけど、その貴族は王様の怒りを買っちゃって、お城を追放されちゃったの」


フレア「え、ちょっと……ボルト?」


ボルト「でも貴族はお城以外住むあてがなくって、満月の夜にこの森で狼に食べられて死んだんだって。以来満月の夜にあのお城に住む人が森を訪れたら、狼の姿でその人のことを……」


フレア「ひっ」


ボルト「食い殺しに来るんだって」


フレア「いやあぁぁぁぁ!!」


ボルト「ていう噂があるんだ。だからもしかしたら、氷華はもう……」



狼「ワォーン(遠吠え)」



フレア「うわあぁぁ!! さっさと氷華見つけて帰るわよ!」


ボルト「うん」


フレア「どこじゃぁぁ! 氷華ぁぁぁ!!!」


ボルト「へへっ……」



少しの間



氷華「ここにもない……こっちにも。ここら辺にあるはずなのに。早く見つけて今日中に帰らないと……ここは? 違う……こっち、もない……あそこ、月の光が当たって……あ、あった!!」


氷華「この花だわ! やっと見つけた。早くお城に戻らないと……」


氷華「嘘、でしょ? ……狼?」


狼「グルルッ……」


氷華「いやっこっちに来ないで……」


狼「ヴァウッ!」


氷華「きゃっ! グレイシアス!!」


狼「キャンッ!」


狼「ヴァワウッ!」


氷華「来ないでぇ!! グレイシアス! グレイシアス! グレイシアス!」


狼「キャウンッ……」


氷華「抜けれる!! 今だわ!」



間【現代】



ルベリア「……幽霊、ですか……?」


グランディア「どうしたルベリア」


ルベリア「あの森には……幽霊がいるのですか……?」


グランディア「なんだ、ルベリアも幽霊が怖いのか?」


ルベリア「い、いえ! 別にそういうことじゃないですよ!」


グランディア「……ちなみに、あの森には他にも……」


ルベリア「お、おおおお爺様!! 俺、話の続きが聞きたいです!」


グランディア「この話も面白いんだがなぁ」


ルベリア「そ、それで!? その後どうなったんですか!?」


グランディア「ん? あぁ、氷華を森に探しに出たエレメントとシーフは、森の入口で立ち往生していた。夜の森は暗く、明かり一つない闇に包まれていた」



間【過去】



シーフ「ええぇ、くらあぁ」


エレメント「本当に真っ暗ね……」


シーフ「どうするよ?」


エレメント「どうするって、どうにもできないわよ」


シーフ「うーん、やっぱフレアとか連れてくれば良かったな」


エレメント「そうね……ちょっと後悔してるわ」


シーフ「行くっきゃないか……」


エレメント「覚悟して行きましょ」


シーフ「…………うあー! やっぱり嫌だぁ! ……あ」


エレメント「男なんだから、うじうじしないの」


シーフ「エレメント、後ろ」


エレメント「え、何? どうしたの ……あ」



少しの間



フレア「氷華ぁ~どこ行ったぁ~」


ボルト「ん……」


フレア「ん? どうしたのボルト?」


ボルト「なんか、寒い……」


フレア「え? ……本当だ、火を出したままだったから気づかなかった……」


ボルト「ねぇこれって……?」


フレア「間違いないわ、氷華の魔法よ」


氷華「きゃぁぁ!!」


ボルト「!? 今の!」


フレア「こっちからよ!!」



少しの間



氷華「はぁ……はぁ……」


狼「グルルッ……」


氷華「もう! しつこいわね! グレイシアス!!」


狼「ヴァウッ!」


氷華「ひっ……グ、グレイシアス!! ……あ、れ? グレイシアス! グレイシアス! どうして出ないの!? 出て! お願い出て!! 出ろおぉ!!!」


狼「グルルッア」


氷華「いや……来ないでぇ」


狼「ヴァワウ!!」


氷華「や……たすけて、誰か……」


フレア「氷華ぁぁぁぁぁ!!!」


氷華「フレ、ア……? っ……フレアァァ!!!」


フレア「ボムっ! 大丈夫!? 氷華! ……って、狼ぃ!?」


ボルト「よかった! 無事だったんだね!」


