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2:wolf man
2:wolf man
振り向いた私の前にいたのは、細身だが筋肉質な男だった。綺麗に整えたあごひげを蓄え、黒のタンクトップに穴あきのジーンズを身にまとい、右耳には鎖でつながったピアスとイヤーカフが存在感を示すかのようについていた。
口にくわえたタバコを、ごつごつしいシルバーリングのついた手で口から離すと、ふ―っと煙を吐きながら近づいてきた。
「来ないでください!」
私がそういっても、無視して近づいてきて、最終的には私の前に立ち、
「あんまりこういうことしたくねーんだけど。」
といいながら、顔の下から手を回し、あごの部分に手を当て、無理やり顔を上向きにすると私にこういった。
「もう一度いうぞ。意味ねーぞ。そんなことしても。」