第一幕 仲と溝
【現代の登場人物】
グランディア王(64歳):穏やかで誰からにも愛される。雷の力を宿す。
ルベリア王子(11歳):現代の王子。ヤンチャで勉強が嫌い。母様が死ぬほど怖い。雷の力を宿す。
ジュリア王女(32歳):ルベリアの母。厳しく、飴を与えることは殆どない。しかし誰よりもグランディア王とルベリアを愛している。水の力を宿す。
ミラク(45歳):使用人で苦労人。ルベリアの世話係。ベテランだが、どこかおっちょこちょい。力は持っていない。
【過去の登場人物】
氷華(12歳):フレアに対しての口の悪さは以上。氷の力を宿す。
フレア(12歳):氷華といつも喧嘩している。喧嘩っ早い。炎の力を宿す。
ボルト(10歳):泣き虫だが、決断力と行動力は凄まじい。いつもシーフにからかわれたり、イジメられたりする。雷の力を宿す。
シーフ(15歳):いつもチャラケている。ボルトのことを毎日のようにからかい、毎日のようにエレメントに叱られる。風の力を宿す。
エレメント(14歳):普段は優しい皆のお姉さんだが、怒るとそれなりに怖い。シーフにだけやたらと厳しい。水の力を宿す。
ジル(31歳):5人の世話係、兼魔術講師。温厚な性格だが何処か冷たい。風の力を宿す。
N
【配役】 11人 男:5 女:4 不問:2
グランディア♂:
ルベリア♂:
ジュリア♀:
ミラク♂♀:
氷華♀:
フレア♀:
ボルト♂:
シーフ♂:
エレメント♀:
ジル♂:
N♂♀:
【被り有り】 6人 男:3 女:3
グランディア/ジル♂:
ルベリア/ボルト♂:
ジュリア/エレメント♀:
ミラク/シーフ♂:
氷華♀/N:
フレア♀:
N「ここは、魔法が存在する世界。
魔法こそが全て。この世の均衡は全て魔法で保たれている。
魔法、それは強く、そして美しい
だが同時にそれは、時に人を傷つけ、自らも傷つける、
力なき者の命を奪う禁忌の力でもある。
これから始まる物語は、そんな魔法を使いし者達が織り成した伝説の物語である。」
N「氷の華。第一幕、仲と溝」
【現代】
ミラク「王子! ルベリア王子!! はぁ、どこに行かれたのでしょうお勉強の時間ですよ! 王子! また母上様にお叱りを受けますよ!」
ルベリア「たっくもう、勉強の時間が一番嫌いなんだって」
ミラク「いた!!」
ルベリア「うげっ見つかった!」
ミラク「追い詰めましたよぉ、早くお部屋にお戻り下さい!」
ルベリア「やだね! 勉強なんてしないよぉだ! 大体魔法も使えないお前の言う事なんて聞きたくないね!」
ミラク「そ、それは……」
ルベリア「今だ!!」
ミラク「あ! 逃げられた! 待って下さいルベリア王子! これ以上逃げるようでしたら、本当に母上様に言いつけますよ!?」
ルベリア「煩い!! 母様が怖くて王子なんかやってられるか!」
ジュリア「私がなんです?」
ルベリア「か、母様……」
ジュリア「何をしてるのですか? ルベリア。何故この時間にここにいるのです?」
ミラク「ジュリア王女様、ルベリア王子はどうしても勉強したくないとおっしゃってまして」
ルベリア「余計なこと言うな!」
ジュリア「そんなに勉強が嫌ですか?」
ルベリア「それはその……」
グランディア「ルベリアはワシによく似たんだろう」
ルベリア「お爺様!」
ジュリア「陛下……」
グランディア「それで今日はどんな勉強をする予定だったんだ?」
ミラク「はい、我が国の歴史についてでございます。特に氷炎開戦を重点的に学んで頂く予定でございます」
グランディア「氷炎開戦か……よしそれならワシが教えよう」
ミラク「え!?」
ジュリア「なにをおっしゃるんです!?」
グランディア「ははは、そんな驚くことではなかろう。氷炎開戦はワシがまだ若かった頃の話だからのお」
ジュリア「ですが……」
ミラク「成る程、我々第3者から話を聞くよりも、当事者である王ご自身からお話し頂く方がよろしいかもしれませんね。その方がきっとルベリア王子も……」
ジュリア「お黙りなさい!!」