氷華「ボルト……」


フレア「なんで狼なのさぁ!」


ボルト「知らずに攻撃したの?」


フレア「ちょっと、何してるよ氷華! さっさと立って、戦いなさいよ!」


氷華「わ、私……」


ボルト「フレア、もしかして氷華、魔法が出ないんじゃない?」


フレア「はぁ? 出ないって何それ? ああもう! 今そんなこと言ってる場合じゃないわ!! あんたはそこでジッとしてて! ボルト!」


ボルト「何?」


フレア「あの狼どうやって倒すの?」


ボルト「……え?」


フレア「だってあれ、さっき言ってた幽霊でしょ!?」


ボルト「あぁ……まだ気にしてたんだ……」


フレア「早く教えなさい、うをっと!!」


狼「ヴァウッ!」


ボルト「大丈夫!? フレア!」


フレア「私は平気! それで!? なんかないの!?」


ボルト「ボムっ!! ……一人じゃ、火力が低く過ぎる……そうだ! フレア!」


フレア「ボムっ!! 何!」


ボルト「飛び掛かって来たら、僕とフレアの魔法を合わせて同時にボムを撃って!」


フレア「え!? そんなこと出来るの!?」


ボルト「分からないけど、わわっ! こ、混合魔法って聞いたことあるから、やってみる価値はあると思う!」


フレア「わ、わかった!」


狼「グルルッ……」


ボルト「いくよ……せーの」


狼「ヴァウッ!」


フレア・ボルト「「ボム!」」



SE:爆発音



狼「ギャンッ!」



狼が逃げて行く



ボルト「はぁ……はぁ、やった…」


フレア「はぁ、はぁ、よっしゃぁぁぁ!! 見たかぁ!! 死んだ奴より、生きてる奴の方が強いんだぞ!!」


ボルト「ははは……」


フレア「氷華大丈夫!?」


氷華「あ、フ、フレア……」


フレア「なによ?」


氷華「うっ……うえええぇぇぇん!! ゔれあぁぁぁ」


フレア「はあ!? ちょっと、何いきなり!? 離れなさいよ!!」


氷華「うあぁぁぁん、ごわがっだぁぁ……」


フレア「…………はぁ……うん、もう大丈夫だから」


ボルト「……(少し笑う)」


シーフ「氷華!」


エレメント「皆無事!?」


フレア「シーフ、エレ姉」


ジル「全く、何をやっているのですか? 貴方達は……」


フレア「ジ、ジル!!?」


エレメント「ごめんなさい、見つかっちゃったの」


シーフ「フレアとボルトが森に入ったことまで知ってたんだから、驚くよなぁ」


ジル「皆様の行動は全てお見通しですよ」


シーフ「まるでストーカーだな」


ジル「なにか仰いましたか?」


シーフ「べっつにぃ」


ジル「はぁ、全く……とにかく城に戻りましょう。この森にいる獣は狼だけじゃありませんから」


エレメント「そうね」


フレア「あのさ、氷華」


氷華「?」


フレア「そろそろ、離れて」


氷華「……っ!? な、何してんのよ! あんた!!」


フレア「はぁ!? 泣きついて来たのはどこのどいつよ!!」


氷華「う、うるさいわね!! 貴方が怖かっただろうからと思って、私は……」


ボルト「ところで氷華は何しに森に入ったの?」


氷華「そうだったわ! ジル! 今何時!?」


ジル「後、15分ほどで日付が変わりますね」


氷華「ここから、お城の礼拝堂まではどれくらいかかる!?」


ジル「歩けば、2、30分ほどでしょうか」


氷華「そんな……」


ボルト「どうしたの、氷華?」


氷華「今日中に、礼拝堂に行かないと意味がないの」


シーフ「なんの話だ?」


ジル「氷華様、私は、歩けばと言ったのですよ?」


エレメント「どういうこと、ジル」


ジル「『永久(とわ)に漂いし、我が守護神よ。我の身と心を糧に、汝との誓いをたてる。ホーリス』」


フレア「風が……馬の形に……」


ボルト「ペガサス……?」


エレメント「これ、守護神召喚魔法……すごい高度な魔法よ」


氷華「しかも3頭」


ジル「さあ、これに乗って行きましょう。これに乗っていけば、5分とかからないでしょう」



