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ここに来たのはいいけど、私には何もない。もちろん家も・・・。
何もない私を受け入れてくれるのかな・・・。
「あの・・・。」
「どうしたの?飛鳥ちゃん。」
「私、何もないんです。お家も、家族も、お金も・・・本当に何もないんです。こんな私がここにいてもいいんですか?」
私は、今までのことを二人に話した。すると二人は、アイコンタクトをするように顔を合わせ、笑いながら私のほうを見た。
「大丈夫よ。そんなこと気にしないで。飛鳥ちゃんと同じような子、何人もここにいるわ。隣にいるこの男もそうだから。」
そういうと、桜さんは隣に座っていた翔さんに向けて指差し。
「そういうお前もそうだろうが!!桜。」
翔さんは、笑いながら桜さんのおでこに向けて本当に指を刺していた。
「嬢ちゃん。ここはな、名前のとおり、自分の居場所を失った奴らが集まる店でもあるんだ。自分の生きるフィールドを失った奴らが集まって好き勝手やってる店。ま、俺みたいに闘志剥き出しもいれば、ほかにもいろいろいるけど・・・だからそんなこと気にすんな。それに、そんな弱い声じゃだめだ。おさらばしたいんだろ。この世界から。」
「はい(泣)」
「だったら、ここからスタートだ。今日から新しい世界で生きてくことになるんだから、もっと笑え。」
そういうと、私の両方のほっぺたを血だらけの両手で思いっきり引っ張った。
顔に感じる痛みが、私を光のある世界に引っ張ってくれるように感じた。
不安が安心に変わっていった。
そんな感じで、私のここでの新しい生活がこの瞬間始まった。