ミラク「し、失礼しました……」
グランディア「そう怒鳴るな、品がないぞ?」
ジュリア「申し訳ございません。ですがその話は陛下にとっても辛いことだと……」
グランディア「もうよいのだ。それにルベリアにもそろそろ話そうと思っていたとこだよ」
ルベリア「僕、お爺様から聞きたいです!」
グランディア「この子もこう言ってることだ。丁度いい機会じゃないか」
ジュリア「……わかりました。陛下のご意志のままに」
グランディア「ありがとう。という訳だ、すまないが講師達には今日は休むよう伝えてくれ」
ミラク「かしこまりました」
グランディア「ルベリア、こっちにおいで」
少しの間
グランディア「ルベリア、話す前に聞いて置きたいことがある」
ルベリア「なんですか?」
グランディア「お前は魔法をどう思う?」
ルベリア「魔法は綺麗で強くてかっこいい力だと思います!」
グランディア「そう、魔法は美しく強い。だがその反面とても危険な力だ。簡単に相手を傷つけ、時には自身をも傷つける。わが王家は代々魔力を宿した者が受け継いできた」
ルベリア「魔法には種類があるんですよね?」
グランディア「何があるかわかるか?」
ルベリア「水、風、雷、炎、あと……氷!」
グランディア「よく勉強してるじゃないか」
ルベリア「へへっ」
グランディア「王となる者はそのどれかを受け継ぎ、その力の象徴として国を守るんだ」
ルベリア「僕にはお爺様と同じ雷の魔力が宿ってるんですよね!」
グランディア「あぁそうだとも。雷は電気だ。多くの人の孤独な夜に明かりを灯すことが出来る。他の力にもそれぞれの役目がある、決してどれか一つだけが重要というわけではない」
ルベリア「それぞれの力が平等に均衡がとれてこそ、国や世界が安定するんですよね」
グランディア「その通りだ……ルベリア、今から話すことは実際にあった話だ、決して繰り返されてはいけない。きっかけは先代王の心配事からだった。彼は跡取りについて酷く悩んでいた。王になるには統率がとれ、民を愛し、何にも負けない意思の強さ、そういった素質が無ければならない。だが彼は素質より魔力の強い者を求めたんだ」
ルベリア「どうして力の強さを求めたんですか?」
グランディア「彼は自国が攻め落とされるのではないかと心配で仕方なかったんだよ」
ルベリア「そんなのあり得ないですよ! 我が国は唯一魔力を持つ者が住まう国なんですから! 負けるはずありません」
グランディア「はっはっは。そうだな、確かに要らぬ心配かもしれん。それでも彼は心配だったんだ。不幸か幸いか、彼には子供がいなかった、そこで彼は思いついたんだ、いないのなら見つけ出せばいい。その方法は」
ルベリア「ミスチャコロシアム!」
グランディア「そうだ、正式には『ミステリア チャーム コロシアム』。そこに彼は10歳から15歳の子供を集め、それぞれの種族どうしで戦わせた。勝ち残った5人の子供を後継ぎの候補として迎え、育てる為にな。大会は身分関係なく魔力を宿した子供がこぞって参加しておった。勝ち残ったのは水使いのエレメント、風使いのシーフ、雷使いのボルト、炎使いのフレア、氷使いの氷華。そして後に彼らは竜騎士と呼ばれるようになる」
ルベリア「伝説の竜騎士のこと!?」
グランディア「ああ。彼らは誰もが羨むほどの仲だった、互いを心から信じ合い背中を預けていた。今から話すのは、コロシアムが開かれて丁度1年ほど経った日のことだ」
間【過去】
シーフ「いやっほぉ〜!!! おい、どうしたボルト! もうバテたのか?」
ボルト「ズルいよシーフ、風で空を飛ぶなんて」
シーフ「何でもありって言ったろ? 文句言ってる暇があったら捕まえてみろよ! じゃないとお前の分のデザートは俺が貰うからな!!」
ボルト「あ! 待ってってば! もう……勝てっこないよこんなの。どうやっても体を浮かしたり出来なきゃ……浮かす? そうか!」
シーフ「ん? なんだもう諦めたのか? 情けないなぁボルトは」
ボルト「地面と自分の体の間に集中して(ボソボソと言う)」