少しの間



フレア「すごい! 飛んでる!」


シーフ「いいなぁ、俺も乗りてぇ」


氷華「シーフは自分で飛べるんだから、いいじゃない」


シーフ「ちぇ」


エレメント「……」


シーフ「ん? どうしたんだエレメント」


エレメント「なんでもないわ」


シーフ「のわりには、顔が真っ青だぜ?」


ジル「酔いましたか? なんなら、エレメント様だけでも降りて休憩なさいますか?」


エレメント「いえ、平気よ」


シーフ「いや、でもよ……」


エレメント「高い所が苦手なだけなの!! 放ておいて!!」


シーフ「ご、ごめん……」


ボルト「エレ姉高い所だめだったんだ」


フレア「意外ね……」



少しの間



ジル「さ、着きましたよ」


氷華「……ええ、ありがとう」


ジル「あっと……シーフ様」


シーフ「なんで、止めるんだよジル」


フレア「シーフ、少し一人にしてあげよう」



氷華「……お父さん……ほらこれ、月下美人。私が摘んできたんだ、途中いろいろ事故はあったけど、皆が助けてくれたから無事に摘めたよ……あ、フレアは別よ! 私、炎の使い手の奴は、皆野蛮で、馬鹿だと思ってるから! ……でも、フレアは少し違う気がするの……あいつらとは……私頑張るから、見ててねお父さん。私が王になれなくても、きっと、皆なら……」



ジルとエレメント以外が倒れる。(「うわぁ!」とか、「ぎゃっ!」など、声の効果音)



シーフ「いてて……」


フレア「ちょっとシーフ、上に乗ってないで早くどいてよ」


ボルト「重たいよぉ」


氷華「何してるのよあんた達……」


ボルト「あ……へへへ……」


シーフ「いやぁちょっと気になってさぁ」


フレア「あははは……どもっ」


エレメント「馬鹿丸出しね」


ジル「やれやれ……」


氷華「はぁ、……いいから、入って来たら?」


フレア「いいの?」


氷華「別に。見られて困るものないし……」


シーフ「この花は?」


ボルト「白くて、おっきくて、綺麗だね」


氷華「月下美人。月が出てる夜にしか咲かない花なのよ。しかも、年に何度かしか咲かないの。今日咲いてたのは奇跡ね」


エレメント「成程、だからこの時間に森に行ってたのね」


ジル「ですがどんな理由があろうとも、夜に外出することは許されません」


氷華「わかってる。悪かったと思ってる。皆にあんなに心配かけさせてしまったんだもの」


フレア「じゃぁさ、皆に心配かけた罰として、話してよ」


氷華「は?」


フレア「どうして、その花をとりに行かなきゃならなかったのか」


氷華「……!」


フレア「ね?」


氷華「……そうね、話すわ。この花は、元々母が好きだったのよ。母は、私の小さい頃に亡くなったから、私はこの花に思い入れはあまりないのだけど、父が好きでね。この花を見ていると、母さんを思い出すんだっていつも言ってたわ」


エレメント「何か理由があるの?」


氷華「月下美人の花言葉は、強い意志、ただもう一度会いたくて。これは想像だけど、父はもう一度母に会いたかったのかなって」


エレメント「ロマンチックね」


氷華「ええ、とっても」


ボルト「今お父さんは?」


氷華「もう、いないわ」


ボルト「あ、ごめんなさい……」


氷華「いいのよ。父は旅の途中で病死したの。今日がその命日」


エレメント「だから今日中じゃないといけなかったのね」


シーフ「そいやぁ氷華って、この国の名前じゃないよな?」


氷華「母はこの国の人間で、父は隣の国の人間、まぁ私はそのハーフってことね。私の住んでた村は小さくて貧しく、今じゃ地図からも消されたわ」


フレア「なんで地図から消えたの?」


氷華「私が生まれたばかりの時、村に王都の兵士達が来て、この村は王都の私有地となった、今ここに住まう者は即刻立ち去れ。抵抗すれば、反逆者として連行するって言われたらしいの。今、私達の村は王都の端っこにあるわ。まぁ元の名前なんて載ってないけど」