シーフ「おい、聞いてるのかボルト……え?」
ボルト「やった浮い……うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
シーフ「うおっ危ね!!」
ボルト「助けてシーフ! 止まらな、あ、止まった……ふぇ? う、ぎゃあああぁぁぁぁ!!!! 今度は落ちるぅぅ!!」
シーフ「えええええ!?」
ボルト「助けてぇぇぇぇ!!!」
エレメント「エフルエント」
ボルト「……あ、れ? 助かった……これは、水?」
シーフ「水が滑り台みたいになってる」
エレメント「大丈夫? ボルト」
ボルト「エレ姉! うん! 大丈夫、ありがとう!」
エレメント「そのまま水に乗って滑って来て」
シーフ「すっげぇなエレメント! あんなことも出来るのか!」
エレメント「シーフ……」
シーフ「え? なnゴフッ!!」
エレメント「あんたって奴はぁ」
シーフ「ゲホッゲホッはぁ!? 何!? 俺が何したの!?」
エレメント「ボルトを空まで飛ばすなんて、あんた以外誰がいるのよ」
シーフ「違うって! あいつが勝手に!!」
エレメント「嘘をつくんじゃないの」
ボルト「待ってエレ姉本当にシーフじゃないんだ! 僕が、その、自分の力で飛んだんだ……」
エレメント「ボルトが、自分で?」
ボルト「うん!」
エレメント「でも、どうやって……」
ボルト「あのね、シーフを追いかけてたんだけど、シーフってばすぐ空飛んじゃうからなかなか捕まえられなくって。どうにかして体を浮かす事が出来ないかなって思って、磁石の要領で自分の体の中と地面にマイナスの磁気を発生させたら、体は浮いたんだけど……」
シーフ「制御出来ずに飛んでったってわけか。あいや、吹っ飛んだの方が正しいな」
ボルト「えへへ」
エレメント「そんなことが……凄いわボルト! すぐ陛下にご報告しないと!」
シーフ「あのぉ、俺への謝罪はなし?」
エレメント「でも、どうしてシーフを追いかけることになったの?」
シーフ「ぎくっ!」
ボルト「だってシーフが捕まえないと今日のデザート全部獲るって言うから」
シーフ「そぉ〜……」
エレメント「シ〜フ〜?」
シーフ「はいっ!!」
エレメント「自分より小さい子を虐めるなんて……覚悟出来てるんでしょうね?」
シーフ「ちょ、ちょっと待って! さっき誤解で殴ったじゃん! それでチャラでしょ!?」
エレメント「あんたには2発でも足りないくらいだわ」
シーフ「ちょ! 本当待って……」
エレメント「問答無用」
間
フレア「あ〜ぁまたエレ姉に怒られてる」
氷華「懲りないわねシーフも」
フレア「バカだねぇ」
氷華「貴方ほどじゃないでしょ? フレア」
フレア「は?」
氷華「あら、聞こえなかった? 脳みそどころか、その耳も飾りなのかしら?」
フレア「あのねぇ氷華、人をバカにするのもいい加減にしなさいよ」
氷華「はぁ? バカにする? バカにするって言うのは、普通以上の人をコケにすることを言うの。元々貴方はバカだから私は本当の事を言ったまでよ。遊んで叫んで、努力も勉強もせず……これで次期候補だなんて飽きれる、私の方がよっぽど王に相応しいわ」
フレア「黙って聞いてれば……」
氷華「何か文句でもある? 貴方のような脳みそも胸も小さい女が、私に意見するの? まぁ貴方の意見なんてお猿が言葉を覚えた程度ですけどね」
フレア「胸関係ないでしょ!! 私はこれからなのよ! ああもう!! 本と腹の立つ奴ねぇ!!! その舌引っこ抜いてやろか!?」
氷華「あら怒った? 短気ねぇ。これだから炎使いは嫌なのよ。私の氷でその火照った頭を冷やしてあげましょうか?」
フレア「はっあたしとやろうってんの? いい度胸ねあんたの氷全部溶かしてやるわ」
氷華「私からすれば貴方の炎なんてマッチの火以下よ。すぐに鎮火して差し上げるわ。貴方の魔法もその頭もね?」
フレア「てんめぇ!!! ブフっ! つ、冷たぁぁ!!」
氷華「ゲホッこれ、エレ姉の水……」
エレメント「頭冷えた?」
ボルト「フレアも氷華も喧嘩しちゃダメだよ」
シーフ「暴力は、だ……め……」
ボルト「なんだかシーフが言うと説得力があるね……」
氷華「もお〜下着までビショビショじゃない!」
フレア「冷たい……着替えたいよぉ……」
エレメント「全く。こんな所をジルに見られたら、あなた達だけじゃなく、全員怒られちゃうんだからね、わかった?」
フレア「へーい」
氷華「はーい」
ボルト「あ! ジルがこっちに来る!」
シーフ「噂をすればだね」
ジル「こんにちは皆様。先程エレメント様の水魔法が見えましたが、何か問題でも?」
エレメント「いえ、何でもないわ。魔法のテストを氷華とフレアに行っていただけよ」
ジル「そうでしたか。では、ボルト様の雷魔法は?」
ボルト「あ、あのね! 僕体を浮かす事が出来るようになったの! あいや、まだ制御が出来ないから、取り敢えずは体を浮かせる事が出来るのが解ったくらいだけど……」
ジル「それは素晴らしい! 直ぐに陛下にご報告しなければなりませんね。しかし、ここは魔法使用許可の区域とはいえ、訓練以外での魔法の使用は控えるように話した筈です」
シーフ「いいじゃねぇか、俺らの魔法をどう使おうが俺らの勝手だろ?」
ジル「シーフ様貴方もですよ」
シーフ「結局全部見てたのかよ」
ジル「それに皆様だけのものではありません。いつかはこの中の誰かが次期王としてこの国を守っていかなければならないのです。いつ戦争が起こってもおかしくない状況ですから、いついかなる時も皆様には万全の体制で居て頂かなければならないのです」
シーフ「戦う為に?」
ジル「逃げて生き延びて頂く為にですよ」
シーフ「はぁ? でも俺らは……」
エレメント「(遮る)わかったわジル、私達が悪かった。でも私達も一歩でも早く成長したかっただけなの、それは解って」
ジル「ええ、勿論ですとも。私は皆様の魔術講師で有りながら、皆様の世話係でもあります。この城の中では誰よりも皆様を解っているつもりです。ですがそれと同時に、私がこの城の中で誰よりも皆様のことを心配していることもお忘れなきよう」
エレメント「ええ解っているわ、ありがとうジル」
シーフ「……」
ジル「それでは皆様、もうすぐ夕食の時間です。そろそろ大広間にお集まり下さい」
シーフ「よっしゃぁぁぁ!!!! 飯だぁぁ!!」
エレメント「単純……」
ジル「今宵は満月。庭に咲く、月に照らされた花達を愛でながらお食事にいたしましょう」
氷華「満月……花……」
シーフ「なんだよ花を愛でるって!? 男のくせに気持ち悪いこと言うなよ」
ジル「そんなことないですよ」
ボルト「僕、お城の外で、ご飯食べたいな……」
ジル「申し訳ありませんボルト様。それは出来ないことです。貴方がたは外との接触を一切禁じられていますから。禁止事項を一つでも破れば、次期候補の権利を剥奪。ここから出て行ってもらいます」
ボルト「うん……わかってる」
フレア「いいから早く行こうよ! 私もうお腹ペコペコ」
ボルト「僕もお腹減った」
エレメント「そうね。どうしたの? 氷華」
氷華「いえ、何でもないわ」
エレメント「なら急ぎましょ」
氷華「ええ、今行くわ」
間
ジル「さっ、席に着いたら合掌して下さいね」
シーフ「え……またやるの?」
ジル「またではなく毎日するのです。それでは……父よ、あなたの慈しみに感謝してこの食事を頂きます。ここに用意されたものを祝福し、私達の心と身体を支える糧として下さい……父と、子と、聖霊のみ名によって、アーメン」
5人「アーメン」
ジル「さぁ頂きましょうか」
シーフ「この祈りの時だけは苦手なんだよなぁ」
エレメント「仕方ないわよ。ジルはクリスチャンなんだから」
シーフ「でもなぁ」
エレメント「つべこべ言わずにさっさと食べなさい」
フレア「ぷはぁ! うまい!! もう一杯!!」
氷華「ただの水じゃない」
フレア「その水が美味しいんでしょうが」
氷華「呆れた。それより水ばっか飲んでないで、食べなさいよ。野菜、特に人参がえらく残ってるじゃない」