ジル「横暴、ですね」


ボルト「抵抗しなかったの?」


氷華「もちろん、村人全員で抵抗したそうよ。でも村の貧弱な武器じゃ勝負にすらならなくて、そのまま村人の殆どが捕まったわ」


フレア「氷華達はどうしたの?」


氷華「……王都の兵士達とやり合ってる中、父は家族で逃げることを選んだわ。私は決してその行動を非難したりしない。負けることは火を見るよりも明らかだったもの、懸命な判断よ。でも、逃げてる最中、見張りをしていた兵士に見つかって……母は私と父を庇って死んだわ……炎使いの兵士だったそうよ」


ボルト「それで、あんなにフレアのことを……」


氷華「あら、勘違いしないで。フレアのことは本当にただの馬鹿だと思ってるから」


フレア「あんたねぇ……」


ジル「フレア様」


フレア「うっ……」


ジル「どうぞ、続けてください」


氷華「ありがとうジル。それから私達は反逆者扱い。あっちこっちを転々としながら、王都の手を逃れて来たの。父はその途中で亡くなったわ」


ジル「氷華様は、王都の者を恨んではいないのですか?」


氷華「私、そこまで子供じゃないわよ。そりゃ始めの頃は恨んだこともあった、でも王都の住民全員が悪いわけじゃない。もし恨んでるとしたら、母を殺した兵士と、それを命令した貴族ね。でも生憎、その貴族は7年も前に他界したそうだけど」