フレア「え、人参……」
氷華「?……(ピーン)あらぁもしかして、フレアは人参が食べれないのかしらぁ?」
フレア「っ!? ち、違う!! 好きだから置いてんの!」
氷華「へーそうぉ」
エレメント「また始まった……」
フレア「そういう氷華はどうなのよ!」
氷華「は!? 私!?」
フレア「そうよ! 皿の上にピーマンがえらく残ってますがぁ?」
氷華「こ、これはあれよ、不本意だけど、貴方と同じで好きだから残しているのよ」
フレア「ふーん」
氷華「な、なによ」
フレア「いやいや、氷華も子供ぽくって可愛いところあるんだなぁと思ってさ」
氷華「っ……!!!? 馬鹿にしないで! 子供って、同じ歳じゃない!!!」
フレア「いやいや、私の方がお姉さんだから」
氷華「数ヶ月違うだけじゃないの!!」
シーフ「おお珍しく氷華が押されてる」
ボルト「僕を挟んでやらないでよ〜」
ジル「……」
氷華「だ、大体貴方にはモラルが欠けてるのよ! デリカシーってもんがないの!」
フレア「だからぁ? いつもの『王になんて貴方はなれないのよ! ふんっ』って言うのぉ?」
シーフ「ボルトこれ貰うぞ」
ボルト「あぁぁ!! それ楽しみにしてたやつ!」
氷華「ちょっとなにそれ!? 私の真似でもしてるつもり!? 全く似てないわ! 気品さがかけらも見当たらない!」
ボルト「返してシーフ!!」
エレメント「シーフ! ボルトにちょっかいかけない!」
フレア「えーそっくりだったじゃない。特に声だけやたらと高い辺りが」
シーフ「残ねーん、もう食べちゃいましたぁ」
エレメント「シーフ!!」
ボルト「う、うわぁぁん!!!」
氷華「そんな変な声じゃないわよ! それを言うなら貴方だって……」
ジル「いい加減になさい!!!」
氷華「!!」
フレア「あ……」
ボルト「ひっく、ひっく……」
エレメント「……」
シーフ「(小声)ジルがキレた」
ジル「どうして貴方達は協調し合わないのですか!? これからもそのようでは、誰一人として王にはなれませんよ!? いいえ、私がさせません!!! ……はぁ……よろしいですか? 貴方達は次期王の候補者です。いつかこの中から王が決まり、残りの方がそれぞれ隊を持ちその隊のリーダーとなります。ですがもし貴方達が今のままであれば、ここぞとばかりに世界各国がここを攻め落としにくるでしょう。そしてどんなに貴方達が強くても、呆気なくこの国は落ちます」
エレメント「断言、なのね」
ジル「ええ。誰もが予想できる未来ですね。先程も申し上げましたが、私はこの城の中で誰よりも皆様のことを心配しているのです。今もこれからのことも……陛下もきっと、皆様の中からお選びにはならない……お互いを信じ、尊重し、支え合って下さい。今のまま戦争になったら、皆様は死んでしまうでしょう。必ずと言っていいほど」
氷華「……そうね、確かにそうだわ」
フレア「ごめんなさい……」
ボルト「僕死にたくない……ぐすっ」
エレメント「大丈夫よボルト」
シーフ「ははっ……死、ねぇ」
エレメント「今の私達を見れば、陛下は間違いなく幻滅なさるわ」
氷華「ジル……今日陛下は……」
ジル「隣国との会食に出られております。明日の昼頃には戻られます」
氷華「そう……」
シーフ「陛下は俺達のことをどう思ってるんだろうな」
エレメント「そういう話はよして」
シーフ「だって気になるだろ?」
エレメント「……否定はしないわ」
氷華「やめて」
シーフ「氷華だって気になるだろ?」
氷華「やめて! そんなの聞きたくもないし、考えたくもないわ!!」
全員「……」
ジル「さあ頂きましょう。我らの父が用意して下さった、素晴らしい食事を。父と、子と聖霊のみ名によって、アーメン……」
間【現代】
グランディア「……」
ルベリア「……背中を預けれる仲?」
グランディア「無理だな……」
ルベリア「僕もそう思います」
グランディア「いや、だが、この最悪の夕食の後にあることがあってな、それ以来、皆、仲良くなったんだ」
ルベリア「あること?」
グランディア「ああ。結束とまではいかんが、お互いの絆を深めるには十分なキッカケだった」
間【過去】
フレア「はーお腹いっぱい! でもなんか、どっと疲れる夕食だったなぁ……ん? あれは……エレ姉?」
エレメント「どうだった?」
シーフ「いや、見当たらない」
エレメント「そう、心配ね」
フレア「どうしたのぉエレ姉」
エレメント「フレア! 氷華見なかった!?」
フレア「はぁ? 氷華ぁ? 知らないわよそんなの」
エレメント「そっか……」
フレア「…………(沈黙に耐えられず)もう! 氷華がどうしたのさ!」
シーフ「いないんだよ」
フレア「いないって……嘘でしょ? この時間は内門でさえ出るのは禁止されてるのに?」
エレメント「ええ、だから心配なのよ」
フレア「でもなんで……」
シーフ「さっき氷華の様子が変だったって、エレメントが」
エレメント「夕食前に考え事してるようだったから、気になって食べ終わった後、部屋に行ってみたらいなかったのよ」
フレア「氷華が……」
エレメント「私もう少し探すわ」
シーフ「俺も探すよ」
ボルト「んん……あれ? 皆、どうしたの?」
エレメント「ごめんなさいボルト、起こしちゃったわね」
シーフ「氷華がいないんだよ」
ボルト「えっ!? 氷華いないの!?」
シーフ「でけぇ声出すな。だから皆で探してるんだ。お前何か知らないか?」
ボルト「僕何も……ごめんなさい……」
エレメント「いいのよ、気にしないで。城の中にいないってことは外かもしれないわね……」
シーフ「逃げ出したとかか?」
フレア「それはない!」
シーフ「え……?」
エレメント「珍しいわね、フレアが氷華を庇うなんて」
フレア「は!? いや、そういうつもりじゃ……ほら、あいついつも私の方が女王に向いてるとか言ってるし……」
エレメント「まぁとにかく、思い当たるとこは虱潰しに探さないと」
シーフ「まぁそうだな。問題はジルか……」
エレメント「見つからないようにしないとね」
シーフ「だな、フレアとボルトはもう寝ろ」
フレア「けど……」
ボルト「僕も氷華を探す!」
シーフ「いいから寝てろ。こういうことは、年長に任せな」
エレメント「シーフの魔法なら目立たずに探せるしね」
シーフ「それじゃぁ俺は外を見てくる。あんま乗気じゃないけど」
エレメント「ええ、気をつけてね」
少しの間
フレア「……氷華かが? そんな……でも…………あぁもう! イライラする!!!」
ボルト「フレア……」
フレア「ああ、ごめんボルト。さっ、ボルトはもう寝てていいよ」
ボルト「いやだ……」
フレア「え……?」
ボルト「僕、氷華を探す! このまま見つからないなんてやだ。フレアも探すでしょ?」
フレア「あたしは……」
ボルト「じゃあフレアは、決着がつかないまま、言われっぱなしでさよならするの?」
フレア「い、言ってくれるじゃない……。そうね、あいつにもっと言い返さなきゃ気が済まないわ。行くよボルト! 氷華を見つけて、膝が折れるくらい言ってやるわよ!」
ボルト「うん!」
少しの間
ジル「……はぁやれやれ」
N「次回予告。
氷華を探しに出た、フレア、ボルト、エレメント、シーフの4人。何故氷華は規則を破ってまで城から出たのか……? 探しに出た先には危険が待っていた。はたして、4人は無事に氷華を見つけることができるのか……」
N「次回、氷の華。第二幕、絆と輪」
フレア「氷華ぁぁぁ!!」
…To Be Continued…
初心者の拙い文章ですが、楽しんで頂ければ幸いです。
本作品はユーザー様でなくても、コメント出来るように設定しおります。どなた様でも気軽に要望、ご意見、アドバイスがございましたらご連絡ください。
最後までお読み頂き誠に恐縮です。
本作品は『D&K Project』にてボイドラ化、進行中です。
公開はまだ未定なので決まり次第発表いたします。
『D&K Project』ホームページサイトURL
http://dk-project.com/index.html