ジル「そうですか……」


氷華「コロシアムが開かれると知ったとき、あんなことが二度と起きないようにしたくて、王になる為にコロシアムに参加したのよ」


ボルト「そうだったんだ……」


氷華「父はこの花を眺める度にとても悲しそうな顔をしてた。父にとって、母が全てだった、それと同じように、私にとって父が全てだったから、もうあんな顔見たくなくって」


ジル「月下美人の花言葉、意志の強さと、ただもう一度会いたい……氷華様のお父様と、お母様がこの花が好きだった理由がわかりますね」


エレメント「私達の誰が王になっても、氷華の目標は皆で達成させましょ」


氷華「ありがとう、エレ姉」


シーフ「はーい提案!」


フレア「なによ、シーフ」


シーフ「あのさ、一人が王になってそれ以外は隊を持つわけじゃん?」


エレメント「え、ええ、そうね」


ジル「厳密には、4つの隊と、王専属の近衛隊とで5つです」


シーフ「でさぁ、名前とか決めない?」


ボルト「隊の?」


シーフ「そう!」


フレア「なんで、今……」


シーフ「今決めといたほうが、そのときに悩まなくていいし、名前がある方が目指しやすいじゃん」


エレメント「そうかしら?」


ボルト「でも、でも、確かに名前がある方が現実味があって、持ってからのこと色々考えられるもんね!」


シーフ「だよな!」


フレア「男の子の考えることは……」


エレメント「わからないわぁ」


ボルト「名前どうやって決めるの?」


シーフ「うーん……そうだ! 氷華!」


氷華「な、何?」


シーフ「親父さんの国の言葉ってわかるか?」


氷華「え、ええまぁ」


シーフ「俺らの名前に当てて、付けてくれねぇ?」


氷華「いいわよ……そうねぇ、まずシーフは風だから、疾風とか?」


シーフ「おお! 疾風隊か! なんかかっこいいな!」


氷華「エレ姉が水で……水蓮」


フレア「なんか、綺麗でエレ姉っぽい!」


エレメント「そ、そう?」


氷華「ボルトは、雷電。フレアが、炎火」


ボルト「雷電……へへっ」


フレア「なんか、私のすっごい燃えてない?」


シーフ「あとは、氷華か」


氷華「私のは別に……」


エレメント「ねぇ氷華、氷に輪でなんて言うの?」


氷華「氷輪(ひょうりん)かしら?」


フレア「ひょう、りん?」


エレメント「氷で皆の輪を繋げるって意味にしようと思って」


ボルト「わぁ! いいね、それ!」


フレア「ちょっと、楽しくなってきたかも……」


シーフ「なぁ! 名前付けると、雰囲気出て、楽しいだろ?」


ジル「あの〜皆様、少しお忘れのようですが」


ボルト「何、ジル?」


ジル「皆様は今日、規則を破られたのですよ?」


フレア「あっ」


ボルト「うぅ」


シーフ「そうだった……」


エレメント「すっかり忘れてた」


氷華「ジル、罰なら私一人で受けるわ」


ボルト「でも氷華さっき……」


氷華「だから話たの。話しておけば、貴方達の誰かが王になっても、きっとやってくれると思って」


ジル「それには及びませんよ。氷華様」


氷華「え?」


ジル「今回のことは、陛下には報告いたしません」


ボルト「本当に!?」


ジル「ええ」


シーフ「さっすがジル」


ジル「で、す、が! 次に何かあれば、その時は報告させて頂きます。今日は氷華様のお父様に免じて目を瞑りましょう」


氷華「ありがとうジル」


ジル「さぁ氷華様のお父様に、ご冥福をお祈りしましょう」


シーフ「え、まさか……やるの?」


ジル「勿論です」


シーフ「ええぇぇぇぇ」


ジル「さ、合掌して」


エレメント「氷華のお父さん。私達の誰が王になっても、全員で協力してこの国をより良い国にして行きます」


ボルト「ぼ、僕頑張ります!」


シーフ「親父さんの(かたき)、絶対打ってやるから、安心して寝てな!」


ボルト「敵って……シーフ、命令した貴族はもういないから、敵はとれないよ?」


シーフ「あ、そっか! あははは!」


エレメント「はぁ……」


氷華「フレア……」


フレア「なに?」


氷華「その、今日は……あの、あ、あり、がとう……助けに来てくれて……」


フレア「……氷華の泣き虫、意地っ張り、無鉄砲、馬鹿、間抜け」


氷華「貴方ねぇ、人がせっかく……」


フレア「そうやって素直にしてる方が私はいいと思うけど?」


氷華「!?」


フレア「きっと氷華のお父さんも、そうしてて欲しいんじゃない?それと、お父さんはお母さんのことだけじゃなくて、氷華のことも大好きだったと思うよ」


氷華「……ばっかじゃないの」


ジル「……氷華様のお父様、我らの(しゅ)と共に、我々をこれからもお見守りください。父と、子と、聖霊のみ名によって、アーメン」


5人「アーメン」



氷華M「お父さん。私、初めはお父さんがいなくなって、辛かったし寂しかった。王都の人達のことも恨んだ。このお城に行くことになった時も本当は怖かったよ? ここにいる皆のことも嫌いだった……でも私、今、とっても幸せだから、安心してね」



N「次回予告。

若者なら誰もが避けて通れぬ物、それは勉強。ジルから投げかけられる数々の質問、5人は上手く答えることが出来るのか……?」


N「次回、氷の華。第三幕、暦と学び」


氷華「馬鹿とアホは別物よ」



…To Be Continued…


初心者の拙い文章ですが、楽しんで頂ければ幸いです。

本作品はユーザー様でなくても、コメント出来るように設定しております。どなた様でも気軽に要望、ご意見、アドバイスがございましたらご連絡ください。


最後までお読み頂き誠に恐縮です。



本作品は『D&K Project』にてボイドラ化、進行中です。

公開はまだ未定なので決まり次第発表いたします。


『D&K Project』ホームページサイトURL

http://dk-project.com/index.html

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